【オリックス】球団オフィシャルカメラマンが語る! 2024年シーズンベストショット
【オリックス・バファローズ】
写真:自身初のサヨナラホームランを放ち本塁上で昇天ポーズを決める杉本選手(8月23日・千葉ロッテマリーンズ戦) 【オリックス・バファローズ】
◆即座にピントを合わせる
0-0の九回2アウトの場面で打席に立った杉本選手。打球がライトスタンドに吸い込まれると同時に、京セラドーム大阪は大歓声に包まれた。場内の緊張が一気にほどけてベンチも喜び一色に染まる中、松村カメラマンは最も気を張る瞬間を迎える。
「ヒーローがチームメイトからの祝福を受ける歓喜のシーンをなんとしても捉えなければなりません。杉本選手が本塁に帰ってきてからが勝負。ダイヤモンドを一周している間『失敗したらプロじゃないぞ』と思いながら集中力を高めました」。
ホームベースを踏んだ途端、想定通りたくさんの選手に駆け寄られる杉本選手。勢いよく繰り出された本塁上での初めての昇天ポーズ。その一瞬。ファインダー越しの松村カメラマンの視線は、水しぶきや他の選手たちを潜り抜け、ヒーローの顔1点を捉えた。即座にピントを合わせることに成功した。
「使い込んだカメラと自分の腕を信頼して挑むのみです。慎重且つ瞬時に状況を判断し『見えた』と思った瞬間、シャッターを切りました。こういった貴重なシーンを撮れるかどうかが、カメラマンとして腕の見せ所だと思っています」。カメラと一心同体となって磨いた技術がこの1枚に凝縮されている。
写真:オープン戦で力投する才木投手(3月9日・読売ジャイアンツ戦) 【オリックス・バファローズ】
◆脱げ落ちるキャップ
松村カメラマンは言う。「きちんとキャップを被っているワインドアップなどのシーンの方が、球団写真として使いやすいだろうとは思いました」。それでも、と続ける。「あえてキャップが脱げるシーンを狙いました」
松村カメラマンは語る。「僕は選手の『個性』を写真1枚でお見せしたい。その個性は細かい表情や動きに現れます」。投げ終わった後にも鋭い眼光でボールを追う才木投手。勢い余ってキャップが脱げ落ちるのも、松村カメラマンにとっては「才木投手らしい気迫の表れ」だった。
レンズ越しに選手一人一人を見守っている松村カメラマンならではの視点が、この1枚に生かされている。
写真:頓宮選手のサヨナラ犠飛で勝利し、喜びを爆発させる古田島投手(7月10日・福岡ソフトバンクホークス戦) 【オリックス・バファローズ】
写真:勝利の喜びを分かち合う頓宮選手と吉田投手(7月10日・福岡ソフトバンクホークス戦) 【オリックス・バファローズ】
◆両目を駆使するカメラマン
両目を駆使して撮影したのが、7月10日福岡ソフトバンクホークス戦、頓宮裕真選手によるサヨナラ犠飛で勝利した日のこの2枚だ。
三塁側カメラマン席にいた松村カメラマン。九回無死満塁から頓宮選手が放ったライト方向へのフライを見届けた後、三塁ランナーの森友哉選手がタッチアップし本塁へとヘッドスライディングする様子を撮影した。すぐにヒーローの頓宮選手にレンズを向けようとしたが、本塁の先で血気盛んにベンチを飛び出す古田島成龍投手が目に飛び込んできた。「これは面白い動きをしそうだ」
ただ、ヒーローの頓宮選手を狙わないわけにはいかない。カメラを構えたまま、左目で一塁ベース手前にいた頓宮選手を確認。「一番盛り上がるシーンまで僅かに時間がある」。大はしゃぎで水を撒く古田島投手をそのまま右目で捉え、シャッターを切った。
直後に頓宮選手を追い、歓喜の輪の撮影に集中。勝利投手となった吉田輝星投手と頓宮選手が向き合った、試合を象徴する1枚が撮影できた。
「ヒーローを最優先させるため、他を捨てるという選択肢ももちろんあります。ただ、球団オフィシャルカメラマンとしては、なるべく多くの選手の良いシーンを残したい。両立できて良かったです」。松村カメラマンは顔をほころばせて振り返った。
◆感動的な瞬間を皆さんに
来年も松村カメラマンのベストショットにご期待いただきたい。(西田光)
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