【パリパラリンピック取材後記】ベテランフォトグラファーの沈んだ気持ちを吹き飛ばした試合とは
【photo by Takamitsu Mifune】
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その日に限って
この日は、柔道から撮影スタート。滞在先のホテルから、会場のシャン・ド・マルス・アリーナに向かって地下鉄で移動します。ちょうど朝の通勤ラッシュの時間帯で、電車は満員でした。
これまでの経験から、ヨーロッパではフランス、イタリア、イギリスでスリや盗難が多いことはわかっていました。約1ヵ月前、パリオリンピックも撮影に来ていて、ある通信社の人がスマートフォンをスられた体験談も聞いていました。だからこそ、スリ対策は万全にしていたつもりです。この日は雨が降っていたため右手に傘、左手に機材の入ったカメラバックを持ち、スマートフォンはズボンのジッパーつきポケットに入れました。さらに周りの人をチェックしながら、いざ、満員電車へ乗り込みます。
でも、ジッパーは閉めなければ意味がありません……。
後から振り返ると、何となくポケットが涼しくなったような瞬間があったのです。でも、そのときは、雨の水滴がポケットに入ったのかな、くらいにしか思いませんでした。
しばらくして会場に着き、入り口にある手荷物検査場でスマートフォンを出そうとポケットに手を入れると……。
「あれ? ない。どこにもない……もしかしてあのとき!」
そこで初めて盗られたことに気づきました。
大会後半、日本勢はメダルラッシュ。スマートフォンを失ったまま移動したシャン・ド・マルス・アリーナでもメダルが生まれた(写真は柔道で銀メダルの半谷静香) 【photo by Takamitsu Mifune】
海外では対策が必要
警察署の端末で入力したスリ被害の書類。メールで控えが送られてくるシステムだった 【photo by Takamitsu Mifune】
パリから電車で約2時間のシャトー・ルーでもいろいろあったが、現地の人に助けられた。悪い人ばかりではない 【photo by Takamitsu Mifune】
笑顔が救いに
でも、そんな折れた心を救ってくれた試合がありました。車いすテニス小田凱人選手の男子シングルス決勝です。
そしてフォトグラファーはスタッド・ローラン・ギャロスに向かった 【photo by TEAM A】
いやー、小田選手の戦いぶりは、それまでの私の不運を忘れさせてくれるほどすごかった。最終日まで頑張れたのは、小田選手のおかげです!
車いすテニス・小田の戦いぶりは見るものを魅了した 【photo by Takamitsu Mifune】
1971年、北海道生まれ。東京写真専門学校(現:東京ビジュアルアーツ)卒業後、スポーツフォトエージェンシーであるフォート・キシモトに入社し、FIFAワールドカップ、世界陸上など国内外のスポーツシーンを撮影。オリンピックは1994年リレハンメルから2024年のパリ大会まで16大会を撮影している。パラリンピックは1996年アトランタ大会などを撮影。今大会で印象に残ったパラアスリートは、笑顔でプレーしていたボッチャの遠藤裕美選手。
text by TEAM A
photo by Takamitsu Mifune
※本記事はパラサポWEBに2024年10月に掲載されたものです。
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