チームワークで勝ち得た金メダル=野球韓国代表の強さの秘密
何よりも重視されたチームワーク
金メダルを首から下げ歓喜の輪をつくる韓国ナイン。この姿が彼らのチームワークを象徴している 【Getty Images/AFLO】
これは、金卿文韓国代表監督(斗山)が、代表チームについてコメントを求められた際、再三、口にしてきた言葉だ。この言葉が予選リーグ、準決勝、そして決勝戦と9戦全勝で金メダルを手にした韓国を象徴する。
代表チームの編成に関わり、元解説者で現・韓国野球委員会(KBO)事務総長の河日成氏は、今回のメンバー選考をこう振り返る。「今のメンバー以外にも、何人か選ばれていてもおかしくないという選手はいた。しかし、金卿文監督はチームワークを保てる選手を優先に選んでいった。それは、金卿文監督らしい選択だった」。
その一例として挙がったのが、チーム最年長の金敏宰(ハンファ)だ。金敏宰のポジションはショート。正遊撃手としては朴鎭萬(サムソン)がおり、控えとして選ぶなら若い選手を入れるという選択肢もある。また、キャプテン役には正捕手の陳甲龍(サムソン)がいる。しかし、河日成事務総長は「金敏宰の選手たちを調和させる能力には、秀でたものがある」と金敏宰の選考理由を語った。金敏宰は今大会、11打数無安打で目立った活躍は見せてはいないが、選手間の心をつなぎ、また一塁ベースコーチャーとして見えない力を発揮していた。
一方で、代表チームの常連、李炳圭(中日)は世界最終予選、本戦と召集されなかった。昨年12月のアジア予選、台湾戦で緩慢な守備を見せ、その間に得点を許すなど「調和とチームワークに欠いた」というのも理由のひとつだ。
金卿文監督が選んだ選手たち。その中で、投手陣の柱となったのが、2度の日本戦に先発し好投した金廣鉉(SK)、カナダ戦、キューバとの決勝戦で完ぺきな投球を見せた、柳賢振(ハンファ)の若き左腕両エースだ。しかし、この2人とも、代表合宿直前の7月中、下旬は、公式戦での投球内容が良くなかった。不安な状態のまま北京入りするところだったが、それを打ち消したのが、8月5、6日にソウルで行われたキューバとの練習試合だ。5日の試合で金廣鉉が2回2/3、柳賢振が2回をそれぞれ無失点に抑え、自信を持って五輪に臨むこととなった。
この練習試合では、未知の部分が多いとされるキューバの選手たちを、2度の対戦で把握できたことも大収穫だった。これはキューバチームの五輪前韓国合宿を招致し、練習試合を組んだKBOの好プレーで、現場と事務方の「チームワーク」が実を結んだと言える。
信じ続けた主砲の快打
韓国の主砲・李承ヨプ。1次リーグは不振だったが、準決勝、決勝では本塁打を放った 【Getty Images/AFLO】
そして、不振の李承ヨプ(巨人)を最後まで信じ、4番として起用し続けた結果、準決勝での決勝2ラン、決勝戦での先制2ランを生んだ。たとえ結果が出なくとも「李承ヨプなら土壇場でなんとかしれくれる」。これは、ベンチの全員が信じて疑わないことだ。それは「李承ヨプが韓国を代表する打者だから」というだけではなく、ひざ痛で苦しんだ2000年シドニー五輪、極度の不振で「逆シリーズ男」になりかけていた02年韓国シリーズなど、過去に苦しい状況でも最後の最後にチームを勝利に導く快打を見せているからだ。
「目標は銅メダル。銅メダルにも意味はある」。金卿文監督がそう言って臨んだ北京五輪。韓国はどのチームよりも強い個々の勝利への思いと、それを結集させたチームワークで目標を超え、頂点まで上り詰めた。
<了>
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