宇野vs.青木 決勝に駒を進めるのは――

松浦俊秀
 永田克彦戦で見せた青木真也のフットチョークが、何かと話題になっている。なんでも海外ではファンの間で、「技の名前を何にするか?」などという議論が持ち上がっているのだとか。改めて青木という選手の凄さを感じ取ることができるエピソードである。
 ただ、永田戦で見せたフットチョークについては、実はそれほど目新しいものではない。ご存知の方も多いと思うが、06年3月の修斗後楽園大会で青木自身が一度、フィニッシュとして使用済(グラップリングマッチ、vs鶴屋浩)。当時はまったくといっていいほど話題にならなかったが、2年越しでようやく日の目を見た技なのである。
 今回のフットチョークに限らず、関節技や絞め技でまだ日の目を見ていない技はたくさんある。現に筆者もまだ試合で決まり手になっていないと思われる技を、いくつか選手から教えてもらったことがある。そういえば青木vs永田戦のゲスト解説を務めた須藤元気氏も、「この形で極まるのは格闘技史上初めてじゃないですかね」とコメントしていた。元トップ選手でさえ知らない(もしくは見たことがない)技があるのだから、MMAの世界は本当に奥が深い。
 さて、そんな奥深い世界で一際異彩を放つ青木が、10年以上もトップ戦線に君臨し続ける宇野薫と激突することになった。宇野と川尻達也の再戦を期待したファンも多かったようだが、個人的には青木vs宇野の方が興味深いし、このカードが決まったことに喜びを隠し切れない。7.21DREAM大阪大会では、MMAの最先端ともいえる技術戦がリング上で展開されるはずである。
 この試合の注目ポイントは、やはり青木のサブミッションをいかに宇野がさばいていくかという部分になるのだろう。ただ青木のエキセントリックな技術も脅威だが、宇野も00年8月のマーシオ・クロマド戦以降は一本負けを記録していない。しかも総合に限っていえば36戦のキャリアの中で、一本を取られたのはわずか2回だけ(もう1つは96年のプロデビュー戦。vs桜井速人)。ここぞというときの爆発力と粘り強さには定評があるだけに、何らかの攻略法を持ってリングに上がってくるはずである。
 日本人対決に滅法強い、というのも宇野の特長のひとつ。現時点では青木を推す声が多いような気もするが、個人的には逆の結果が出る可能性も十分あると思っている。
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