現地視察! 稲本と小野の邂逅 ドイツでの日本人対決に想う=吉崎エイジーニョの海外組・ウキウキウオッチング

吉崎エイジーニョ

かつてドイツで「海外組」としてプレーした吉崎エイジーニョ(中央)が、稲本対小野の日本人対決を現地視察! 【(C)吉崎エイジーニョ】

 海外組の直接対決ときちゃ、見逃せない。行ってきました。3月8日、ドイツ・フランクフルトへ。

 この国の3月には珍しい、晴天に恵まれた気候のなか行われたブンデスリーガ第23節、フランクフルト対ボーフム。稲本潤一、小野伸二の2人はかなり元気そうにやっとりましたよ。特に小野伸二。まさに水を得た魚のようで――。

 2人のマッチアップの回数は、実のところ期待ほど多くはありませんでした。それよりも、「黄金世代」の2人それぞれの、これまで、そしてこれからをぼんやりと考えることが楽しい時間になりました。日本人の海外組プレーヤーの新たな移籍先・ドイツのご紹介も兼ね、現地からリポート致します。

「日本人対決」うんぬんはなかったけれど……

FKからゴールを狙うボーフム小野と、壁に入るフランクフルト稲本(左) 【Photo:AFLO】

 日本人選手の欧州主要リーグでの直接対決は2004−05年シーズンのセリエA、中田英寿(フィオレンティーナ)−中村俊輔(レッジーナ)以来だった。しかし、試合前のコメルツバンク・シュタディオンは「日本人対決」うんぬんで盛り上がる気配はあまりなかった。「イナモト」と話し掛けられることはほとんどなく、ボーフムサポーターが、フランクフルト中央駅で「シンジー・オノ」と応援歌を歌っていた姿が目立つ程度だった。

 この日の対戦は、全34節中23節目で、しかも双方ともに首位と勝ち点20前後離れた中位同士の戦い。現実的にはフランクフルトのUEFAカップ出場権獲得のみに可能性があり、優勝、チャンピオンズリーグ出場権、降格のいずれとも関連性のないカードでの日本人対決だった。当然、現地サポーター間では「日本人」うんぬんが盛り上がる要素は少ない。シビアだが、この点はしっかりと頭に入れておかねばならなかった。

 スタジアムはアウエーゴール側2階席に空席が目立ったが、それでも4万6000人が入ったのだという。ゲームは15:30にキックオフ。
 ホームのフランクフルト、稲本潤一は4−3−1−2の「3」の中央、いわゆるボランチの位置で先発メンバーに名を連ねた。一方、アウエーのボーフム小野伸二は4−4−2、ダイヤモンド型のMFのトップ下で出場。トップ下vs.ボランチという、対面のポジションでの日本人対決だった。

 試合は後半、一気に動いた。49分、フランクフルトはトスキーが左足でループ気味のシュート。67分、ボーフムの同点ゴールは、FKから。壁を作ろうとしたフランクフルト守備陣の一瞬のすきを突いて、ミムン・アザウアグがシュート。フランクフルトは猛抗議したが、判定は覆らず。いずれも、稲本・小野は直接的には得点には絡まず、そのまま1−1で試合は終了した。

 直接のマッチアップは、2〜3度ほどあった。6分、センターサークル付近でボールを受けた小野に対し、稲本がタックル。小野はサッとこれをかわし、前にボールを運んでみせた。18分、センターサークル付近で2人が並び立つシーンがあり、70分にはボールをめぐって、軽く競り合うシーンもあった。

 試合後には小野から名乗り出てユニホームの交換をしたという2人。直接対決の感想をこう振り返っている。
「(相手に日本人がいるのは)やっぱりちょっと不思議な感じがあった」(稲本)
「サッカーは1対1でやるものではないが、常に僕の近くに稲本選手がいたので、非常に楽しい部分もあった」(小野伸二)

 ただ、稲本は「まずは自分たちが勝つことに必死だった」とも。開幕時の好調から、一転、一時出場機会を失い、ここ最近は3試合連続で先発の座を取り戻している状態だった。
 一方の小野も、1月に移籍して以降、2月22日のハノーファー戦で初先発。以降3試合目だっただけに、お互い「日本人対決」ばかりに気をとられる状況ではなかったことも確かだろう。
 2人の「絡み」という点では、やや地味に終わった感のある対決だった。

 以上、客観的な試合リポートを終了します。えー、試合後やや時間が経ったこともあり、ここはひとつ(次ページから)、思いきった私見を述べさせていただきます。

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著者プロフィール

1974年生まれ、北九州市出身。大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)朝鮮語科卒。『Number』で7年、「週刊サッカーマガジン」で12年間連載歴あり。97年に韓国、05年にドイツ在住。日韓欧の比較で見える「日本とは何ぞや?」を描く。近著にサッカー海外組エピソード満載の「メッシと滅私」(集英社新書)、翻訳書に「パク・チソン自伝 名もなき挑戦: 世界最高峰にたどり着けた理由」(SHOPRO)、「ホン・ミョンボ」、(実業之日本社)などがある。ほか教育関連書、北朝鮮関連翻訳本なども。本名は吉崎英治。

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