侍ジャパンU-15 W杯初制覇!「合宿の時から世界一になることを掲げてきた」井端弘和監督らが会見で語った熱戦のエピソード

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【©白石怜平】

8月28日、「第6回 WBSC U-15 ワールドカップ」で優勝した侍ジャパンU-15が、この日開催地のコロンビアから帰国した。

千葉県成田市内のホテルにて記者会見を行い、井端弘和監督・激戦を戦い抜いた選手たちが大会での心境などを語った。


(写真 / 文:白石怜平)

”唯一の敗戦”がターニングポイントに

井端監督率いる侍ジャパンU-15は10日間(16日〜25日)で9試合を戦い、スーパーラウンド初戦のチャイニーズ・タイペイ戦以外は全て勝利し制覇。U-15としての優勝は初の快挙となった。

日本へと渡った優勝トロフィー 【©白石怜平】

凱旋帰国となった侍たちはリラックスした表情で会見場へと入った。

会見がスタートし、まず井端監督は「合宿の時から選手たちの前で世界一になることを掲げてやってきて、初優勝して帰って来れたので本当に良かったです」と安堵の表情で心境を述べた。

率直な気持ちを明かした井端監督 【©白石怜平】

戦った9試合のうち最もプレッシャーのあった試合について問われると、
「私自身はU-15は初めてで、これまで3大会(過去2年はU-12)で指揮を執らせてもらっていますがいずれも初戦です」と即答。

この初戦とは、ドミニカ共和国との一戦。初回に8点を奪い試合を優位に進めると、反撃に這いながらも12−9で逃げ切った試合だった。

実は初戦で勝ったのは井端監督自身としては初めてでもあった。

「初戦を勝たないと、その後の試合が後手後手になるのはわかっていました。苦しい試合でしたけれども、そこで勝利したのは大きかったと思います」

初戦が最もプレッシャーのかかる試合だったという 【©白石怜平】

また、ターニングポイントとなった試合として井端監督は「スーパーラウンド初戦のチャイニーズ・タイペイ戦です」と挙げた。

オープニングラウンド5戦全勝で迎えたこの試合、日本は最終回2死まで4−1と3点リードをしていた。しかし、あと一人のところから猛反撃に遭い5点を奪われ大会唯一の敗戦を喫していた。

試合後に指揮官は選手の心境も案じ、一人ひとりと会話したという。

「高校、さらにその先と野球を続ける子たちなので、甲子園への出場がかかった予選や甲子園での決勝などでまたああいった試合をやると、一生後悔が残るのではないかと。なので、その前に経験できたのは良かったと思いますし、今後同じことが起きないようにやってほしいと話をしました」

会見に臨んだ選手たち 【©白石怜平】

その後気持ちを切り替えた選手たちは、リードした試合は反撃を許さなかった。また、決勝のプエルトリコ戦では7−4と同じく3点リードから徐々に点差を詰められ1点差になるも、最終回を0点に抑え逃げ切ることができた。

「この試合以降は同じ展開が続いた中でも勝ちきれた。ダメージの残る負けだったのですが、引きずらずに最後まで気を抜かずにできたのがよかったです」(井端監督)

敗戦から学び、さらなる躍進へと繋がった 【©白石怜平】

このように大会を通じて様々な経験をしてきた侍ジャパンU-15の選手たち。監督も成長を実感できた期間だったと語る。

「間違いなく日本にいた時より、野球面も生活面も心も成長して帰ってきました。それは自分から見ても分かりましたし、勝つにつれてチームがまとまってきた点では子どもたちの成長が伺えるなと感じました」

ただ、期間中は中学生らしい”やんちゃ”な部分も垣間見せたそうで、コーチから注意を受けたこともあったという。

井端監督は選手たちを向いて「俺は知ってるよ」と会場の笑いを誘いながら、「ダメなことはダメなので、今後の課題です(笑)」と更なる成長も期待した。

選手たちを向いた際、会場も笑いに包まれた 【©白石怜平】

決勝で窮地を救った2人のビッグプレー

選手たちもそれぞれコメントを寄せた。グラウンドでチームを牽引したのは新井悠河主将(藤岡ボーイズ)。

上述のチャイニーズ・タイペイ戦の次に行われたメキシコ戦では先制の2点タイムリーを放った。チームを再び活気づける活躍も見せ、大会では三塁手としてベストナインを獲得した。

「まだ(U-15で)優勝したことがなかったので、”絶対に優勝したい”という気持ちで臨みました」と闘志を燃やし続けていた。

主将については立候補したという新井は、全国から集まった初めて顔を合わせる選手たちを率先してまとめていった。

「みんな最初は緊張もあったと思いますが、自分から積極的に話しかけていこうとコミュニケーションを取っていきました。選手の皆さんはレベルが高く、不安はなかったので自信を持って引っ張っていこうと思っていました」

言葉とプレーでチームを引っ張った主将の新井 【©白石怜平】

そして大会MVPに輝いたのは川上慧(明石ボーイズ)。

決勝戦の最終回、7−6の1点差で2死一・二塁と同点のピンチの場面で三遊間に抜けようかという打球を逆シングルで捕球・強肩でアウトにし、チームを救った。

MVPに加え、最優秀守備選手そして遊撃手のベストナインに選ばれた。この活躍について訊かれると、

「獲れると思っていなかった賞なので、選んでいただいてとてもうれしいです」と感謝を述べた。

大会での結果からは意外だが、「守備は得意ではない」と語る川上。それでも絶体絶命の場面などで力を出せた要因については、

「合宿の中で周りの選手を見て学べましたし、それが実践できたと思います」と振り返った。

大会MVPに加え3つの個人賞を獲得した川上 【©白石怜平】

日本を救ったプレーとして欠かすことができないのが小久保颯弥(愛知名港ボーイズ)。川上の場面で触れた決勝戦。前の6回にも同点のピンチを迎えていた。

2死二・三塁の場面、相手打者が放った打球はセンターを守っていた小久保の前へ。三塁ランナーが生還し、二塁ランナーも本塁を狙ったところを鋭い返球で返し、アウトにした。

ビッグプレーでピンチの目を摘むと、続く最終回にも1死一・二塁で左中間に飛んだ打球をスライディングキャッチ。上で挙げた川上のプレーに繋がった。

普段所属チームでは内野と投手を務めているが、大会では「気持ちはいつも通りでしたし、(打球が来た時も)”アウトにする!”と思っていました」と、強靭なメンタルでチームの窮地を連続で救ってみせた。

同点・逆転のピンチを好守で救った小久保 【©白石怜平】

なお、会見には大会前に負傷し無念の離脱となった今井幹太朗(東京城南ボーイズ)も参加。井端監督は胴上げ時、今井のユニフォームを着用して宙に舞っていた。

「本当は今井も来てほしかったのですが、大会前に怪我をして行けなかった。今井くんのユニフォームを着て胴上げしてもらいました」

とチームの一員として共に戦った証を示していた。

世界から見た日本選手の伸びしろとは

22年にU-12の監督に就任して以降、育成年代で国際試合の経験を重ねている井端監督。指導者の立場として世界から見た日本の選手について見解を語った。

「個々で見ると打つ・守るにおいては世界でも十分に通用する選手は出てきてると感じてます。ただ、チームプレーについてはまだやらないといけないと思います。特に走塁ですね。走塁をもう少し磨いていけば、試合も優位に進められると思います」

最後の質問は世界の頂点を掴んだ選手たちに向けて今後期待することについて。井端監督と吉見コーチが答えた。

「全員登板しましたが、それぞれ何が通用して・何がうまくいかなかったのか感じたことがあったと思います。ですので、良かったことを伸ばして逆に自分に必要と考えた点を今後の課題にして練習していってほしいです」(吉見コーチ)

井端監督をU-12時代からトップチームでも支える吉見コーチ 【©白石怜平】

「これに満足することなくU-18やU-23、最終的にはトップチームに入ってきてほしいです。各年代で選ばれるような選手になってほしいと願っています」(井端監督)

井端監督も選手たちに更なる成長を期待した 【©白石怜平】

会見終了後は解団式が行われた。集まった選手・スタッフらがお互いの健闘を労い、帰路へと就いた。


(おわり)
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