中村ノリ、解かれない“懲罰”の果てに DeNA戦力外通告までの苦しき日々
懲罰が解かれないまま迎えた10月3日、中村は戦力外通告を受けた。本人は現役続行を希望している 【写真は共同】
相談したはずが監督批判と受け取られて
ただ例外も存在する。大阪近鉄球団消滅からメジャーリーグのロサンゼルス・ドジャース、オリックス、中日、東北楽天、横浜(横浜DeNA)と渡り歩いた苦労人が窮地に立たされている。中村紀洋だ。余りある実績を持ちながら“究極の外様”となってしまった。
5月7日の出来事だった。球団の方針に従わない行動があったとして、突然の登録抹消。これを受け、中村がSNSのフェイスブックで経緯などを掲載し、世間にその是非を問うた。
同6日の巨人戦(東京ドーム)での出来事だ。中村が打席に入った際、一塁走者には“グリーンライト”点灯中の梶谷隆幸が出塁していた。バッテリーをかく乱しようと、激しく動き回る状況に中村が疑問を感じコーチに相談。「走者を場面によっては動かさず、打撃に集中させてほしい」と申し入れたことがきっかけだ。
これが相談とは取られず、監督批判と受け取られた。そして、中畑清監督から「チーム方針に従わない言動があった。(抹消は)懲罰的な部分がある」ということで、直接ではなく、マネジャーから連絡が入り抹消が申し渡された。「必要な戦力である」という説明があったものの、青天のへきれきだった。本人からすれば、相談するという行為が「批判」と取られたのだから戸惑いは隠せない。
この投稿には一晩で24万ものアクセスが集中した。それほど注目度が高かったのだ。コメントの書き込みも2000件超という驚異的な数字に上った。これまでトラブルが少なかったとは言えない中村に対し、批判的なコメントも目立ったが、賛否両論が飛び交った。中には高田GMや中畑監督への批判もあるという状況を受け、球団側は慌てて火消しに動いた。
いつ呼ばれてもいいように準備していたが……
「大事な時期になってもお呼びがかからない。自分は本当に必要な戦力なのだろうか。普通、そうは思えない」と危惧。そうした中、一部スポーツ紙から「中村退団へ3度目のFA宣言」や「中村、現役続行宣言」などの見出しが躍ることとなった。
この直後の中村の心境はこうだった。「正直、周りが僕のことでごちゃごちゃ騒いでも、チームが(クライマックスシリーズ進出の)可能性を信じて戦っているときに、自分のことを話すのは失礼だと思う。自分のやることは、いつ呼ばれてもいいように準備を続けること」
これは紛れもない本心であり、DeNA担当記者に対応した際にも同じ内容のことを話している。事実、イースタン・リーグでは遠征にも帯同せず、1試合2打席ほどと出場機会が限られる中で43試合、打率2割9分、1本塁打、10打点の数字を残したのは腐っていない証拠だ。