「もう一度W杯で得た興奮や思い出を」馬場雄大が語る日本代表とB1長崎の熱狂

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日本代表の経験も抱負な長崎ヴェルカの馬場雄大 【(C) fiba.basketball】

 世界に圧倒された「東京2020オリンピック」、沖縄で歓喜した「FIBAワールドカップ2023」、悲願の勝利まであと一歩届かなかった「パリ2024オリンピック」。現在29歳の馬場雄大は、その全てでコートに立ち、着実に歩みを進めるバスケットボール男子日本代表の主力選手としてキャリアを築いてきた。

 NBAプレーヤーになるという夢を追いかけ海外挑戦してきたなか、昨シーズンからB1長崎ヴェルカに入団。再契約を結んで臨む『りそなグループ B.LEAGUE 2024-25 SEASON』では、キャリアハイペースの1試合平均16.1得点4.3リバウンド4.1アシストと、コート内での存在感をさらに高めつつある。

 コンディション調整のため、昨年8月のパリ五輪を最後に日本代表活動からは遠ざかっているものの、実際に世界を体感してきた馬場が、現在の日本代表の成長をどう見ているのか。また、“夢のアリーナ”である「ハピネスアリーナ」が完成し、リーグ屈指の熱狂を生みだしている長崎の現状やB1終盤戦への意気込みなども語ってもらった。

若手台頭を実感…次の五輪への思いは

――まずは今シーズンの話をうかがう前に、パリ2024オリンピックについて。少し時間も経ってしまいましたがが、総括するとどのような大会だったでしょうか。

馬場 自分の納得するような結果で終えることができなかったですし、チームとしても求めていた結果は達成できなかったので。悔しいというか、次につながる大会になったのかなと思います。

――自身2度目の五輪出場でしたが、東京大会の時とは違った手応えや反省はありますか。

馬場 チームとしての手ごたえはすごく大きく感じました。オリンピックに出場するような国に対して、あと一歩のところまでプレーできたということで、日本バスケの成長を感じた大会でしたし、そこに関しての手ごたえはありました。個人としては色々と考えて悩んでの大会だったんですけど、年齢も上がってきたなかチームでの在り方を考え、結果やパフォーマンスには納得していないですけど、チームの一員としてあそこまで行ったことに関しては、いい経験ができたのかなと思います。

3連敗を喫した日本…馬場は全試合に出場した 【(C) fiba.basketball】

――東京五輪、ワールドカップ、パリ五輪と主要国際大会に出続けています。日本代表の経験値が上がってきている実感はありますか。

馬場 そうですね。大きな大会に日本代表として参加する機会も増えて力もつけてきたというなかで、ひとつ大きいのは若い世代の台頭かなと思っています。今回も彼らの力なくしてはここまで歩んでこられなかったと思っています。経験ももちろんそうですけど、若い選手たちが力をつけてきたところで、ひとつ自分たちの歩みがあるのかなと思っています。

――若手と言えばジェイコブス晶選手が大学生ながらパリ五輪の舞台に立ちました。彼のチームでの立ち振る舞いなどはいかがでしたか。

馬場 誰よりもバスケットボールにコミットしている選手といいますか。練習の何時間前かわからないくらい早くに体育館に来ていますし、人生を全てバスケットボールに注いでいるという印象で、もちろん日本のバスケットボールの将来を担っている存在だと思っています。すごく期待の大きい選手ですし、性格はすごくピュアで人懐っこくて、一緒にプレーできてすごく楽しかったです。チームを盛り上げるムードメーカーでもあったので、いいキャラクターをしているな、と思っていました。

パリ五輪では日本の若き司令塔が一層輝きを放った 【(C) fiba.basketball】

――河村勇輝選手はいかがですか。若手というよりも頼もしい中心選手だったかと思いますが。

馬場 そうですね。成長スピードがすごく早いと思っていて、それこそ代表入りたての頃から一緒にプレーさせてもらっていますけど、この短い時間であそこまでのパフォーマンスをするようになって、今ああいう形でNBA選手になっているという状況。彼の取り組み方や考え方には刺激をもらっていましたし、若い世代というよりは、そういうものを感じさせないくらいチームの中心となる存在になっていったので、僕としても学ぶものがありました。

――この先も日本代表の道は続きます。2027年のワールドカップと2028年の五輪は、馬場選手のモチベーションになっていますか。

馬場 モチベーションになっています。やっぱりオリンピックの借りはオリンピックで返すじゃないですけど、あと一歩のところまで来ている状況で、日本のバスケットボールを見ていると(五輪での勝利を)達成しうる可能性が大いにあるチームになっていくと思います。そこに自分がどのように絡んでいけるのかというのもすごく楽しみですし、もう一度ワールドカップで得たような興奮や思い出みたいなものをオリンピックの場で作りたいな、という思いはありますね。

長崎2年目は試行錯誤…終盤戦へ明るい兆しも

序盤戦はスミスが得点力を発揮した一方で白星を伸ばせなかった 【(C) B.LEAGUE】

――五輪を終えて迎えた「りそなグループ B.LEAGUE 2024-25 SEASON」。まずはコンディション調整からでしたか。

馬場 昨シーズンの入りに比べると、コンディション調整(の部分)はそんなに大きくはなかったと思います。昨シーズンは肩の故障で開幕戦も出られなかったり怪我の対処もあったのですが、今年に関しては怪我もなかったので。

――ヘッドコーチや外国籍選手も変わっての開幕でした。アジャストが必要な部分もあったのではないですか。

馬場 ウイングにマーク・スミス選手が入ったり、すごく得点力のある選手が加わったなかで、自分も彼(スミス)を頼ってばかりはいられないというか、自分もどのように得点を取っていくか、プレースタイルだったり、あり方みたいなことを考える事はありました。

――ケガ人が出てフルメンバーで戦えなかったり、連敗が続いた時期もありました。

馬場 積み上げたものが一度崩れるじゃないですけど、積み立て直すという状況が続いていたので、そこに関しては難しかったです。ただ、チャンピオンシップを目指していくにあたって、『誰かがいないからできない』ということはあってはならないことだとチームとして再認識することができたので、そういう意味ではいい形で来ていると思っています。これからフルメンバーで勝ちを積み重ねていきたいというチーム状況ですね。

――となれば、今回のバイウィークは長崎にとっていいタイミングですね。

馬場 そうですね。プレータイムが偏っているところもありますし、選手には十分な休養を与えられると思います。ここまで望むような勝ち星は挙げられていないですけど、連敗が続いている時のような感じではないので、バイウィーク明けから加速していけるかなというイメージです。

年末から7連敗もあった長崎…2月に入り西地区上位の島根を撃破するなど上昇気配 【(C) B.LEAGUE】

――今シーズンは新ホームアリーナである『ハピネスアリーナ』も開業しました。凄い盛り上がりですが、選手目線からはどのように感じていますか。

馬場 今50試合連続でホーム戦のチケットが完売しているんですよね。数字を見てもわかるように、去年に比べてアリーナのキャパも大きくなったので、その熱量を感じ取っていただけているのかなと思います。たとえ負けているときであっても、気持ちを切らさず一緒に戦っている感じがありますし、できて数年のチームとは思えないくらいの熱量です。この場でプレーできることを感謝せざるを得ないような環境をファンの皆さまが作ってくれているなと思います。

――練習施設も新しくなり、選手にとってはリーグトップクラスの環境になったとか。

馬場 サブアリーナとメインアリーナが直結しているアリーナは、日本国内を探してもなかなかないと思いますね。ヴェルカで働いている方たち、扱っている機材も凄いものを用意してくれていますし、バスケットボール選手としてすごく恵まれた環境でプレーできていると思っています。

――長崎は第21節終了時点で16勝21敗の西地区6位。まだまだCSホーム開催を狙っていきたいですよね。

馬場 もちろんです!

外から見た新生ホーバスジャパン

――現在の日本代表についてもお話を聞かせてください。11月のアジアカップ予選はコンディション不良で出場できませんでしたが、長崎の山口颯斗選手や川真田紘也選手など、若手が招集されていました。外からどのように見ていましたか。

馬場 やはり日本代表経験が豊富な選手たちはさすがだな、という印象を受けました。富樫(勇樹/千葉ジェッツ)にしても、比江島(慎/宇都宮ブレックス)にしても、ジョシュ(ホーキンソン/サンロッカーズ渋谷)にしても、吉井(裕鷹/三遠ネオフェニックス)にしても。若手が入ってきたぶん、彼らの凄さが改めて見えたというか。若手選手たちにとっては、彼らとプレーできることは貴重だと思うので、そういった機会を大切にして、もっと経験を積んでほしいなと思って見ていました。

長崎からは山口と川真田が日本代表に招集された 【(C) B.LEAGUE】

――山口選手はポジションも一緒です。日本代表を経験したことによる変化などは見受けられましたか。

馬場 どうですかね…。いい意味で変わっていないというか(笑)。日本代表でやるべきことと、チームでやるべきことは役割も違いますし。いい意味で代表とヴェルカにアジャストしていますね。

――器用なんですかね。図太さも持ち合わせていたり。

馬場 彼独特のリズムがありますね。ただ、グーっとハマっていってしまうタイプでもあるので。心地よくプレーさせると、どこまでもいける選手だなと思います。

――川真田選手はいかがですか。どうしても明るいキャラクターが先行してしまっている印象もありますが。

馬場 そうですね(笑)。でも、それは彼本人が一番感じていることだとも思います。試合でそれほどプレータイムは得られてないですけど、練習中のプレーでは明らかに5番(センター)として経験を積んで成長しているところが見受けられるので、あとはチャンスをものにするだけかなと思います。皆さん、もう少し待っていただければ。

“沖縄とは違う”「真価が問われる」国際大会

――2月20日の中国代表戦と23日のモンゴル代表戦は、若手中心のメンバー構成となります。アウェーという環境も貴重な経験になるかと思います。

馬場 すごく楽しみですよね。若い世代の台頭は目を見張るものがありますし。彼らが集結して強豪国である中国に向かっていくことに、いちバスケットボール選手として興味があります。どこまでやってくれるのか、僕としてもワクワク感みたいなものがありますね。期待できる選手たちが集まっているので、楽しみに見たいなと思います。

――特に中国戦はアウェーの洗礼を受けることになりそうですね。

馬場 2019年のワールドカップで中国に行ったことがあるんですけど、いわゆるアウェーチームとしてプレーしたことはなくて、僕も中国の洗礼を受けたことがないんですよ。どういう感じだったのか、今回行く選手にちょっと聞いてみたいですね。

昨年2月の中国戦では24得点を挙げ勝利に貢献した馬場 【(C) B.LEAGUE】

――パリ五輪では専属シェフが同行したことが話題になりました。アウェーでは食事が合わないですか。

馬場 合わないですね(笑)。でも、なんとか現地で解決策を見つけていきたいですね。食べ物が合わないからダメでしたとは、言っていられないじゃないですか。なのでアジャストしていくのみかなと思います。

――日本代表としては、今年8月にアジアカップ(サウジアラビア開催)、11月からはワールドカップ予選がスタートします。2027年のワールドカップ本戦(カタール開催)も含め、アウェーで戦っていく厳しさについては、どのように感じていますか。

馬場 2023年のワールドカップは、沖縄で試合をできていなかったらパリ五輪の出場権を獲得できたかわからなかった、と言えるような雰囲気作りをしてくださったと思っています。カタール(ワールドカップ)などに進んでいくなかで、ホームでやれない難しさみたいなことを体感すると思うので、そこで初めて自分たちの真価が問われると思います。結果を残してきたという自信と、積み上げてきたもの、自覚みたいなものを持ちながら、どこまでいけるのか。一つひとつ進んでいきたいですね。

――最後にシーズン後半戦、チャンピオンシップ争いに向けての抱負をお願いします。

馬場 現時点では勝ち星的になかなか苦戦しているというか、期待していた数の勝利は積み上げられていないですけど、チームの成長という意味ではシーズン序盤とは比べられないくらい成長できているので、ここから結果を残していくのが僕たちの仕事だと思っています。チャンピオンシップ出場は僕たちの大きな目標ですし、現時点でまだまだ手が届く位置にいるので、結果にコミットして、より集中力を高めながら、ハピネスアリーナという恵まれた環境に感謝しながら、ファンの皆さまと一緒に目標に向かって戦っていけたらなと思います。

ハピネスアリーナ1年目を歓喜で締めくくれるか 【(C) B.LEAGUE】

取材・文=バスケットボールキング/入江美紀雄・藤田皓己
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