福島千里、裏目に出た記録への欲求 日本新の期待は200mへ
果たせなかった準決勝での日本新
女子100メートル準決勝、福島千里(右端)のリアクションタイムは8人中、誰よりも早かったが…… 【写真:ロイター/アフロ】
レース後の福島は、ことのほか表情が明るく見えた。「狙っていた部分には届かなかったので、悔しさと言うのはもちろんあります」と心境を吐露したが、決して沈んだ様子はない。思い描いたレースができなかったことを、ただただ冷静沈着に受け止めていたと言えばより近いだろうか。言葉を選びゆっくりと語る姿も変わりないが、しかしその声はしっかりと大きく、報道陣を見つめるそのまなざしも、強い意思を感じさせるものだった。
だが、現実はやはり厳しかったと言わざるを得ない。「スタートからもっと乗れるところで、ちょっと乗り切れなかった。レース自体も少し硬さはあったかな。もう80メートル(あたり)は本当にガチガチ走ってしまいました」とは本人の反省の弁。「予選通過」という最低ラインはクリアしたものの、「準決勝で勝負し、自己ベスト(=日本新記録)を出す」という大目標は果たせなかった。
嫌なムードを一蹴した予選の快走
会心の走りで準決勝進出を決めた予選の福島 【写真:ロイター/アフロ】
そこに一筋の光を差し込んだのが福島だった。100メートル予選は、本人も「悪いところがない」と自画自賛する、11秒23の快走。組3着で準決勝進出を決めただけでなく、日本記録に100分の2秒まで迫るものだった。
「(準決勝では)1本目という緊張感がない分、良いレースができれば良いかな。本当にベストを狙っていければと思います」
堂々とした語り口で気を吐いた福島。これなら、準決勝での5年ぶりの日本記録更新もあるのではないか――。6月に27歳を迎えた女子短距離の第一人者が浮かべた清々しい笑顔は、記者らが感じていた嫌なムードを一蹴し、期待感を抱かせるものだった。