【Baseball5を学ぼう】Hi5 Tokyo 吉永健太朗 高校野球の頂点に立った男が「野球と同じ熱量で」臨む競技の魅力とは?

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チーム・協会

【©白石怜平】

東京都を拠点に活動している「Hi5 Tokyo」。

チームを結成したのは、かつて日大三高の投手として夏の甲子園で優勝投手となった吉永健太朗氏である。

吉永氏はチームを運営しながら、自身もBaseball5の選手としてプレーしている。

野球で一度は頂点を極めた男がいかにしてBaseball5と出会い、今はどう向き合っているのか。吉永氏にこれまでのお話を伺った。


(写真 / 文:白石怜平 ※以降敬称略)

Baseball5との出会いは甲子園優勝メンバーの活躍から

その名を聞くと野球ファンならご存じの方も多いのではないか。

日大三高時代にはシンカーを操り、3年時に出場した11年夏の甲子園で同校を優勝に導いた高校野球史に残る右腕である。

吉永がBaseball5と出会ったのは、共に優勝の喜びを分かち合った同級生を見てだった。

「高校の同級生の宮之原健(現:Spirit Bonds)が、独立リーグを引退してからBaseball5を始めたのですが、以降も彼の活躍を見ていました。

僕もかねてからやってみたいと思っていたので、去年の夏に連絡して当時彼が在籍していた5STARsに体験へ行かせてもらったのが最初です」

野球の世界で結果を残してきた選手たちが挑戦しても”難しい”と感じるのがBaseball5の奥深さ。高校野球で頂点を極めた吉永も例に違わなかった。

「最初やってみて、守備は野球と変わらない印象だったのですが、バッティングがとても難しくて。打球がユースの子たちに簡単に捕られてしまうくらいだったので、”こんなに難しいんだ”というのが第一印象でした」

最初は打撃で難しさを感じたという 【©白石怜平】

難しいと感じながらも、競技の魅力はその1回目ですぐに感じられたという。挑戦するほど”やってみたい”気持ちが強まっていった。

「理由としては、僕は元々野球のみならずスポーツ教育に興味があって、スポーツを始める段階で子どもたちに支援ができないかと考えていました。

Baseball5は自分が長くやってきた野球をベースにしたものに加えて、道具を必要としないことや男女一緒にできる点が魅力あるなと思い、やってみたいと思いました。後は自分の子どもたちと一緒にできるスポーツというのも大きかったです」

加えて競技を始めた大きな理由として、自身が久々に受けた”感動”があった。

「今は肩が痛くて全力でボールは投げられないのですが、Baseball5をやった時に全力で打っても肩が痛くなかったんですよ。
実は始めた理由がそこにもあって、とにかく痛みを感じずに全力でできるのがすごく嬉しかったんです」

全力でプレーできることが何よりの喜びだった 【©白石怜平】

ハイタッチから閃いた「Hi5 tokyo」

ここで吉永は早くも、拠点を置く東京でチーム結成を決めた。

「何かやるなら自分でやりたいなと思うタイプでしたので、立ち上げを決めました。なので僕の2回目のBaseball5は新チームでした(笑)。最初は一緒に野球をやっていた仲間に声をかけて、3人からスタートしました」

チーム名である「Hi5 tokyo」も吉永自身が名付けた。その由来も訊いてみた。

「自分はBaseball5を明るく楽しくやりたいと考えています。そう思った時にパッと思いついたのが、”high five”。嬉しいときなどにハイタッチする意味が英語であるので、挨拶から明るくプレーしたい想いを込めています」

練習に参加している「Hi5 Tokyo」のメンバー 【©白石怜平】

チーム発足後は、大学や社会人時代のチームメイトと共に練習に励んだ。天候に左右されないBaseball5の利点を活かすため、区の体育館で行っている。

現在は選手も徐々に集まっていき、定期練習には15人〜20人近く来るようになった。力もつき、2月の第1回全日本選手権ではグループ1位で本戦に出場。

当時は2ヶ月ほど前から朝6時に集まり、練習を重ねていたのだという。

6月からは新たにスタートしたリーグ戦「B5.LEAGUE KANTO 2024」にも参加し、現在は来年1月に行われる第2回日本選手権に向けて予選を控えている。

今後のチームの伸びしろについて吉永はこう語った。

「何より経験値です。5STARsやジャンク5は毎週練習をやっていて、素手で捕ることに慣れていると思います。なので守備力そして連携もレベルの差を感じているので、ここをどう埋めていくのかを考えています。

攻撃ではただ打つだけではなく守備の間を狙うであったり、弱い打球で塁に出塁するテクニックも必要と感じています。僕がマネジメントを強化していくことで、個々のレベルも上がっていくので、練習の密度を濃くするのがポイントです」

練習でも指揮を執りながらメンバーをサポートしている 【©白石怜平】

3月の代表選考会で見えた課題

一方、プレイヤーとしても研鑽を重ねている吉永。当初は難しいと感じていた打撃についても練習を重ねることでポイントを掴んでいった。

「どこの高さで打つかが大事だと考えています。角度的には低い打点で打ちに行った方が相手は守りにくいと思うのですが、僕はしっくり来なかった。

野球で投手だったのもあって、投げるフォームのイメージで打ってみたら打ちやすかったので、これだと感じましたね。

自分の打ちやすいポイントで打つことと、後は相手投手ではなく自分主導で打つため、いかにボールをずらさないかが重要だと思います。(打つ時に上げる)トスが高いほど目線がブレやすくなって打点もズレてしまいますので」

自分なりの打ちやすいフォームやポイントを見つけた 【©白石怜平】

また、野球との違いについても続けて質問をした。ここでは守備と走塁についての違いを挙げた。

「守備でグラブがないだけで感覚が全然違います。打球が見えているのに捕れないのがもどかしいです(笑)。あと捕手がいないのが大きなポイントだと感じています。

なぜかというとホームカバーを忘れてしまうんです。そこまで頭が回らず点を許してしまったことがあるので、ここの意識付けを徹底しないと選手権で戦えないと感じています」

Baseball5にも真剣に向き合った吉永は技術を向上させ、今年3月には「第2回WBSC-ASIA Baseball5アジアカップ」の日本代表選考会に召集された。

「あの時は『絶対に代表枠を取りに行くぞ』という気持ちでした」と並々ならぬ想いで臨んだ。

しかし、ここでは改めてBaseball5の難しさを味わう機会となった。

「選考会ではポジションを回していたのですが、僕はチームでショートしかやっていませんでした。なのでサードに入ってみると、セカンドへの送球が難しく感じたり、ミッドフィルダーでの距離感が掴めなかった。

あとは後々聞いた話ですが、打つ方向がバレてしまっていたのがマイナスポイントだったそうです」

異なるポジションでの適応も課題と語った 【©白石怜平】

残念ながら代表入りは叶わなかった。今は技術以外で明確な課題があると語り、そこと向き合っている。

「今はトレーニングを満足にできていないので、野球をやっていた時のようなフィジカルがないんです。日本代表に入りたいと思っているので、どこかでアクセルを踏んで自分の体を見つめ直さないとトップには行けないと感じています」

Baseball5でも頂点を目指す

10月に行われた「第2回 WBSC Baseball5ワールドカップ 2024」で準優勝に輝いた日本。その代表選手や所属チームなどが各地で競技の普及活動を行っている。

吉永も積極的に活動を推し進めている一人。今はサラリーマンとして働きながら野球指導も行っており、その一環でBaseball5も織り交ぜて展開している。

「少年野球チームから指導依頼をいただいた際には、午前にBaseball5をやって午後に野球というように、双方連携することで普及活動を進めています。あとは小学校や自治体と連携して、Baseball5単体での活動も取り入れたいと考えていますね」

常に「僕だからこそできることを考えている」と語り、普及においても工夫を凝らしている吉永。活動を行う中で、Baseball5を広めるにおける課題感があるかと訊いてみた。

「今は実際にやらないと面白さが伝わらないところでしょうか。SNSを通じて発信してもリアクションがまだ薄い。

でも参加してやってみると、”めちゃくちゃ面白いじゃん!”って感じてもらえるんですね。なので、そのギャップをどう埋めていくかが一番の課題だと感じています」

今は「野球とBaseball5は同じ熱量でやっています」と語るほど、それぞれに”全力投球”している。自らを奮い立たせている要因について伺った。

「さまざまな側面で携われるからです。競技者としてやるだけではなくて、普及活動もできれば子どもたちへの教育もできる。多くの角度から成長ができるので、モチベーションとかではなく当たり前として両方同じ熱量でやってます」

競技者として再びグラウンドに立ち、またチームづくりも並行して行っている。今後の目標を力強く語った。

「チームとしては日本一を獲りに行きたいです。日本選手権の予選に向けて、チーム作りもやらないといけないです。
また、個人としてはフィジカル強化。日本代表に入るためにスキルアップは続けていきます」

【©白石怜平】

野球で頂点に立った男はBaseball5でも頂点に導くべく、ストイックかつ明るく鍛錬を重ねている。
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著者プロフィール

「Homebase」は、全日本野球協会(BFJ)唯一の公認メディアとして、アマチュア野球に携わる選手・指導者・審判員に焦点を当て、スポーツ科学や野球科学の最新トレンド、進化し続けるスポーツテックの動向、導入事例などを包括的に網羅。独自の取材を通じて各領域で活躍するトップランナーや知識豊富な専門家の声をお届けし、「野球界のアップデート」をタイムリーに提供していきます。さらに、未来の野球を形成する情報発信基地として、野球コミュニティに最新の知見と洞察を提供していきます。

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