カーリングLS北見、再浮上のカギは!? 元代表が注目する二つのポイント
世界選手権銀メダルからの1年
冬季アジア大会では3位にとどまったLS北見。世界選手権で銀メダルを獲得してからは苦しい1年を過ごした 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
そして、2月26日に閉幕した札幌冬季アジア大会ではライバルの韓国と中国に全敗し、銅メダルにとどまった。準決勝で中国に負けた後、スキップの藤澤五月は「最後の集中力が必要だった」と語った。
こうも精彩を欠いた試合が続くと、ガッチリと日本代表の座を守り、1年後の平昌五輪に万全の態勢で臨めるのかと心配になってしまう。だが、関係者によると、アジア大会直前の地元での練習試合では、事前合宿を組んだ強豪の韓国男子チームと連日接戦を演じ、勝ったこともあったという。やっぱり地力は日本一のはずなのだ。
必要条件だった攻撃的な戦略
世界でメダルを獲得するためには、攻撃的な戦略は必要条件。その意味で藤澤(中央)の加入は大きかった 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
五輪2大会出場の本橋麻里らが2010年に地元の北海道北見市常呂町に戻って結成したLS北見は、15年に転機があった。エースの本橋が産休に入った一方、14年ソチ五輪を逃したのを契機に中部電力の藤澤が本橋に代わるスキップとして加入した。「本橋さんが休養して弱くなったとは言われたくなかった」という意地もあり、昨年3月時点で24歳と22歳の若いチームは団結。藤澤の戦い方を取り込むには苦労もあったが、時間をかけて少しずつ形になっていった。そして、1年後に銀メダルという快挙を果たした。
確かに、歴戦の本橋を欠き、大会前半は各チームからノーマークだったという幸運はある。波に乗れたという要素もあったろう。だが、この日本カーリング史上初の大仕事がなし遂げられた要因で一番重要なのは、藤澤という攻撃型新スキップを迎え入れて、世界で結果を出したという事実だ。世界のカーリング界のこの10年の潮流を眺めると、男子はもちろん女子でももはや攻撃的な戦略(=盤面にストーンをためるハイリスク・ハイリターンの展開で戦う作戦)がグローバルスタンダードとなっている。世界戦において善戦するだけではなくメダルを奪取するためには、攻撃的な戦略は必要条件だった。
吉田知が徹底した“自由放任主義”
昨季はサードだった吉田知(右)。スキップの能力を引き出すために、“自由放任主義”を徹底した 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
その吉田知が、世界選手権でのポジション別ショット率(=目的を達成できたショットの割合)で1位の成績だった。敦賀副委員長が言う。
「スキップの前を投げる責任、スキップのラインコールをする責任がある中で、良いショットをしていました。“強いチームに強いサードあり”と言うくらい、サードは本当に重要なポジションで、それがうまくはまっていたように感じます。それから、吉田知は藤澤の思った通りの作戦をやらせていました。それで藤澤は気分良く投げられたのでしょう」
このあたりが「スキップとサードのコンビネーション」に関わる点だ。「(スキップを務めていた)僕なんかは、メンバーからアイスが滑るのか滑らないのかの情報をもらうくらいの方が自分のイメージした感覚で投げられました。そんなふうにスキップそれぞれにタイプがあります。サードはそんなスキップの迷いを取り除いてあげるように持っていけるかが実は大事なんです」(敦賀副委員長)
スキップの能力を最大限に引き出すのが参謀たるサードの隠れた役割であり、理屈と理屈を超えたところにある巧みなスキップ心理掌握術が求められる。昨季の吉田知の場合はいわば“自由放任主義”を徹底して成功した訳だ。