福島千里、裏目に出た記録への欲求 日本新の期待は200mへ

スポーツナビ

果たせなかった準決勝での日本新

女子100メートル準決勝、福島千里(右端)のリアクションタイムは8人中、誰よりも早かったが…… 【写真:ロイター/アフロ】

 号砲とともに、目いっぱいの力でスタートブロックを蹴り出す。9レーンを飛び出すその反応は0秒130。肩を並べた8人の中で誰よりも早い。しかし、直後からみるみる広がる先頭との差。あっという間に置いてけぼりにされた福島千里(北海道ハイテクAC)は、この組7番目でフィニッシュラインを越えていった。日本のスプリント女王が挑んだ4回目の世界選手権(中国・北京)。24日に行われた女子100メートル準決勝で、福島は11秒32秒の全体23位に終わった。

 レース後の福島は、ことのほか表情が明るく見えた。「狙っていた部分には届かなかったので、悔しさと言うのはもちろんあります」と心境を吐露したが、決して沈んだ様子はない。思い描いたレースができなかったことを、ただただ冷静沈着に受け止めていたと言えばより近いだろうか。言葉を選びゆっくりと語る姿も変わりないが、しかしその声はしっかりと大きく、報道陣を見つめるそのまなざしも、強い意思を感じさせるものだった。

 だが、現実はやはり厳しかったと言わざるを得ない。「スタートからもっと乗れるところで、ちょっと乗り切れなかった。レース自体も少し硬さはあったかな。もう80メートル(あたり)は本当にガチガチ走ってしまいました」とは本人の反省の弁。「予選通過」という最低ラインはクリアしたものの、「準決勝で勝負し、自己ベスト(=日本新記録)を出す」という大目標は果たせなかった。

嫌なムードを一蹴した予選の快走

会心の走りで準決勝進出を決めた予選の福島 【写真:ロイター/アフロ】

 振り返ると、前日の予選は胸がすくレースだった。大会2日目の朝の部を終えて、メダル候補筆頭だった男子20キロ競歩をはじめ、日本勢の多くが本来の力を出し切れずに夢破れていった。ミックスゾーンで心境を語る選手も、それを取り囲む報道陣にも、重苦しい空気が流れていた。

 そこに一筋の光を差し込んだのが福島だった。100メートル予選は、本人も「悪いところがない」と自画自賛する、11秒23の快走。組3着で準決勝進出を決めただけでなく、日本記録に100分の2秒まで迫るものだった。

「(準決勝では)1本目という緊張感がない分、良いレースができれば良いかな。本当にベストを狙っていければと思います」

 堂々とした語り口で気を吐いた福島。これなら、準決勝での5年ぶりの日本記録更新もあるのではないか――。6月に27歳を迎えた女子短距離の第一人者が浮かべた清々しい笑顔は、記者らが感じていた嫌なムードを一蹴し、期待感を抱かせるものだった。

1/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント