輝き始めた新体操・皆川夏穂の可能性 支えあった盟友の思いを力にリオへ

椎名桂子

ロシア合宿で失った演技の安定感

ロシアで高度な演技内容に取り組んだが故に安定感がなくなっていた皆川だったが、内定発表式での演技は動きと手具操作のスケール感、そして正確性が増していた 【末永裕樹】

「間に合った」

 皆川の演技を見ながらそう思った。ジュニア時代の皆川は、かなり器用な方の選手だった。国内の選手の中ではかなり難しい手具操作にも挑戦していたゆえのミスもときにはあったが、たいていはかなり正確に演技をこなし、実績もあげていた。ところが、ロシアに行ってから、演技の安定感が失われていた。もちろん、ロシアでさまざまなことをやり直し、改革し、さらに高度な内容に取り組んでいるのだから、一時的にそうなるのは道理だ。しかし、そこから完成度を上げていくには、皆川の能力をもってしても、かなりの時間を要した。

 一方、ロシア合宿で、先に安定感が増したのは早川だった。昨年も世界選手権こそ、皆川の順位が上だったが、それまでは皆川にミスが出て、早川が上になることが多かった。

 象徴的だったのは、昨年、日本で行われた世界選手権代表決定競技会だった。久しぶりに日本で行われ、国内の選手たちとも競うことになったこの大会で、早川は4種目ほぼノーミスで1位だったが、皆川はミスを連発、全日本チャンピオンの河崎羽珠愛(イオン)にも負けて3位という結果にあまんじた。

 しかし、いわば惨敗に終わったその試合の後も、山崎強化本部長は「皆川の演技は、1つ狂うとミスが連鎖してしまう。それだけ詰まった内容だということ。今はまだミスが出るが、よくあれだけのことをやっていると思う」と皆川の演技を評価した。

「2人で五輪の舞台に立っている、という気持ちで」

3年間、互いに支えあってきた皆川(左)と早川。皆川は「2人で五輪の舞台に立っている、という気持ちでやりたい」とリオへの抱負を語った 【写真は共同】

 完成形が見えるまでに時間はかかるが、完成すればきっと輝きを放つに違いない。昨年までの皆川の演技は、そんな原石のようなものだったのだ。磨きあげたときの輝きを、山崎強化本部長は信じていたのだろう。そして、ここにきてやっとその輝きが審判にも認められるようになってきている。

 もちろん、すべては本番の出来次第ではある。しかし、皆川はここまで早川との厳しい代表争いのプレッシャーにも耐えてきた。可憐な印象の外見からは想像できないほどのメンタルの強さも備わってきているはずだ。

「五輪の枠は、さくらちゃんと一緒にやってきて、2人で上がってきてとった枠なので、リオでは、2人で五輪の舞台に立っている、という気持ちでやりたい」

 皆川はそう言った。

 言葉も通じなかったロシアで、雲の上の人と思っていた世界のトップ選手たちの中に飛び込み、自分たちの足りない部分を思い知らされ、うちのめされながら、「五輪に出たい」という強い思いとお互いの存在を支えに3年間を共に過ごしてきた盟友の思いを誰よりも分かっているのは皆川だ。早川の思いも力にして、リオ五輪という2人で目指した最高の舞台で、自分らしい演技ができたならば、きっと結果はついてくる。

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著者プロフィール

1961年、熊本県生まれ。駒澤大学文学部卒業。出産後、主に育児雑誌・女性誌を中心にフリーライターとして活動。1998年より新体操の魅力に引き込まれ、日本のチャイルドからトップまでを見つめ続ける。2002年には新体操応援サイトを開設、2007年には100万アクセスを記録。2004年よりスポーツナビで新体操関係のニュース、コラムを執筆。 新体操の魅力を伝えるチャンスを常に求め続けている。

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