青木真也「“中井祐樹の柔術”に誇りを持っている。宇野薫にどこまで通用するのか楽しみ」

ゴング格闘技

6.15DREAM.4 第1試合 ライト級GP 2回戦。青木はフロントチョークから永田の首の上に足をねじ込みフットチョークで鮮やかな一本勝ち。連戦ながら順当に7.21トーナメント準決勝へ駒を進めた。 【ゴング格闘技】

中村拓己=文
text by Nakamura Takumi(GBR)
小嶋晋介=写真
photograph by Kojima Shinsuke(FLAME)

J.Z.カルバンと因縁の対決を制し、2回戦では永田克彦をフットチョークで撃破。ライト級GPに勝ち残った選手の中で、青木は特に乗りに乗っている選手と言っていいだろう。そんな青木の次なる相手は“HERO'Sのプリンス”宇野薫となった。公開抽選会では「自分の“誇り”を持って“英雄”を叩き潰します!」と両者の立場を意識するような言葉で語った青木だが、果たしてその胸の内は? インタビューは青木がしっかりチェックしているELITE XC、UFCの最新試合、そしてミドル級で青木と同じく“柔術界の最終兵器”とも言えるホナウド・ジャカレイの話から始まった──。

――DREAMミドル級GP、お疲れ様でした! 2回戦の永田克彦戦が終わってからはどのように過ごされたんですか?

「パーティとか色々あって、会場を出て食事をしてという感じで。結構、落ち着いて過ごしてましたよ。ダメージもほとんどなかったですし」

――よく試合が終わったその夜は興奮して眠れないという話も聞きますが、青木選手はどうでしょう?

「僕も寝れないですね。2日くらいは寝れないです。特に大会場で試合をするようになってから、そうなりました。やっぱりお客さんの力をもらうんですよね。自分の許容範囲を100としたら、試合が終わった時って140くらいになっている。それが100まで戻るのに2日くらいはかかりますね。そうだ、エリートXCの結果って知ってます?」

――知ってますけど、どうしたんですか、急に(笑)。

「いやあ、試合の前からずっと気になっていて(笑)。エリートっていいカードを組むじゃないですか。イーブス(・エドワーズ)vsKJ(・ヌーン)とか、ちゃんと選手の実力を測るようなマッチメークになってるんですよね」

――なるほど。そのカードはKJが打撃でイーブスを秒殺しましたよ。

「マジですか!? やっぱりKJは強いなあ。イーブスはちょっと負け癖みたいものがついてるけど、KJは今イケイケでしょう。早く試合が見たい!」

――完全にファンに戻ってますね(笑)。ちなみに青木選手が他に気になっている大会や試合は何ですか?

「もう終わっちゃいましたけど、この前のUFCは良かったですね。マット・ヒューズがチアゴ・アウベスにぶっ飛ばされた時は泣きそうになりましたもん。アウベスが計量で1.8kgオーバーしてたのにはビビリましたけど(笑)。それがなくてもアウベスが勝ってたんじゃないかな。負けているとは言え、アウベスはジョン・フィッチともいい勝負しているじゃないですか。それに僕が考える総合格闘技の打撃の最先端だと思いますよ、アウベスは」

――アウベスのどういった部分にそれを感じますか?

「まず首相撲が出来るし、それを総合格闘技にアジャストしているのがすごい。首相撲だけやる選手は今までもいましたけど、首相撲に固執しすぎて脇を差されてテイクダウンされる選手も多かったんですよね。でもアウベスは首相撲やりながらも差しやタックルを警戒して、テイクダウンを全て切っている。それに万が一、テイクダウンされたとしても、立ち上がる技術も凄いんですよ」

――言われてみれば、首相撲を一つの軸にしてその他の技術を上手く肉付けしてますよね。

「そうなんですよ。ああいう技術を見ていると刺激になるし、総合格闘家として自分が次のステップに上がるためにも、もっと勉強しないといけないし。それにしてもアウベスは強えなあ……あの選手に勝つのは大変ですよ。あとはヒューズもアウベスも体がデカいですよ。前日計量の写真を見た時に、二人とも病人かと思うくらいガリガリだったのに、試合の時にはメチャクチャ(体が)大きくなってたじゃないですか。あれはちょっと凄いな……」

――同じ日に行なわれたアドレナリンMMAでは、高瀬大樹選手が反則負けになってしまいましたね。

「そうですか。高瀬さんはメチャクチャ寝技が強い。それは絶対に本当です。でも総合になると勝負は分からないんですよ。総合格闘技ってそういうものなんですよ」

――総合格闘技で勝つためには、自分が持っている武器を総合格闘技という競技の中にいかにアジャスト出来るかが鍵じゃないですか。

「そうそう。これだけ総合格闘技の時代が進んじゃうと、何か一つだけ強い選手は一発狙いの宝くじ的な、博打の要素が強い試合になりますよね。でも今はもうその戦い方で勝つのは難しいですよ」

――トータル的にある程度のレベルまで技術を上げて、それを使って試合を組み立てながら、自分の武器で勝負するということですよね。あとは自分の主武器が一つあるとしたら、それを生かすための第2の武器も必要とされていますよね。

「僕らみたいに寝技で勝負する選手なら打撃やテイクダウン。結局はその第2の武器を持っている選手が勝ち残るんですよ。ただ僕が思うに、組み技が強い選手は総合格闘技は強いですよ。ジャカレイとか見ていてもそうじゃないですか」

――確かに。「打・投・極」に分けると、投と極は強いわけだから、極端な話、打と投の組み合わせを覚えれば圧倒的に有利になりますよね。

「あとは僕の考え方が変わっているんですけど、既成概念ってあるじゃないですか。例えばテイクダウンをしてグラウンドでは上を取るという。そういう考え方を緩くできる選手はさらに強くなるし、試合中の選択肢が増えますよ」

――「既成概念を緩くする」というのはどういうことなんですか?

「例えばテイクダウン=タックルや四つ組で倒すか、組んで投げるかだと思われてますよね。でも引き込んだ瞬間に相手をスイープすることができて、グラウンドで上を取ることが出来た、それはテイクダウンと同じなんですよ。そういう風に総合格闘技を考えるということです」

――それこそジャカレイはグラウンドで下になってもハーフガードからすぐに潜りスイープでグラウンドで上を取っていましたし、メイヘムの打撃をもらいながら前転するようにしてスタースイープも狙っていましたよね。

「まさにああいった技術ですよ。ちなみに昨日の控え室でジャカレイの試合を見ていた時、ジャカレイがハーフガードからシャオリンがやるスイープを極めた瞬間、僕と中井先生だけが二人でテンション上がってましたよ(笑)」

――青木選手は同じグラップリングを武器としているジャカレイの試合はどのように見ていました?

※以降、発売中の『ゴング格闘技』8月号にて掲載! 青木真也が語る、DREAMミドル級GP永田克彦戦の真実、宇野薫戦への思いとは……。

(プロフィール)
Aoki Shinya
1983年5月9日、静岡県出身。柔道時代には跳び付き腕十字など関節技を主体としたスタイルで活躍。全日本体育系学生選手権優勝など、全日本ジュニア強化選手となる。大学進学後は柔術やサンボにも挑戦し、両競技の全日本選手権を制覇。03年にプロ総合格闘家としてデビューを果たすと、06年2月に修斗世界ミドル級王者に。その後はPRIDEに主戦場を移し、4戦4勝オール一本勝ちの成績を残した。DREAMライト級GPではHERO'S王者のJ.Z.カルバン、永田克彦を下して準決勝に進出。7.21準決勝では宇野薫と対戦する。修斗世界ミドル級王者。MMA戦績17勝2敗1無効試合。身長181cm、体重74kg。パラエストラ東京所属。

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