新しいヒロイン2025《97期生・六車日那乃》

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六車 日那乃 【Photo:Atsushi Tomura/Getty Images】

2025シーズンがまもなく開幕する。最終プロテストの難関を突破した97期生が希望を胸にデビューを待つ。2024年の総受験者は695人、合格率はおよそ3.7パーセントだった。今年、羽ばたく26人を紹介する。

むぐるま・ひなの=2002年4月23日、埼玉県さいたま市出身

「強制と洗脳でしょうか」。六車日那乃はプロを目指したきっかけを2つの言葉で説明する。8歳のときに家族で練習場へ行ったのがゴルフとの出会いだった。初めていく練習場。右も左も分からないまま六車がボールを打った後、父親が「明日から毎日練習だからな」と発した。「うん」とうなずくと、翌日から本当にボールを打つことが日課となる。「父からは『お前は将来プロになるんだからな』とずっといわれてきました」。当初は「そうか、自分はプロになるのか」としか思っていなかったが、テレビのゴルフ中継を観る機会も増え、いつしか「プロになりたい」と気持ちが変わっていった。

ただ、父親の指導は思いのほか厳しく、ゴルフを楽しいと思ったことは一度もなかったという。「メンタルがボロボロでしたし、本当にゴルフを辞めたいと考えていました」。それでもゴルフを続けたのは、人並み以上に負けず嫌いだったからだ。02年生まれの埼玉県出身といえば、岩井明愛、千怜姉妹に佐久間朱莉がいる。彼女たちは当時から六車にとって大きな刺激となっていたが、彼女たちに負けたくないという気持ちだけは捨てることがなかった。

小学校を卒業すると、ゴルフが盛んで中高一貫の麗澤中学・高校へ進学。1学年上には西郷真央、2学年上には吉田優利、長野未祈、高校には工藤優海、河野杏奈がいた。「中学の先輩だけでなく、高校生の先輩方とも一緒に行動できるところがいいと思ったのが理由です」。先輩とのラウンドは勉強になることが多く、1時間30分ほどの通学時間は少しも苦にはならなかった。

六車自身の実力もメキメキと上がり、中学生では関東ジュニアや関東中学ゴルフ選手権で優勝。高校生でも関東高校ゴルフ選手権、全国高校ゴルフ選手権で2位に入るほか、JLPGAツアーに出場しても予選通過していた。20年にはナショナルチームにも所属したが、初めて受験したプロテストを通過することはできなかった。

六車 日那乃 【Photo:Atsushi Tomura/Getty Images】

2度目のプロテストを受験する前の21年に辻村明志コーチに師事。「自分の力だけではもう無理だと思い、トッププロになるために力を貸してくださいとお願いしました」。辻村コーチの指導は単なる技術指導だけでなく、体力トレーニングやコースマネジメントなどにも及ぶ。さらには、上田桃子を筆頭として同門の先輩プロからも学ぶことは少なくなかった。ゴルフに対する姿勢や考え方を見たり、聞いたりすることで自分もより真摯にゴルフに対して向き合えるようになった。

特に上田からはいろんなアドバイスをもらった。「私が自信を失っていたとき、無理に明るくするのもきつかったんですが、『自分の心が前を向いていれば周りから暗く見えてもいいんだよ』といっていただいのがうれしかったですね」。周囲から注目されながらもなかなかプロテストに合格できなかった六車。その辛さは本人にしか分からないが、上田からのひと言で気持ちがかなり楽になった。昨年、5度目の挑戦でプロテストに合格したが、上田も自分のことのように喜んでくれたという。

六車 日那乃 【Photo:Atsushi Tomura/Getty Images】

将来的には年間女王や海外の試合で活躍したいという思いもあるが、今は地力の底上げをテーマにしつつ、今季のメインとなるステップ・アップ・ツアーで優勝を目指していく。アマチュア時代に33試合のJLPGAツアーに出場した経験を持つ六車だが、その経験をぜひとも活かしたいところだ。(山西 英希)
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