「期待しかない」ミッキークイーン 浜中が語る3歳二冠牝馬でのJC勝算

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3歳二冠牝馬ミッキークイーンと浜中(右から2頭目)、歴戦の古馬を相手にJC制覇を目指す 【netkeiba.com】

 ラブリーデイ、ドゥラメンテ、ゴールドシップ──今年の年度代表馬争いは混戦だ。カギを握るのは、そう、今週末のジャパンC。先に挙げた3頭ともう1頭、その権利を持つのが、2冠馬ミッキークイーン。底知れぬ強さを秘めた、3歳牝馬である。その背中の感触を唯一知るのが浜中俊。はたして彼が「こんな馬は初めて」と語るミッキークイーンの強味とは──。主戦の胸中に迫った。(取材・文:不破由紀子)

デビュー前に感じた「これはちょっと違う」感触

新馬戦の1週前追い切りの時点で「これは違う」と感じていたという 【netkeiba.com】

 ジョッキー・浜中俊の魅力を考えたとき、まず浮かぶのがアスリートとしての勘の鋭さ、そして、そこから繰り出される迷いのない騎乗だ。ミッキークイーンの秋華賞は、まさに浜中の真骨頂であった。内枠有利とされる京都の内回り芝2000mで、1番人気にして大外枠。しかもゲートに不安が残るなかでのスタートだったが、ゲートをこの馬なりに出ると積極果敢に仕掛けていき、最初のコーナーで内目を確保する好プレー。

 まずはこの秋華賞を振り返っていこう。

「大外枠をどうとらえるか、だったと思うんですよね。確かにあのコースは内枠が有利ですが、池江先生も僕も『かえって(大外枠は)いいんじゃないか』と、プラス思考に切り替えて、その上で作戦を練りました。スタートは決して速くはありませんでしたが、結果的に1コーナーを理想的な形で入れたことが、やはり大きいと思います」

 馬にもよるが、ポジションを取りに行くという行為は、ジョッキーにとってある意味、諸刃の剣である。出していったはいいが、そのせいで折り合いを欠いてしまえば元も子もない。ゲートを出していってポジションを取り、なおかつそこで折り合いを付けてこそ。それをあのトリッキーなコースでやってのけたあたり、レースを観ながら思わず感嘆の声がもれた。

「1コーナーでいい位置を取れたものの、そこから外を回すか、そのまま内を狙うか、正直少し迷いました。ただ、京都はやっぱり馬場がいいですからね。なるべくロスなく運ぼうと腹を決めて。そこは、ロスなく立ち回って勝つことができた去年の秋華賞のいいイメージが後押ししてくれたような気がします。馬にとってはタフな競馬で、直線も厳しいところに誘導しましたけど、怯むことなく最後には勝ち切ってくれて。そのあたりがこの馬の強さだと思いますね。

1コーナーでポジションを取りに行けたのも、ミッキークイーンだからです。出していっても、すぐに折り合いを付けられるという信頼感がありましたから。それもひとつのポテンシャルだと思います。だから、自分の好騎乗というより、そういった冒険に応えてくれる馬だということです。結果的にハイペースになったので、後方から運んでも間に合ったんじゃないかっていう見方もできますが、そこはやっぱり、自分から勝ちにいってタイトルを獲ったという事実は、すごく大きいこと。自分にとっても馬にとっても、価値ある一戦だったと思います。改めて“すごい馬やな”と思いました」

 ミッキークイーンに初めて跨ったのは、新馬戦の1週前追い切り。そのときの感触を「とにかくバネがすごかった。これはちょっと違うなと思いました」と振り返る。

 新馬戦は、勝ったジルダから半馬身差の2着に敗れたものの、34秒8というレース全体の上がりに対して、ミッキークイーンが繰り出した脚は33秒7。勝ち馬が逃げ切りだったことを考えると、この数字の価値がわかる。

「負けてしまいましたが、競馬にいって、調教よりもさらにガツンとくる手応えがあったんです。その時点で、“この馬でクラシックにいけたらいいな”と思いました」

同世代の牝馬には負けない

忘れな草賞が一番緊張したレースだった 【netkeiba.com】

 2戦目の未勝利戦で順当に勝利を収め、賞金加算を目指してクイーンCへ。が、ここで誤算があった。レース当日の馬体重は、前走比マイナス20キロの424キロ。課題が浮き彫りとなった。

「春の時点では食いが安定していなくて、トレセンに戻って追い切りを掛けると減っていたらしいです。クイーンCの前も、トレセンにいる段階ですごく減ってしまっていたので、マイナス体重は覚悟していました。実際、20キロも減っていましたからね……。そんななか、僅差の2着にきてくれたので、改めて力を再確認できた一戦ではありましたね。ただ、桜花賞出走が微妙なラインだったので、ものすごく悔しかったのも確かです」

 桜花賞は、無念の抽選除外。桜花賞当日の忘れな草賞で、オークスの権利を取りにいくことになった。

「ここまでのミッキークイーンとのレースを振り返ると、忘れな草賞が一番緊張しましたね。こんなに強い馬で桜花賞だけでなく、オークスにも出走できなかったら……という思いが強かったです。デビュー戦からずっと乗せていただくなかで、一緒にクラシックを目指したのはミッキークイーンが初めてでしたから。本来、あまり緊張するタイプではないんですが、あのときばかりは自分で硬くなっているのがわかりました」

 その忘れな草賞は、五分のスタートからピタリと折り合い、4コーナーでは先行集団を射程圏に。直線は、追いすがるロカをあっさりと振り切り、手綱を抑えたままでゴール。“もし桜花賞に出走していたら……”、そんなたらればを禁じ得ないほど、見た目以上に圧倒的なパフォーマンスだった。

「ゴールした瞬間は、本当にホッとしました。あの日は正直、1日を通して忘れな草賞のことが頭から離れなかった。だから、ものすごく達成感がありました」

 迎えたオークスは、そこまで十分な物差しがなかったせいか、単勝6.8倍の3番人気。しかし、浜中の心にあったのは、「同世代の牝馬には負けない」という強い気持ち。今、振り返っても、「自信がありました」と、キッパリと言い切った。

「1番人気のルージュバックは、好位で競馬をするだろうと思っていたので、クルミナル(3着)といい並びで、ルージュバックを射程圏に入れるレースができました。4コーナーを回った時点で、これはもう捕まえられるなと。期待通りの脚を見せてくれましたね」

 意外にも2015年、このオークスが浜中の重賞初勝利。2014年を例に挙げれば、オークスの時点ですでに重賞5勝。今年は何かが違った。

「これまで、シンザン記念とか京都牝馬Sとか、年明けにポンポンと勝たせていただくことが多かったんですが、今年は全然ダメで。ここ数年のなかでは、今年は本当にストレスが溜まったというか、モヤモヤした気持ちがずっとありました。我慢しかないと思いつつも、チャンスのある馬にたくさん乗せていただいてるのに、これだけ勝てないとなると……と、自分に対して苛立ちがありましたね」

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