谷亮子、5大会連続メダル獲得への軌跡
8月9日、北京五輪女子柔道48キロ級の谷亮子(写真)は準決勝で敗れ、銅メダルを獲得 【Photo:ロイター】
準決勝終了後は、厳しい表情を見せながら唇をかんで取材エリアを通り過ぎた谷だったが、3位決定戦で勝利し、5大会連続のメダルを獲得したあとは、笑顔ものぞかせた。
五輪3連覇に挑んだ谷の挑戦を、北京入りから谷のコメントを交えて振り返る。
万全の状態で、順調に準決勝へ進出したが……
過去に金メダルを取ってきた五輪では、いずれもけがを抱えていたが、今大会は大きなけがもなく万全の状態で臨む。「アテネは完ぺきな勝利でしたが、今回はそのさらに上をいけるように」との言葉には3連覇への自信がうかがえる。
<1回戦 対マツモト戦> 優勢勝ち
午後12時に女子48キロ級の1回戦がスタート。谷は2試合目で、マツモト(米国)と対戦した。残り3分32秒で谷が大外刈りで有効。組み手で圧倒し、開始から相手にまったく柔道をさせない谷。防戦一方のマツモトに残り2分51秒で指導、残り2分08秒では注意が与えられた。結局、終始試合を支配した谷が危なげなく初戦を突破した。
もうひとつの畳では実力者ジョシネ(フランス)がまさかの敗退。ライバルの敗退は谷にとって追い風となるか。
<2回戦 対呉樹根> 優勢勝ち
地元・中国の呉と対戦した谷。日中の大応援が会場にこだまする中、両者は慎重な試合運び。残り3分22秒で両者に指導が与えられる。
その後、谷は体落とし、背負い投げを中心に呉を圧倒。だが、技をかける際に左の引き手が取れていないため、呉の背中が畳につかずポイントを獲得するには至らない。谷の厳しい攻めに対し、呉は背負い投げに活路を見いだすが、これも百戦錬磨の谷が確実にさばく。
ポイントが並んだままもつれ込んだゴールデンスコアでは、約30秒が経過した時点で谷が小外刈りで技ありを獲得。ベスト8進出を決めた。
<準々決勝 対パレート> 優勢勝ち
この試合も谷が相手を圧倒。体落とし、内股など多彩な技で攻めるが、やはり右のつり手のみの技のため、ポイントを取るまでには至らない。だが、この攻めによりパレート(アルゼンチン)は攻め手がなく、残り1分でパレートに指導が与えられ、そのまま谷が逃げ切った。
順当に準決勝に進出した谷だが、畳を下りる際に首をかしげ、取材ゾーンも厳しい表情で通り過ぎていった。
銅メダル獲得に笑顔 「主婦がしたい」と引退を示唆
準決勝で敗退し決勝進出を逃し、3位決定戦へ回ることになった谷亮子=9日、北京科技大体育館 【Photo:ロイター】
開始早々に大外刈りを仕掛ける谷だが、崩し切れずにポイントはなし。その後の谷は、欧州選手権4連覇しているドゥミトル(ルーマニア)が相手とあって、慎重な柔道を展開。組み手争いのみで攻め合わないと見た審判は、残り3分34秒で両者に1つ目の指導、2分54秒には2つ目の指導を与えた。その後も組み合わない両者、残り33秒の時点で谷にのみ3つ目の指導が与えられる。谷は戸惑った表情で一瞬、動きが止ったが判定は覆らない。
ばん回に出た谷だったが、時間がなくドゥミトルに逃げ切られて優勢負け。3位決定戦が残っているとはいえ、谷の五輪3連覇の夢はここでついえてしまった。
「どっちもどっちな感じでしたが、審判の先生の指示に従います」と谷。日陰暢年監督は「ゴールデンスコアになれば相手が前に来るので、そこをカウンターで狙うという戦術だったと思うが、戦術が空回りした。自分の柔道を見つめ直さないといけない」と厳しいコメントを残した。
<3位決定戦 ボグダノヴァ戦> 1本勝ち
準決勝とは打って変わって、組んで攻めに出る谷。見事な払い腰で今大会初めての1本勝ち。会場から大きな拍手が起こり、谷はボグダノヴァ(ロシア)と抱き合う際に、この日初めて小さな笑顔を見せた。
「お互いにいい試合ができたと思いますし、最後は技も出し合えていいパフォーマンスが出せたと思います」(谷)
メダリスト会見では優勝したドゥミトルを差し置いて谷に質問が集中。銅メダルに終わったことについては、「5大会連続のメダル獲得で、うれしく思います」とコメント。今後については「主婦がしたい(笑)。サポートしてくれる周りの人と相談して決めたい」と現役引退とも取れる発言を行った。
<了>
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