ボルトの覇権を奪う選手は現れるか!? 世界陸上 男女短距離注目選手を紹介

及川彩子
 陸上の世界選手権(中国・北京)が22日に開幕する。来年に迫ったリオデジャネイロ五輪の前哨戦とも呼べる今大会を間近に控え、世界中のトップ選手たちが続々と北京入りしている。今回は大会の見どころや有力選手を紹介する。

序盤出遅れたボルトの復調は?

“人類史上最速スプリンター”ボルト。大会連覇なるか!? 【写真:ロイター/アフロ】

“世界最速”を決める男子100メートルの争い。王者ウサイン・ボルト(ジャマイカ)の連覇は盤石ではない。

 今シーズン序盤のボルトは不調で、6月に行われたダイヤモンドリーグ第7戦のニューヨーク大会でも男子200メートルで優勝しながらも、20秒29(向かい風2.8メートル)とタイムは伸び悩み。その後、ジャマイカ選手権への出場をほのめかしたが、結局回避。7月に入ってもダイヤモンドリーグ第8戦のパリ国際や、第9戦のローザンヌ大会も欠場した。

 ニューヨークのレース後に「調子が良かったのに、どうしてこんな不甲斐ない結果に終わったのか分からない」と首をかしげた。

 しかし7月24日、世界選手権の本番1カ月前となるダイヤモンドリーグ第11戦のロンドン大会で、100メートル9秒87(向かい風0.8メートル)を出して快勝すると、再び優勝候補に名乗りを上げた。

 今回はモナコで調整をした後、ジャマイカ代表チームが事前合宿をしていた鳥取には寄らず、直接北京入り。事前合宿の見学を楽しみにしていた人たちをがっかりさせたものの、どこまで調子を上げてきているのかは気になるところだ。

絶好調ガトリンが“宣戦布告”

今季絶好調のガトリン。打倒・ボルトの筆頭だ 【写真:ロイター/アフロ】

 ボルトに対抗するのは2005年の世界選手権ヘルシンキ大会で100メートル、200メートル2冠のジャスティン・ガトリン(米国)。今季は5月に行われたダイヤモンドリーグ初戦のドーハ大会で9秒74(追い風0.9メートル)、6月下旬の全米選手権200メートルで19秒57(追い風0.4メートル)と自己ベストを連発するなど絶好調。

 米国チームが事前合宿をしていた千葉県成田市で最後の調整を行っていたガトリンだが、「ボルトは大きな大会に強いので、調子を上げてきていると思う。でも勝てる自信はある」と堂々の宣戦布告。スタートが得意なガトリンと、後半追い上げ型のボルトがどんな戦いをするのか注目だ。天候さえ良ければ、9秒7台もしくはもっと速いタイムが出る可能性もあるだろう。

世代交代の進まないスプリンター界の中で、20歳のトレイボン・ブロメルらがどれぐらい活躍できるか注目される 【Getty Images】

 2人を追うのは07年世界選手権大阪大会3冠のタイソン・ゲイ(米国)やジャマイカのアサファ・パウエルといったベテラン勢。また、全米選手権で今季世界3位となる9秒84(追い風1.3メートル)で3位に食い込んだ20歳のトレイボン・ブロメル(米国)や、そのブロメルを全米学生選手権で破り、追い風参考ながら9秒75(2.7メートル)で優勝したアンドレ・デグラッセ(カナダ)の大学生コンビが、世代交代の進まないスプリント界に風穴を開けられるか、奮起に期待したい。

 男子100メートル決勝は大会2日目の23日、そして200メートル決勝は大会6日目の27日に行われる。

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著者プロフィール

米国、ニューヨーク在住スポーツライター。五輪スポーツを中心に取材活動を行っている。(Twitter: @AyakoOikawa)

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