朴賛浩と李承ヨプが得た“輝ける場所”=韓国の英雄の新たな挑戦

室井昌也

国民的英雄2人が同じチームに入った理由とは…

メジャー通算124勝の実績を誇る朴賛浩 【写真は共同】

「野茂英雄と松井秀喜が同じチームに!」
 もし、そんなことがあったら、日本人はそのチームから目が離せなかったはずだ。今、そんな視線が、韓国からオリックスに向けて送られている。韓国人メジャーリーガーのパイオニア・朴賛浩と、アジアの大砲・李承ヨプが同じユニホームに袖を通しているからだ。ここ数年、不遇の時を過ごした2人。彼らが得た、輝ける場所。それがオリックスだった。

 アジア人最多のメジャー通算124勝を挙げた朴賛浩が、メジャーリーガーのプライドを損なうことなくオリックス入りを決めたのは、交渉でのある一言がきっかけだった。
「先発投手として期待している」
 朴賛浩はこう話す。「パイレーツを含む4チームからオファーがあったが、どれもマイナー契約の提示。キャンプに招待選手として参加しなければならないので、どうするか悩んでいました。その時に、オリックスから声をかけられました。先発のマウンドに上がれるというのは、私にとって大きな意味があります」。

 巨人を戦力外になった李承ヨプは、出場機会が得られるオリックスに招かれた。「3年間休んでいたような状態だったけど、まだ日本でレギュラーを張れるということを知ってもらいたい。『実力がなくて、ずっと2軍にいたんじゃないんだ』。そんなファンの声が聞きたいです」

韓国野球記者は朴賛浩の活躍に厳しい予想

 2月、オリックス宮古島キャンプ。2人の様子はこれまでとは違っていた。韓国のメディアにとって、朴賛浩は“難敵”。インタビューしづらい選手として知られている。しかし、キャンプ中の朴賛浩は韓国の報道陣に対して好意的に接した。一方の李承ヨプは、巨人での2軍生活中、外部との接触を極力遮断。会話をしても野球に関する話題から避けようとしていた。しかし今年のキャンプでは、「練習量が巨人の3倍でしんどい」としながらも、笑顔に溢れ、充実ぶりがうかがえた。

 心機一転、新天地で今シーズンを迎えた朴賛浩と李承ヨプ。2人は期待通りの活躍を見せるだろうか。今回、韓国の野球担当記者たちに、朴賛浩と李承ヨプの今季の成績についてアンケート調査を実施した(全7社、10人が回答)。それによると朴賛浩に対しては、すべての記者が「10勝未満」という厳しい予想をした。理由として「メジャーリーグとは異なる日本の環境に適応するのは難しい」とするものや、「球速が150キロ出るならともかく、朴賛浩の制球力は日本では通用しない」というものだった。打開策としては「メジャー当時のように、打者との勝負をするのではなく、キャッチャーのリードを重視すべき」という意見があった。

精神面がポイントになる李承ヨプ

苦しんだ巨人時代からの復活を狙う李承ヨプ 【写真は共同】

 李承ヨプについてはいずれも、ホームラン20〜30本、打点70〜90打点の活躍が期待できるという回答だった。すべての意見に共通していたのが、「巨人で失った自信を取り戻せばやれる」や、「あまり悩むな」、「重圧を感じるな」といった、精神面さえ克服すれば結果を残せる内容だった。
 この点については李承ヨプ自身も、「巨人の時は大きな期待を背負い過ぎて、辛いことが多かった」と認めている。しかし今季については、「同じチームに朴賛浩投手がいることで、ファンの関心が分散するので助かります。もし韓国人選手が自分1人だったら、期待が負担になったでしょう」と、朴賛浩の存在がプラスになっていると語った。

 現在、韓国では、スポーツ専門チャンネルの系列局でオリックス主催試合が生中継されている。また、1日に2度、ゲームダイジェストが放送されるなど、注目度は高い。
 韓国を代表する英雄、朴賛浩と李承ヨプ。2人は求められて入団したオリックスで、復活への「新・黄金時代」のスタートを切ろうとしている。

<了>
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著者プロフィール

1972年東京生まれ。「韓国プロ野球の伝え手」として、2004年から著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』を毎年発行。韓国では2006年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当し、その他、取材成果や韓国球界とのつながりはメディアや日本の球団などでも反映されている。また編著書『沖縄の路線バス おでかけガイドブック』は2023年4月に「第9回沖縄書店大賞・沖縄部門大賞」を受賞した。ストライク・ゾーン代表。

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