五十嵐千尋に芽生えたリーダーの自覚 競泳女子リレーチームで日本新に挑む

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200メートル自由形の自己ベストを更新

女子200m自由形準決勝では決勝進出こそならなかったものの自己ベストを更新した五十嵐 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 ロシア・カザンで行われている水泳の世界選手権で4日(現地時間、以下同)、女子200メートル自由形の準決勝に五十嵐千尋(日本体育大)が出場し、全体11位で決勝進出こそならなかったものの、1分57秒75と自己ベストを0秒37更新した。

 前半から積極的な仕掛けを試みるも、100メートルを折り返した時点では57秒85で最下位に沈んでいた。しかし、後半ラスト50メートルの粘りで一気に追い上げ、順位を上げている。

「(藤森善弘)コーチからラスト50メートルで、諦めずに最後まで戦えばいい結果が出ると教えてもらって、最後の50メートルは隣の選手(ミシェル・コールマン)に食らいついて抜くことができました」

 高校生として挑んだ2013年のバルセロナ大会では、同種目の予選で0秒07およばず、1分59秒00の全体17位で予選敗退を喫した。そこから2年間、切磋琢磨(せっさたくま)を続け、これまでなかなか破ることのできなかった1分58秒の壁を世界の大舞台で破り、新たな領域に足を踏み入れた。

リレーのリーダーを任され奮起

女子400m自由形予選では海外選手の速いレース展開にペースを乱され、本来の力を発揮できないまま終わった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 躍進を遂げた五十嵐だが、競泳初日となる2日に出場した400メートル自由形では4分13秒43の全体20位で予選敗退に終わっている。海外選手の早いレース展開にペースを乱され、本来の力を発揮できないまま終わった大会1本目について「がけの下に落ちた感じだった」と語っており、どん底の気分を味わった。そこから気持ちを切り替え、見事な立て直しを見せた五十嵐を支えたのは、リレーリーダーとしての自覚だった。

 4月に行われた日本選手権で代表入りを果たしたあと、五十嵐は今大会のリレー担当を務める村上二美也コーチから「リレーのリーダーは頼んだよ」と声をかけられたという。そこから女子4×200メートルフリーリレーに出場する青木智美(ATSC.YW)、持田早智(ルネサンス幕張)、池江璃花子(ルネサンス亀戸)と積極的なコミュニケーションを取り、ミーティングを重ねてチームワークを高めるなど、リーダーとしてメンバーを引っ張ってきた。その責任感が、200メートル自由形の前に「ここで終わるわけにはいかない」と自らを奮い立たせた。

リレーでは日本記録更新を目指す

五十嵐は持田(左)や池江(右)らと積極的なコミュニケーションを取りリーダーとしてメンバーを引っ張ってきた(写真は4月の日本選手権のもの) 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 自己ベストを更新したばかりの五十嵐だが、既にさらなる伸びしろが見えている。自己ベストを出した200メートル自由形で出遅れたレース前半の改善だ。準決勝では30秒26かかった50メートルから100メートルまでを29秒台で入るレース展開ができれば、同種目の日本記録1分57秒37も更新できると自信を見せる。

 レース前半からしっかり入っていくという考えは、リレーメンバーたちの共通認識でもある。海外の選手についていくため、そして持ち味を生かした自分たちらしいレースをするための意思統一はできている。6日に行われる同種目では、前半から積極的に仕掛ける4人の姿に注目してほしい。

「みんなで楽しんで決勝に進みたい」と語る、リーダー五十嵐の願いはかなうのだろうか。

(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)
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