韓国王者・KIA、脅威の「ミラクル打線」に注目=日韓CS観戦ガイド

室井昌也

“負け癖”払拭し12年ぶり優勝

「ミラクル打線」を引っ張る元大リーガー崔煕燮。米では4年間で40本塁打を記録 【ストライク・ゾーン】

「戦略や作戦よりも、チームの“負け癖”を取り去るのが急務だった」
 3勝3敗で迎えた韓国シリーズ第7戦、劇的なサヨナラホームランで優勝を手にしたKIA・曹凡鉉監督は、チームを預かってからの2年間をこう振り返った。

 KIAの前身はヘテ・タイガース。宣銅烈(現サムソン監督)や李鍾範(いずれも元中日)といったスター選手を擁し、86年からの4連覇を含む9度の優勝を誇った名門球団だった。しかし、球団の資金難によりチームは弱体化。01年途中にKIAに身売りし、05、07年には最下位も経験した。チームには敗者の意識がまん延していたが、曹凡鉉監督の下、意識改革に成功。今季、シーズンを通して安定した成績を残し、見事12年ぶりの頂点に立った。

カギを握る元大リーガーとMVP男の“CK砲”

 優勝の原動力のひとつが強力な先発投手陣だ。ハーラートップタイのロペスとガトームソンの2人で27勝。以下、尹錫ミンなど韓国球界では異例の6人体制の先発陣がきっちりとゲームを作った。
 そしてもうひとつが、脅威の「ミラクル打線」だ。チーム打率は2割6分7厘でリーグ最下位だが、得点圏打率は2割7分8厘でリーグ2位。KIAで臨時打撃インストラクターを務めた松原誠氏が「2アウトからこんなに打つチームは今まで見たことがない」と評する、勝負強さが特徴となっている。
 その中心となるのが、米大リーグでの4年間で通算40本のホームランを放ち、07年に韓国球界入りした“ビッグ・チョイ”こと崔煕燮と、打点、本塁打の2冠に輝いた金相賢の“CK砲”だ。金相賢は今季初め、LGで控え野手としてスタートしたが、シーズン途中の4月19日にトレードでKIA入り。移籍後、15試合で放ったホームラン3本が、すべて満塁ホームランという大爆発を見せた。金相賢の勝負強さはシーズン終盤までとどまることなく、得点圏打率はリーグトップの4割3厘。文句なしの活躍は、03年の李承ヨプ(現巨人)以来6年ぶりの、打者による最優秀選手(MVP)獲得となった。

両外国人&エース不在危機に若手左腕がマウンドへ

先発が予想される高卒3年目の正統派左腕・梁弦種 【ストライク・ゾーン】

 投打がかみ合い優勝を手にしたKIAだが、今回の「日韓クラブチャンピオンシップ」ではシーズン中より戦力ダウンすることが避けられない。それは先発の柱である両外国人投手とエース・尹錫ミン、そして1番打者の李容圭が不参加だからだ。尹錫ミンと李容圭は北京五輪の金メダリスト。メダル獲得により兵役免除を得たが、今回、4週間の基礎軍事訓練参加のため出場が見送られてしまった。
 今大会で先発投手3人を欠くKIA。そのため、長崎のマウンドに立つのはこの男に確定した。高卒3年目の正統派左腕・梁弦種だ。梁弦種は高い位置のリリースポイントから、150キロ近い速球と2種類のチェンジアップなどの緩急を、早いテンポで投げ込んでくる投手。度胸満点の投球で今季12勝(5敗)を挙げた。この梁弦種に対し、初顔合わせとなる日本の選手たちは、北京五輪での金廣鉉(SK)のように手こずるのではないか。

 そして、このチームで忘れてならないのが、日本プロ野球・中日に1998年から4年間在籍したこともある“KIAのアニキ” 39歳の李鍾範だ。今季、4年ぶりに規定打席に到達し、韓国シリーズ第1戦では決勝打を含む3打点でその存在感を誇示するなど、ここ一番には絶対的な信頼がある。
 一発勝負の今大会で、梁弦種の快投とCK砲、そして李鍾範が大暴れすれば、KIAが日韓王者となる可能性は十分にあるだろう。
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著者プロフィール

1972年東京生まれ。「韓国プロ野球の伝え手」として、2004年から著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』を毎年発行。韓国では2006年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当し、その他、取材成果や韓国球界とのつながりはメディアや日本の球団などでも反映されている。また編著書『沖縄の路線バス おでかけガイドブック』は2023年4月に「第9回沖縄書店大賞・沖縄部門大賞」を受賞した。ストライク・ゾーン代表。

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