街にラグビーチームがある価値とは―。それを知る男の、地元を沸かす7年ぶりのトライ

豊田自動織機シャトルズ愛知 牧野内翔馬選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

ミクニワールドスタジアム北九州で行われた2025年最初の一戦のスコアは10対26。ビジターチームの豊田自動織機シャトルズ愛知が九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)を下し、新年初白星をつかみ取った。

後半30分、投入直後の牧野内翔馬はファーストプレーで勝利を確実なモノとするトライを奪う。本人によれば「7年ぶりのトライ」とのことだったが、喜びをさらに増したのは福岡出身の牧野内にとって地元でのトライだったということだ。

「東福岡高校のときにここで何度も試合をしたことがあって、家族や親戚、中学や高校でお世話になった方々が今日も観に来ていました。『何かあればいいな』とは思っていたんですが、まさかトライが取れるとは(笑)。本当にうれしかったです」

福岡出身の牧野内だからこそ、地元にラグビーチームがあることへの感謝の思いは強い。自身も宗像サニックスブルースに在籍した経験をもつが、そのチームもすでに活動休止。福岡にリーグワンのチームがなければ、こうやって自分の雄姿を地元で見せることはできない。

「九州KVさんは小さいころから応援していたチーム。対戦相手ではあるんですけど敵というような感覚はラグビーにはあまりないので、一緒にディビジョン1に上がれたら最高だなと思っています」

そんな牧野内だが、「ルリーロ福岡(以下、LR福岡)が今季からリーグワンに参入したことはうれしい」と話す。

「実は、うきは市に親戚がいて、豪雨災害に遭ったことがあるんです。そのとき、自分もオフシーズンだったので(片付けの)手伝いに行っていたんですけど、倉庫が泥や水に浸かってどうすることもできないような状況で……。そのときにLR福岡に在籍していた元サニックスのメンバーに声を掛けたら『じゃあ、チームみんなで行きますよ』と20人くらいで駆け付けてくれたんです。2時間くらいで片付けることができたんですけど、自分一人だったらどれくらいかかったか分からなかった。『お金はもちろんいらないので試合を観に来てくれたらうれしいです』とだけウチの親戚に伝えていました。こんなチームはほかにないと思いますし、本当に感謝しています」

いま、牧野内は地元にリーグワンのチームがあることの価値を誰よりも感じている選手かもしれない。そんな選手が地元で見せた活躍はこの試合を観に訪れた子どもたちやラグビーファンに地元でリーグワンが見られる喜びを与えられたはずだ。

(杉山文宣)
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