早大軟式庭球部男子 「全部が報われた」2019年以来の団体日本一に輝く!/沖縄インカレ大学対抗

チーム・協会
全日本学生大学対抗選手権 9月14~15日 沖縄県総合運動公園テニスコートほか
【早稲田スポーツ新聞会】記事・写真 佐藤結

 ついに日本一のチームを決める団体戦の日がやってきた。インカレでは、3 ペアの殲滅戦トーナメント方式がとられ、試合は7ゲームマッチで行われる。壁にぶつかりながらも、順当に勝ち進んだ早大は、決勝で宿敵の法大と対戦。圧倒的な強さと勢いで、ストレートで快勝し、2019年以来の、5年ぶりとなる日本一に。全員テニスで『奪冠』を完遂した。

試合前の円陣 【早稲田スポーツ新聞会】

 大学対抗1日目はベスト8決めまで行われた。初戦となる2回戦の相手は白鴎大。1本目の浅見竣一郎(スポ1=宮城・東北)・安達宣(スポ1=奈良・高田商)組は、安達のネットプレーが冴え渡り、ストレートで勝利を収める。続く矢野颯人主将(社4=奈良・高田商)・端山羅行(社4=石川・能登)組は圧巻のテニスを披露した。矢野はこの試合で打ったサービス5本のうち3本をエースにし、端山はレシーブを武器に連続プレーで得点を量産。相手に得点を2点しか与えず、大勝した。吉田樹(法4=東京・早実)・松本翔太(スポ3=香川・尽誠学園)組もいい流れを渡さず、4-0で勝利。3-0で早大の勝利となった。3回戦では関西学生リーグ2部に属する大阪教育大と対戦した。2回戦と同じオーダーの早大は、終始余裕を見せながら立て続けにストレートで完全勝利。「サーブレシーブを今年は課題としてやってきた」という松本は最終4ゲーム目にサービスエースを2本とも決めるなど、練習の成果を確実に発揮した。明日に進むことのできるベスト8入りを左右する4回戦。東日本3位の早大に対して、西日本3位の同大との対戦となった。先陣を切る浅見・安達組は序盤、攻めながらもシングルスベスト8のルーキー・清水の攻撃に苦戦し、シーソーゲームに。2-2からは二人のプレーがかみ合い、そのまま2ゲームを連取。4-2で勝利した。矢野・端山組はダブルフォルトが響き、1ゲーム目を落とすも、その後は主導権を握り続け、4-1で圧勝。しかし、吉田・松本組は厳しい第3戦に。デュースの末1ゲーム目を奪われると、「関東とはまた違う、西の大学の雰囲気にのまれ」(吉田)、なかなか流れをつかめず。豪雨による一時中断も、集中力や体力の面で凶と出てしまい、そのままストレートで大敗を喫した。松本は「気持ちが少し浮いており、集中しきれなかった」と振り返った。今度こそ試合を締めるべく、浅見・安達組が二次戦に挑んだ。序盤、浅見は沼尾が一歩目を出せないほどのコースを突いたシュートボールを連発。安達も、浮いたボールを逃さず、スマッシュを決めきる。2ゲームを先取したが、3ゲーム目ではレシーブの連続ミスで献上。しかし、相手の反撃をしっかりコントロールして2ゲームを取り返し、4-1で勝利した。

試合中の矢野・端山組 【早稲田スポーツ新聞会】

 インカレ最終日となる大学対抗2日目。準々決勝の相手は同大と同じく今季西日本3位の関学大となった。浅見・安達組が積極的に出てくる前衛への対応を見せ、4-2で白星を挙げると、吉田・松本組に代わり入ったのは髙田淳貴(政経2=東京・早実)・石森崇大(スポ4=福井・敦賀)組。石森は果敢にラリーに絡み、髙田もシングルベスト8の高木と互角の打ち合いを見せるも、要所を決め切れず、1-4で敗戦した。3本目は早大の大将、矢野・端山組。ダブルスベスト64の岩﨑・近藤組に思わぬ苦戦を強いられた。序盤からデュースが長く続く攻防が展開され、ゲームカウント2-2に。1ゲームを先攻したものの粘られ、ファイナルゲームとなった。矢野はレシーブが決まると、逆ロブを上げ1点を追加。端山のボレーやスマッシュも見事に決まり、一気に大量リードを奪う。しかし、止まらない相手の反撃にミスが続き、気づけば6-6に。心臓がキュッとなるようなハラハラとする決戦となったが、矢野のネットインからそのフォローを端山が仕留め、辛勝した。大将を倒すべく臨んだ二次戦では、浅見・安達組もファイナルゲームに。3-3から安達のスマッシュを皮切りに3点を追加し、ゲームポイントを奪う。少し緩み2点を与えたが、デュースに持ち込ませず、7-5で締めた。それぞれの役割を全うし、まずは関西の壁を打ち破った。

試合中の髙田・石森組 【早稲田スポーツ新聞会】

 「昨年ここで悔しい思いをしてから全員で頑張ってきました。春リーグで負けた中央大学に思い切って、向かっていく姿勢で、頑張ってぶっ潰しましょう!」。山口皓太郎主務(政経4=東京・早大学院)のその声で中大との準決勝が始まった。1本目は髙田・石森組。終盤で、髙田のトップ打ちから石森がボレーで叩くコンビネーションを見せるも、序盤に自分たちのプレーができず、幡谷・両角組にストレート負けを許す。2本目の矢野・端山組は濵田・髙田組と大将対決に。3-2からファイナルに持ち込まれた。絶対に負けられないこの1ゲーム。二人は6ゲーム目から気持ちを切り替え、2点を先攻する。しかし、実力通りの気迫あふれる相手のプレーに4点連続大量失点。だが、優勝を見据える戦士は焦らず、虎視眈々と相手の様子をうかがう。端山のスマッシュをきっかけに、矢野もストレートで大胆に勝負し、今度は早大が4点を連続で返す。しかし、2点を許し、明暗はデュースに託された。運命のデュース。強い気持ちでアドバンテージをとるも、なかなか決められず。そろそろ締めたいアゲイン三回目。アドバンテージを奪うと、端山のレシーブが回ってきた。端山がミドルにボールを打つと、矢野は縦にロブを上げ、ストレート展開をつくる。矢野のボールが髙田につかまるも、端山が確実にフォロー。クロス展開に戻り、濵田がボールを矢野に返したそのとき、髙田の足がミドルに傾く。矢野はそのわずか一瞬を見逃さず、ストレートを打ち抜いた。4-3で勝利し、大将の役割を果たした。3本目の浅見・安達組はダブルスの準々決勝で破った武市・中尾組のリベンジを4-2で阻止。二次戦でも、矢野・端山組が4-1で髙田・石森組の敵を討ち、勝利。昨年越えられなかった準決勝の壁、今春越えられなかった中大という難関を、大将筆頭に、突破してみせた。

決勝でのエール交換 【早稲田スポーツ新聞会】

 決勝戦。相手は宿敵の法大。下級生を中心に構成されながらも、実力は折り紙つきのメンバーがそろう。早大のオーダーは、1番・「死ぬ気で頑張る」と気合を入れた吉田・松本組、2番・「俺に任せろ、俺についてこい」と叫んだ矢野・端山組、3番・「絶対取る」と誓った浅見・安達組。吉田のサーブからゲームが幕を開けた。1ゲーム目から後衛がラリーを長く続ける中、両前衛が積極的に絡みに行く。松本は「常に強気に大胆なポジション取りをしよう」と考えていたという。先攻はされたものの、二人の表情は変わらない。ここから今シーズン苦しんできた二人の、全てを懸けたショータイムが始まった。吉田がレシーブで前衛を打ち抜くショットを決めると、松本が誰もいないコースにボレーの一撃。吉田の磨き続けてきたバックハンドと松本の体を大きく使ったスマッシュで得点を重ね、追いつきを見せる。波に乗った二人はそのまま4-2で3ゲーム目、4ゲーム目を連取。しかし、3-1で迎えた5ゲーム目。ネットと前衛の広岡にかけ、ポイントは0-3に。それでも、いつも向かって来られてきた二人は向かって行った。大事な1本目、ミドルを突き抜ける松本のスマッシュで一気に流れを手繰り寄せる。さらに吉田のバックハンド、松本のバックボレーでポイントを加え、デュースに持ち込んだ。相手のボレーがボール1個分のアウトになり、早大のアドバンテージ。松本のファーストサーブが逆クロスに返り、ストレート展開に。相手の返球を吉田がつなぐ。そして、相手の次の1本。松本がストレートに飛び出し、ボレーを決め切った。吉田はこの瞬間を「普段だったら勝負しないところも必死に勝負しにいってくれて、最後も行き切ってくれたので本当に嬉しかった」と振り返る。この1年、4年生の先輩だから勝たせてあげたい、「勝たなければいけない」と空回りした松本。自分が最後の年だから、「固くなり、視野が狭くなった」吉田。メンタルに苦しみ、勝てる試合も勝てなかった。それでも、インカレという学生最高峰の舞台で、決勝という頂に最も近い場所で、4-2で中盤の2ゲームを締め切ったこと。1点ずつ点を重ね0-3から挽回して勝ったこと。苦しみから目をそらさず、1歩ずつ前に進んできた二人だからこそ生まれた、まさに逆転劇だった。

試合中の吉田・松本組 【早稲田スポーツ新聞会】

 矢野・端山組が当たったのは二人の三冠の夢を阻んだ橋場・菊山組。ダブルスの悔しさをぶつけるべく、序盤から冷静にコートをカバーし、怒涛の4-1で3ゲームを奪う。そしてポイントカウント3-2。矢野のファーストサーブへの菊山のレシーブがサイドラインを割り、わずか13分にして、大将が優勝に王手をかけた。そのバトンを受けたのは「僕が優勝を決めるつもりで」コートに立ったという浅見・安達組。尽誠学園出身のルーキー・野本の頭の切れるネットプレーに1ゲーム目を落としたものの、2ゲーム目をデュースで粘り切り、追いつく。ゾーンに入った二人はそのまま2ゲームを連取し、ゲームカウント3-1に。あとがない法大も粘りを見せ、4ゲーム目は攻防が続く。デュースとなるも、安達がボレーを決め、アドバンテージを奪う。そして、安達が放ったレシーブがミドルを抜け、早大の日本一を告げた。

試合中の浅見・安達組 【早稲田スポーツ新聞会】

 見事に日本一に輝き、『奪冠』を達成した早大。しかし、全国の頂点に立つまで、決して平坦な道ではなかった。「ここまでの大会で団体戦だけ唯一優勝できてなくて」(矢野)という言葉の通り、関東学生春季リーグ戦では4位、東日本大学対抗では3位と、準優勝さえも逃してきた。しかし、インカレ優勝を目指して練習してきた結果が、4年生にとっては、4年間、いや10数年の努力が、最高の舞台で結実した。矢野の「全部報われたような気持ちで、最高の気分でした」という言葉にすべてが詰まっている。吉田が言うように、「サボろうと思えばいくらでもサボれる環境」だったかもしれない。それでも、諦めずに、純粋にテニスを楽しんで4年間を駆け抜けた。石森崇大、小林裕仁郎(スポ4=福井・敦賀)、永原遥太(スポ4=島根・松江南)、三田村優音(スポ4=北海道科学大高)、矢野颯人、山岸龍平(法4=東京・早大学院)、山口皓太郎、吉岡藍(社4=群馬・健大高崎)、吉田樹。自らを厳しい環境に置き、全力でやり切った4年生10人を心の底からたたえたい。そして、それぞれの進む新たな道での活躍を祈るばかりだ。

4年生と小野寺剛監督(平1教卒=東京・巣鴨商) 【早稲田スポーツ新聞会】

 質にも量にも富んだ4年生が抜け、まもなく新チームが発足する。新主将の松本は大会後、「2連覇」を堂々と口にした。苦しくて厳しい練習を乗り越えてきた彼らには、もっと険しい茨の道がこの先きっと待っているだろう。ただ、2連覇を狙うことができるのも、日本でたった1チームだ。奥山航平(スポ3=東京・早大学院)、小幡泰雅(スポ3=山口・宇部)、洲﨑一眞(創理3=新潟・長岡)、渡健博(スポ3=山口・徳山)、松本翔太。この5人が中心となって、新たなチームを築き上げていく。純白のキャンバスに彼らはどのような色を描いていくのだろうか。臙脂の誇りと伝統を胸に、『早稲田の栄光』が再び響く未来を見据えて、スタートラインに立つ。

日本一の笑顔を見せる選手たち 【早稲田スポーツ新聞会】

結果

▽2回戦

対白鴎大 ③-0

浅見・安達④-0海老原・大森
矢野・端山④-0安納・石戸
吉田・松本④-0相馬・玉木

▽3回戦

対大阪教育大 ③-0

浅見・安達④-0河村・酒井
矢野・端山④-0伊藤・網本
吉田・松本④-0杉本・橋本

▽4回戦

対同志社大 ③-1

一次戦

浅見・安達④-2清水・長根
矢野・端山④-1塚本・仲村
吉田・松本0-④沼尾・大原

二次戦

浅見・安達④-1沼尾・大原

▽準々決勝

対関学大 ③-1

一次戦

浅見・安達④-2坂本・北原
髙田・石森1-④高木・田中
矢野・端山④-3岩﨑・近藤

二次戦

浅見・安達④-3高木・田中

▽準決勝

対中大 ③-1

一次戦

髙田・石森0-④幡谷・両角
矢野・端山④-3濵田・髙田
浅見・安達④-2武市・中尾

二次戦

矢野・端山④-1幡谷・両角

▽決勝

対法大 ③-0

吉田・松本④-1田中・広岡
矢野・端山④-0橋場・菊山
浅見・安達④-1森川・野本
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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