幾多のけがを乗り越えて──。悔しさを力に変えるウイングの物語
清水建設江東ブルーシャークス 宮㟢永也選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】
仁木啓裕監督兼チームディレクターは前節を振り返り、「単に気持ちの差」と厳しい言葉を口にした。「一戦一戦に集中し、チャレンジャー精神で臨む」ことを掲げていただけに、メンタル面に要因があったことは悔しさを伴う。そんな中、今節は熱い思いを持った男が先発に名を連ねた。
「社会人になってから、ずっと悔しいシーズンですよ」。そう語るのは、大卒6年目の宮㟢永也だ。宮㟢は、新人時代なかなか出場機会を得られず、さらにその後も鎖骨や鼻の骨折など度重なるけがに苦しんできた。昨季ようやくけがなくプレーできたものの、公式戦での出場はわずか3試合。満足のいく結果ではなかった。
それでも宮㟢は「腐らずにやっているとチャンスは必ずやってくる」と考え、いつメンバーに入ってもいいように準備をしてきた。ラグビーと社業の両立という厳しい環境の中、モチベーションの源はどこにあるのだろうか。皮肉にも、ラグビー愛に気付くのは自身を長らく苦しめてきた「けがをしている」ときだという。「ラグビーをやっているときって、やっぱりキツいじゃないですか。でも、けがをして、みんながプレーしているのを蚊帳の外から見ているときに、やりたくなるんですよ。ということは、やっぱり好きってことじゃないですか」。そうした悔しい時期にこそ、宮㟢は自身の中にあるラグビーへの気持ちを確かめてきた。
仁木監督兼チームディレクターは、努力を怠らず「試合に出たい」という顔を見せる選手を見落とさないようにしているという。加えて吉廣広征ヘッドコーチ兼マーケティングリーダーは、「(RH大阪戦は)ウイングのディフェンスがカギになってくるゲーム。宮㟢はそうしたプレーができる選手だと思ったので、監督に『使いたい』と言われたときに戦術面で合っていると思った」と評価している。
宮㟢にとって、今季は特別な意味を持つ。「集大成というか、いつ辞めても悔いの残らないシーズンにしたい」。実は今年こそ、大学時代からのけがの影響も鑑みて逆算していた”区切りの年”だという。その覚悟がプレーに一層の磨きをかける。
未来は分からない。一戦一戦、目の前の試合に集中することをうたう江東BSにおいて、「試合に出たい顔」のこの男に、楕円球の女神はきっと微笑む。
(奥田明日美)
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