見える景色をとにかく口に出す。活路を見出したのは“コミュニケーション”
豊田自動織機シャトルズ愛知 土居選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】
今節、リザーブでメンバー入りしたのが土居大吾だ。出場すれば、リーグワンでのファーストキャップを獲得することになる。「めちゃくちゃうれしいです。やっと来たかという気持ち」とあふれんばかりの喜びをかみ締めながら話してくれた。
流通経済大学から加入して2シーズン目。ここまでの道のりは、順風満帆ではなかった。「大学2年生のときに大きなけがをして、しばらくラグビーができない生活が続きました。そのころは新型コロナウイルスが流行していて、復帰してからもさまざまな規制がありながら、グラウンドと寮を往復するだけの日々でした」。
困難が続いた大学生活を過ごしたという土居。一時は一般企業への就職を考えていたものの、コロナ禍の影響もありうまくいかず。途方に暮れていたところ、S愛知から声が掛かった。
ただ、S愛知でも壁にぶつかることになる。土居が主戦場とするセンターというポジションは、特段高い身体能力やディフェンスを統率する力が求められる。外国籍選手が務めることが多いポジションでもあるが、178cm・93kgとラグビー選手の中では決して大柄ではない土居は、生き残る道を探した。
「加入したときにジョシュ・マタヴェシという選手がいて、彼からコミュニケーションに関するアドバイスをもらいました。『運転中に見えた景色や状況を全部言葉にしてみろ』と言われたんです。歩道を歩いている人が何人いるとか、どんな建物があるとか、とにかく見えているものを口に出す習慣をつけろという意味でした」
それに取り組んだ結果、グラウンド内のコミュニケーションに活路を見出した。「効果があったのか分からないけど」と笑ったが、それほどの高い意識で日々を過ごした末につかんだメンバー入りだった。
徳野洋一ヘッドコーチは「彼がラグビーと向き合っていない日を見たことがないくらい、一貫性をもって取り組んでいる。応援したくなるような選手」と賛辞を送り、「彼のような選手が活躍することは、われわれや日本ラグビー界にとって大きい。そういった選手を一人でも多く育てることが、S愛知のビジョンとしてある」と続ける。
S愛知の哲学を象徴する存在の一人。土居が大きく羽ばたく姿を見届けよう。
(齋藤弦)
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