桐生&ケンブリッジが語る五輪と未来 初の銀メダル「いけると思っていた」
銀メダルの快挙から一夜明け、桐生(右)とケンブリッジ(左)に話を聞いた 【スポーツナビ】
その快挙から一夜明けた現地時間20日、桐生とケンブリッジに話を聞く機会に恵まれた。2人は五輪初出場。個人では同じ100メートルにエントリーしたものの、桐生は予選で、ケンブリッジは準決勝でそれぞれ敗退した。彼らにとって五輪はどういうものだったのか。大会を振り返りつつ、4年後の東京五輪に向けての挑戦、お互いの印象などについても語ってくれた。
桐生「メダルをもらったら実感する」
桐生 いろいろな方からメッセージが来たり、ニュースを見たりすると、多少は実感します。ただ、一番実感するのは、これからメダルをもらいに行くので、その時かなと思います(編注:インタビュー時点ではまだ表彰式が行われていなかった)。やっぱり早く欲しいです。
ケンブリッジ 僕も同じですね。いろいろな人から連絡が来て、自分のことのように喜んでもらえたのがうれしかったです。でもこれからですかね。表彰式が終わって、しっかりメダルを受け取ったときに実感すると思います。
――リレーで結果を残せるという自信は、大会前からありましたか?
桐生 そうですね。メダルを取りにいくという気持ちはだいぶありました。ジャマイカだけが飛び抜けているという感じで、予選のタイムからしても、全然いけると思っていました。
ケンブリッジ ただ、ジャマイカとの差は大きかったですね。個々の力の差が普通に出たかなと。特に僕のところは。
桐生 相手が(ウサイン・)ボルトですもんね。
ケンブリッジ やっぱり速かった。そして、自分はまだまだだなというのが一番にあったかな。銀メダルを取れてうれしいというのはあるけど、選手としては最後にあそこまで離されたのは、悔しいというのは正直ありますね。
――バトンパスのうまさが特に言われていますが、なぜそこまで優れているのでしょうか?
ケンブリッジ 練習しているのもあるかもしれませんが、これまで走ってきた人たちのバトンパスを見てきているので、ある程度、どういうふうにやればいいかを知っているんです。事前に知識があったり、目の前で見ていたのは大きいかなと思います。
桐生 単純計算で100メートルのベストタイムではかなわない国はあるのですが、その分、リレーだとバトンパスというのがあるので、そこで縮めないとどうしようもないという部分があります。今回この結果になったのは、歴代の先輩たちが残してくれたデータを見て、それを踏まえてバトンパスができたというのが大きいですね。
ケンブリッジ データというのは、具体的に言うとバトンゾーンに入るまで、ブルーラインを走り始めてから何秒だったとか、今の距離はどうだったかとか、どの辺の位置でバトンをもらっていたかとか、そういうものです。毎回毎回チェックをしてやっていたので、それがうまくいったんだと思います。
ケンブリッジ「走力アップが必要」
「歴代の先輩たちが残してくれたデータを見てできた」(桐生)と話すバトンパスが銀メダル獲得の鍵となった 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
桐生 決勝も3走(第3走者)までは良い位置にいましたし、ここから日本も個々の走力が上がれば全然可能性はあると思います。
ケンブリッジ その通りだと思います。個々の走力アップは絶対に必要ですね。バトンだけではダメになるときがいつかは来ると思います。ジャマイカ選手個人ではどう?
桐生 そこに追いつけるようにしないと、世界では戦えないですよね。その中で、速い選手と練習する、というのが僕は大事だと思います。大学生と練習をしていると、手を抜くじゃないですが、少しでも(力を入れて)走ると勝ってしまうので、前半・後半の得意・不得意が分からなくなる。だから速い人とどんどんトレーニングしていきたいなと思います。
ケンブリッジ 同じ意見です。だいたい被るね(笑)。周りの相手というのは重要だと思います。練習パートナーがすごい大きいかなと。今、日本で練習をしていると、どうしても一番前で走ってしまう。世界ではそういうわけにもいかなくなるので、そこは違うと思います。
――実際に日本で練習していて物足りなさを感じることもあるのですか?
桐生 そうですね。大学でやっていると、僕の次に速い選手は10秒6台、7台なので、物足りないという部分もあると言えばあります。そこは大学生だから、仕方がないとは思います。みんながいきなり速くなるわけではないので……。