全力投入型のプレースタイルに限界か ナダルが全英OP2回戦敗退の波乱

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攻め続ける格下相手に先手を奪われる

ナダルが2回戦でまさかの敗退。フェデラーとの黄金時代に陰りが見え始めた 【Getty Images】

 テニスのウィンブルドン男子2回戦で、ラファエル・ナダル(スペイン)が世界ランク102位、予選から勝ち上がったダスティン・ブラウン(ドイツ)に敗れる波乱があった。

 今年のナダルは第10シードだが、この大会では2008年にロジャー・フェデラー(スイス)、10年にはトマシュ・ベルディヒ(チェコ)を倒して優勝。準優勝も3度という実績を誇ってきた。昨年は4回戦で当時19歳のニック・キリオス(オーストラリア)に敗れ、今回は2回戦敗退――。フェデラーとともに黄金時代を築いてきたナダルだが、それに陰りを思わせる1日になった。

 ブラウンは危険な相手だった。ジャマイカ育ちのトリッキーな選手で、芝のサーフェスを得意とし、196センチの長身からくり出すサーブが武器。サーブ&ボレーを主軸に攻め、レシーブでもネットダッシュを仕掛けてくる。強烈なリターンで王座を築いたナダルだが、この日のブラウンは足元を襲うナダルのリターンを、まるで魔法の杖でも扱うように、柔らかな手首からひねりを入れたハーフボレー、ローボレーで返し、追い詰めた。

 第1セットは先にナダルがブレークしたものの、失う物が何もないブラウンは攻め続ける。フラットでたたき返すリターンで意表を突き、ドロップボレーで脅しをかけ、第6ゲームをブレークバック。自分のサービスゲームでは、時にセカンドサーブでも時速200キロを超えるサーブをたたきつける破天荒さで主導権を握ると、ゲームカウント6−5で迎えた第12ゲームをブレークして、先手を奪った。

断ち切れなかった負の連鎖

第1セットを奪ったブラウンが、勢いそのままに最後まで押し切った 【写真:ロイター/アフロ】

 こうした選手は、気まぐれで波があるもの。ところが、ナダルが第2セットを奪還してもすぐにブラウンが流れを取り戻す。2人は昨年のウィンブルドン前哨戦のゲリー・ウェバー・オープンで初対戦し、そのときはブラウンがストレート勝ちしている。当時のナダルは不調ではあったが、ブラウンには芝の大会で勝ったという自信が残っていたのだろう。この日も攻め続け、第3、第4セットでも形勢は変わらずに押し切ってしまった。ブラウンは好調で手が付けられなかった。

 問題はナダルのミスだろう。第3セットでは7本、第4セットでも4本のアンフォーストエラーが記録され、そのミスも、フリーポイントでのミスが目立った。特に第4セットの第1ゲームのサービスゲーム、デュースに入ってから2本、フォアハンドの信じられないミスで致命的なブレークを許した。

「ベースラインからの打ち合いを嫌がる選手は、芝のコートでは思い切ったことを仕掛けてくるものだ。こうしたビッグサーバーを相手に、ミスは許されない。セカンドサーブも同じスピードでくる。リズムをつかめず、試合を通してフォアが良くなかった」

 リズムがつかめずミスを犯し、ミスによって相手がますます攻め込む――芝の速い展開でこうした負の連鎖を断ち切るのは難しく、第4セット、ナダルはブラウンの5度のサービスゲームで4ポイントしか奪えなかった。さすがに暗い表情の会見だった。

「今年は十分に準備して大会に臨めたし、芝の前哨戦でも勝ってきた。負けを引きずるタイプではないが、今は非常に失望している」

 ナダルは19歳だった05年で全仏オープンに初出場、初優勝を飾って華々しくデビュー。フェデラーに挑戦する形で、生涯グランドスラムを含む通算14回のメジャー優勝を果たしてきた。そのフェデラーは30歳を契機にプレースタイルに変化を加え成功している。しかし、オールラウンドプレーヤーのフェデラーとは違い、ナダルはパワーと脚力をバネにした全力投入型。29歳になったばかりだが、これまでのような圧倒する勝ち方は難しいだろう。テニス界の人気を二分してきた存在だけに、気掛かりだ。

クルム伊達はダブルスでヒンギス組と対戦

 日本勢のシングルスで唯一、残っていた奈良くるみ(安藤証券)は、第2シードで昨年覇者のペトラ・クビトバ(チェコ)と対戦し、パワーに圧倒されストレート負けで姿を消した。残った日本勢は女子ダブルスの奈良とクルム伊達公子(エステティックTBC)だけで、そのクルム伊達のペアは、現地時間3日に第1シードのマルチナ・ヒンギス(スイス)のペアと対戦する。

 男子では、フェデラー、アンディ・マレー(イギリス)、ベルディヒら上位シード勢が勝ち進み、女子では第8シードのエカテリーナ・マカロワ(ロシア)が敗れた以外は、ほぼ順当だった。

(文:武田薫)

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