聖地での答え合わせはいかに。10番ではなく15番だからこそ、仮説を立て先手を打つ

リコーブラックラムズ東京 津村選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

これまでに18連勝と不敗神話を築いてきたスピアーズえどりくフィールドでのホストゲーム。クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)の出場メンバーを目にして、新鮮な驚きを覚えたオレンジアーミー(S東京ベイのサポーター)も少なくないだろう。15番、フルバックに「岸岡智樹」の名があるではないか。

「僕が(メンバー入りが決まった際に)抱いた感覚も、おそらくみなさんと同じものだったと思います。『おお、そうなんだ』と(苦笑)」

岸岡はスタンドオフ(10番)に軸足を置く選手で、フルバックの経験は入団1年目のプレシーズンマッチ1試合のみ。「基本的にはやったことがないに等しい」という。しかし、そこはラグビー界きっての頭脳派プレーヤー。物事を客観的に見渡し、事実を冷静に受け入れている。

「今回の15番は、ピンチヒッターのような立場です。こういった局面では『1人』分の仕事をすればいいと思っています。少し欲張って『1.2人』分の仕事をしようとするとリスクが生じ、一貫性が損なわれてしまう恐れもあります。そうではなく、15番として僕に求められていることの及第点を取りにいく。そう考えることで、緊張感にも勝てる可能性が増すのではないかと思っています」

チームの最後尾に位置するフルバックと、司令塔として攻撃の組み立てを指揮するスタンドオフ。数学科出身の岸岡は、その任務の違いを次のように説く。

「スタンドオフでは、例えば『自陣からの脱出』をゴールに設定すると、逆算してゴールに至るまでのルート、つまり『解』を探していきます。フルバックは10番とは異なり、もっとも後方に位置するため、ボールにタッチするタイミングが遅れてきます。これは『ボールにタッチするまでの時間が増える』ことを意味し、そのぶん、相手を見て、分析して、先手で対応することが可能になるのではないかと考えています。『相手がこう来たから……』ではなく、逆算しつつも『相手はこう来るだろう』と“仮説”を立てて先にしかけていく。そういったことができるのではないかと思います」

岸岡の論理的思考力は、15番という新たな舞台でどんな「解」を導き出すか。聖地“えどりく”で、その答えが明かされる。

(藤本かずまさ)
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