【オリックス】バファローズジュニア率いる塩崎真監督 「選手に考えさせる指導」に込められた思い

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【オリックス・バファローズ】

 「思い切って振ってみろー!」「怖がらずに投げたらいいよ!」「ランナーに注意してー!」。冷たい風が吹くグラウンドに、熱い声が響く。メガホンを持つのはバファローズジュニアの監督・塩崎真。「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP 2024 ~第20回記念大会~」(明治神宮野球場・ベルーナドーム)に向けて、近畿圏内287チームから選ばれた16人の精鋭たちを指揮している。練習試合も本番さながらの緊張感で挑む。「よくやった!ナイススイング!」。得点すると大きくガッツポーズ。ベンチに帰ってきた選手をハイタッチで迎える。選手たちと共に笑い、共に悔しがりながら、一人一人の成長を促している。

写真:笑顔で指導にあたる塩崎 【オリックス・バファローズ】

◆ヒントを与える存在

 塩崎は1997年、オリックス・ブルーウェーブに入団。ショートを中心に内野はどこでも守れるユーティリティプレイヤーとして活躍。14年間オリックス一筋で通算1232試合に出場した。現役引退後の2011年から16年までの6年間は内野守備・走塁コーチなどを歴任。現在は球団コミュニティグループに所属し、小学生向け野球教室や少年野球大会の運営などを担っている。今シーズン、4年ぶりにバファローズジュニアの監督を務めることになった。

 タイガースジュニアとの練習試合のベンチ。塩崎は選手たちに度々質問を投げかける。「どうだった?自分のピッチングは通用しそうだった?」。ミスの後には「あの時、どんなことを考えてた?今ならどう動くべきだったと思う?」。選手たちは真剣な表情で頷きながら自分の言葉で話し始める。

 塩崎は言う。「ああしろこうしろと手取り足取り教えるのではなく、あくまでヒントを与える存在でありたいんです。大事なのは選手たち自身で考えること。そうすることで、答えに責任を持てるようになってほしいんです」。その考えは自身の経験に基づいている。

写真:練習試合中に選手を集めて声をかける塩崎 【オリックス・バファローズ】

◆一度諦めたプロの世界へ

 塩崎には、東京の大学を半年で自主退学し、地元の熊本でアルバイトと草野球をしていた時期があった。「大学を辞めたことについて周囲からは『なんで?』とか『もったいない』とか言われることもありました。プロ入りも一度ここで諦めましたしね。でも、毎日充実していました。後悔はなかったです」

 だが、そんな塩崎の思いとは裏腹に、塩崎の状況を知った複数の社会人チームが声をかけてきた。このチャンスを前に、塩崎の気持ちに火が点いた。「やるからには本気だ」。93年、覚悟を決めて新日鐵広畑に入社した。監督たちにはこう宣言した。「3年で必ずプロに行きます。それができなければクビにしてください」

 当時の新日鐵広畑は、のちにプロ野球界で活躍する的山哲也氏、薮田安彦氏らが在籍する強豪チーム。ハイレベルな環境は塩崎の本気度をさらに高くした。
 「第二の野球人生の始まりでした。これ以上ないぐらいに真剣に野球に取り組みました」。意識したのは「見て盗むこと」。トップ選手のプレーをとことん観察し、優れているポイントを探した。自身のプレースタイルに落とし込む際には、試行錯誤と工夫を重ねた。技術を磨くため、考え抜いた毎日だった。守備、走塁、打撃、全てにおいて数段レベルアップさせて臨んだ3年後のドラフト。オリックス・ブルーウェーブから3巡目指名を受けた。

写真:練習試合中マウンドに行って投手をねぎらう塩崎 【オリックス・バファローズ】

◆本気で頑張るために

 塩崎は語る。「これから先、子どもたちにも『本気で頑張りたい、どうしても結果を出したい』という瞬間がきっと訪れると思うんです。その時に、自信を持って頑張りきれるかどうか。それは、自分なりに一生懸命考えて考えて、努力してきたことの積み重ねに裏付けられると思っています」

 その塩崎の思いを、選手たちも自然とくみ取っている。主将の髙木羅王(らき)選手は「監督は僕たち全員のことをいつも見てくれているなと思います。周りを見て声をかけることの大切さや皆を引っ張っていく時の気持ちを、監督の言葉と動きを見て学んでいます」と話す。

写真:グラウンドで笑顔を見せる塩崎 【オリックス・バファローズ】

◆されど3カ月

 バファローズジュニアは3カ月間の短いチームだが、塩崎はこう話す。「されど3カ月。小学生として、たくさんのことを吸収できる時期です。選手たちには悔いの残らないように、今できる精いっぱいのことをやってほしい。それができれば、終わった後に『いい大会だったね。お疲れ様』って、お互いに心からねぎらいあえると思います」

 大会は12月26日開幕。大舞台が間近に迫り、選手たちの練習への集中力も一層高まる。「さぁ、行くぞ!」「はい!」。指揮官の威勢の良い声と、選手たちの明るい声がグラウンドに響いた。(西田光)
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