ガチンコ禁止のフットサル大会があった! 楽しさを追求、初めてでも参加OK
【ガチ禁】
ガチ禁とは?
「ガチ禁」の最大の目的はプレーを楽しむこと。実力に関係なく、初心者でも気軽に参加できる 【ガチ禁】
文字通り、「ガチでプレーすることを禁ずる」フットサル大会である。プレー中のスライディングは禁止、体の接触も厳しく取り締まり、ゴールから一定以上離れたところからのシュートも無効になるなど、一風変わったルールで行われている。
この大会の最大の目的は、プレーを楽しむこと。勝ち負けや順位にこだわらず、プレーを純粋に楽しもう、ということだ。その証拠に、優勝チームは対戦結果ではなく、各チームの投票で「どのチームと対戦したら楽しかったか、再戦したいか」で決まり、組み合わせ表にも順位欄はない。
通常の大会の場合、どうしても勝負にこだわる面が出てしまい、初心者は参加しづらい空気がある。少しのミスが直接敗因につながりやすいフットサルで、ミスを起こしやすい初心者が参加するのは、確かにハードルが高い。その点、「ガチ禁」ではミスも含めて楽しもうという空気が自然と出来上がっているため、実力に関係なく気軽に参加できるのだ。
とはいえ、プレーヤーが真剣にプレーしていない、というわけではない。悪ふざけをして突然自陣ゴールに蹴り込むことや、相手にちょっかいを出しておもしろおかしく笑う、という意味でもない。
全員が真剣にゴールと勝利を目指し、一生懸命にプレーする。勝ち負けにこだわらず、チームで協力してゴールを目指す行為そのものを楽しむ。それがこの大会なのだ。
ガチじゃない雰囲気でみんなが楽しめる
試合は終始和やかなムードで進み、ピッチ上では笑いが絶えない 【ガチ禁】
「疲れました(笑)。でも楽しかったです。気持ちは真剣にプレーしていて、でもミスがあっても引け目は感じずに、ガチじゃない雰囲気が良かったですね」
また、同じチームの男性は次のように話した。彼はサッカー経験者だが、「ガチ禁」の意味を肯定的にとらえているようだ。
「盛り上げることはすごく意識しました。あとで彼女たちに何を言われるか分からないので(笑)。普通の大会では、自分たちのチームがいくら意識しても、他のチームが『ガチ』だと結局そういう雰囲気になって、初心者が入りづらくなってしまいます。
この大会は、前提として『ガチ禁』を設定してくれていて、対戦相手もその空気を共有しているので、本当にみんなが楽しめています。やはり全員が同じ空気を共有しているのは大きいですね」
参加者は「楽しい」と口をそろえる。そして実際に、ピッチ上でも笑いが絶えない。得点が決まれば所属チームに関係なく大きな声援が起こる。ミスが起きればちょっとした野次(やじ)でからかい、ミスをした本人も「わりぃ」といってすぐに次のプレーに入る。いざこざや言い争いもなく、試合は終始和やかなムードで進行した。
グリーンカードが大会を盛り上げる
初心者だけでなく、経験者にとっても新しい体験に 【ガチ禁】
すると、お父さんから離されて不安になってしまった娘さんは、笛の音を合図に泣き出し、グラウンドには大きな泣き声が響き渡った。男性はすぐに交代し、娘さんをなだめに入った。すると、その行為に対して審判から掲げられたのはフェアプレーを称えるグリーンカード。「ガチ禁」ではグリーンカードが得点に加算されるため、男性は娘さんをなだめてチームの勝利に貢献したといえる。
かくいう筆者も心当たりがある。高校時代まではプレーヤーとして活動していたが、やはり「うまい者が正しい」という空気はあり、控えチームからトップチームに上がったときは苦労した。
一方で、社会人になってからは周りが初心者ばかりの中でプレーすることが多い。その環境の楽しみ方は「ガチ禁」と同じ。勝敗にはそこまでこだわらず、全員でゴールと勝利を目指す行為そのものを楽しむのだ。
この大会の魅力は、やはりその敷居の低さ。誰でも歓迎されるムードが自然に出来上がっている。それは初心者だけでなく、経験者にとっても新しい体験になるはず。なぜなら、初心者や女性に向けて精いっぱい気を遣って優しく出すパスは、通常のプレーよりも神経を使うものだからだ。
(取材・文/中村僚)
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