中村ノリ、解かれない“懲罰”の果てに DeNA戦力外通告までの苦しき日々

週刊ベースボールONLINE

昨年の契約更改から募った不信感

中村にとって、5月6日の巨人戦が今季1軍で最後の出場となった。果たして来季は? 【写真=高塩 隆】

 とはいえ、問題は心の中に生じたわだかまりだ。巨人戦でのプレー1つが、中村の心を波立たせたわけではない。昨年10月下旬の球団との年俸下交渉では、日本シリーズ終了までに球団提示金額で合意しなければ契約しないと通告を受けた。FA権を持つ中村に対し、戦力外をちらつかせる強引な“肩たたき契約”を迫ったことは記憶に新しい。これにはDeNA選手会も異議を唱えたほどだ。

 その直後に球団はオリックスからバルディリス獲得の方針を決定。当初は中畑監督も「4番・ブランコ、5番・ノリは不動」と公言していただけに、高田GMとの意思統一がなかったことが確かだと言って間違いない。さらに、春季キャンプは2軍スタート。「CSに出場するために近鉄、中日での優勝経験を若手に伝えたい」と張り切っていた中村だが、不信感は増すばかりだった。故障でも調整遅れでもない中で、疎外感を感じ、若手と泥にまみれた。

 キャンプ宿舎での夕食で食あたりを起こした際は、高田GMから「いつも、ええもんばっかり食うとるからや」と、とんでもない言葉が浴びせられたという情報もある。こんな状況で、この言葉を冗談だと受け流せる人間の方が異常だろう。

わずか3分間だけのトップとの会談

 それでも中村は耐え続けた。チームのために、とポジションがかぶる選手が2軍調整に来たとしても、積極的にアドバイスを送った。後藤武敏の復調ぶりが好例でもある。ブランコも中村の技術に信頼を寄せており、自ら助言を求めることもあったほどだ。球団内部にも「いてもマイナスになる存在ではない。あそこまでの立場でなくては、自分の商売道具である技術を若い選手に惜しげもなく教えるなんてできない」との声もあるほどだ。

 どこのファンが、中村に対して行儀よく、まじめな姿を求めているのだろうか。そんな中村を見たいDeNAファンにはいないだろう。優等生だろうが不良だろうが、2000安打、400本塁打という数字だけはウソをつかない。だとすれば、生意気な若造に対してもリスペクトがあっても当然ではないだろうか。「必要な戦力なんだ」と口にしておいての飼い殺し。そこに追い打ちをかけるように大補強となれば、立派な“パワハラ”だと言っていいだろう。

 9月23日、中村は高田GMと会談し、現役続行の意思を伝えたというが、会話した時間は「たったの3分」という。しかも、ほとんど中村が話すだけだった。そして10月3日、DeNA球団は中村と来季の契約を結ばないことを発表した。球界の歴史に名前を刻んできた中村獲得のオファーを出す球団はあるのか? 今後の中村の去就から目が離せない。

(文=楊枝秀基/スポーツライター)

2/2ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント