“人工消雨”作戦成功!? 開会式は「雨なし」の裏側
だが、今年の北京はなぜか、やたら雨が多い。誰かと出会ったときに天気の話題が出るのは日本だけだと思っていたが、今は北京市民の間でも、「今日はいいお天気になったね」という会話が当たり前のように交わされている。
かつてないほど天気予報に敏感
ただ8日に行われた五輪開会式は、その天気に自ら積極的に働きかけて変えてしまうという驚くべき試みが行われた。その日、北京市内は朝から、どんよりとした曇りの天気。昼過ぎも厚い雲に覆われ、いつ降りだしてもおかしくなかった。
だが結果的に、郊外で大雨が降ったものの、中心部は少しポツリときたくらいで、式典の内容は予定通り、「晴れバージョン」で滞りなく行われた。これについて中国気象局の鄭国光局長は翌9日の記者会見で、当日まとまった雨の降る可能性があったことを示唆した上で、「五輪史上、初めて“人工消雨”が成功した」と胸を張った。
おそらく日本でも多少話題になっているであろう“人工消雨”がどのように実施されたのか。明らかになっていない部分も多いが、発表されている範囲で、当日の消雨作業を振り返ってみたい。
人工消雨作戦の一部始終
さらに16時08分、南西方向から市中心部に向かって移動している雨雲を発見。当局はこの雨雲について、一時間当たり5ミリの雨を降らせる雲と予測し、「選手入場に影響を与える可能性あり」と判断。第2次消雨作戦の決行を命じた。夜9時半すぎ、上空の雲に1104発のミサイル弾を打ち込み、雲を散開させることに成功。また念のために1万着のレインコートを用意し、選手・役員に配り、「万一」に備えた。そして23時半、当局はすべての人工消雨作業の終了を宣言。国家体育場では、無事にプログラムが進み、中国の壮大な気象操作が“成功”に終わった。
以上が明らかになっている範囲での人工消雨作戦の一部始終である。これらの科学的根拠については、詳しくないのであえて触れない。だが、国家体育場に一粒の雨も降らせず、プログラムを順調に終えることができたことは、2007年8月8日に人工消雨のシミュレーションが成功して以来、「この日」にかけてきたスタッフたちにとって万感の思いだっただろう。
天気さえも科学の力で変えてしまう中国
多様な気候の日本で生きるわれわれならば、雨天の場合のプログラム編成を綿密に想定した上で、あとはテルテル坊主でも作って、晴天を祈るくらいだ。だが、お天道様の気持ちさえ、科学の力で変えてしまう中国の思いには圧倒される。北京五輪の成功にかける並々ならぬ意気込みの表れともいえるが、その是非は、簡単に片付けられないことのような気もする。
<了>
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