日本大学バスケットボール部がコロナ前以来5年ぶりとなる「ヤングシャークス バスケットボールクリニック」を開催
【日本大学】
(2024年6月取材)
コロナ禍での入学となった4年生にとっても初めてのイベントで、経験値がないため「どう取り組んでいくのか」という点で試行錯誤した。だが、かつての「ヤングシャークス」を知る城間修平ヘッドコーチ(2003年度文理学部卒、文理学部准教授)のサポートのもと、試合の合間をぬって田崎生力マネージャー(文理学部・4年)を中心に学生主導でイベントの企画や準備に時間を費やした。
部のホームページ上で、クリニック開催を告知して参加者を募ったところ、思っていた以上の速さで応募が殺到。近隣エリアのみならず、都内各地や神奈川・千葉・埼玉の各県、遠くは栃木県からの応募もあり、ヤングシャークスへの期待の高さが窺い知れる。しかし、対応できる人数を大きく超えてしまったため、締切日を待たずに募集を停止せざるを得なくなり、それでも、安全な開催のために午前と午後の2回に分けてクリニックを開催することになった。
アスレティックセンター八幡山の参加者受付には、午前9時が近づくにつれて、ミニバスチームの引率者や保護者に連れられた子どもたちが続々とやってきた。そして、受付時に配布された、「ヤングシャークス」ロゴ入りのTシャツに着替えた小学1年生から中学3年生までの子どもたち80名が、体育館地下1階のアリーナに集合。ふだんから使い慣れた“マイボール”を持参している子どもも多く、イベント開始前から学生たちに混じってシュート練習を行うなど、熱量の高さが感じられた。
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子どもたちと共に、学生たちも輝いていた120分
その後は、給水休憩をはさみながらドリブル練習、パス練習、シュート練習などを実施。最初はぎこちなさがあった計20名ほどの学生と子どもたちの距離感も、プログラムが進むにつれ次第に縮まっていき、会話も増えていく。
だんだん高度なメニューになっていくドリブル練習では、小学生低学年ながら大学生にも引けを取らないテクニックを見せる子や、パス交換からシュートを打つ練習で、流れるような動きからしっかりシュートを決める子もいて、見ている方が驚かされる。指導する学生たちも感心しきりだった。
もちろん、上手くできる子たちばかりではない。2つのボールでの左右同時ドリブルに手こずったり、シュートがゴールに届かず苦笑いしながらボールを拾いに走る子、初対面の子とペアを組んでプレーが遠慮がちになってしまう子などの姿も見られる。
だが、学生たちはそうした子どもたちにも一人一人声をかけ、拍手やハイタッチを、「こうしたらいいよ」と技術的なアドバイスを送って激励する。そして次の時にナイスプレーができれば、子どもにも学生にも笑顔があふれてくる。これこそが「クリニック」なのだ。
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ゲームメイクをする学生からのパスを受けると、ある子はドリブルでゴール下へ一直線に走り込み、またある子は周囲をしっかり見て味方にパスを出すなど、それぞれの個性が見える。中には、パスカットからの速攻で、身長差のあるディフェンス役の学生をスルリとかわし、見事にレイアップシュートを決めたり、ドリブルする男の子から女の子が鮮やかにボールをスティールしたりと、随所で目を見張るプレーが見られた。
コートサイドに陣取る子どもたちからは、試合に出ている自チームの子メンバーに「行け、行け〜」「ナイス!」と声援が送られる。さらに子どもたち自ら、所属するミニバスチームでの応援スタイルを始め、学生たちがそれに倣って手拍子と足踏みのリズムで味方を鼓舞するなど、コミュニケーションを深めていった。
試合を見守る古川貴凡総監督。「シュートを打つなど活躍する子もいいのですが、ゲームに出ている子をみんなで応援しているという姿を見ていると、バスケットボールの素晴らしさを改めて認識できました」 さらに学生たちの姿を見て、「将来彼らが親になった時や、地域貢献する機会があった時に、今日の経験は大きな役割を果たすんじゃないかなと思います」と目を細めていた。 【日本大学】
最後に、全員が大きな輪になり、レッドシャークスがいつも行なっている掛け声で締めてクリニックの午前の部は終了となった。
企画運営の中心となった田崎マネージャーは、「次は試合会場で会いましょう!」と子どもたちに呼びかけた。 【日本大学】
アリーナいっぱいに広がる大きな輪になり、レッドシャークス恒例の掛け声で締め括った。 【日本大学】
イベント終了後しばらくは子どもたちとのふれあいの時間が続き、指導を受けた学生にサインをねだる子も多くいた。 【日本大学】
グループリーダーに指示を出す井上主将。「4年生としての最後のシーズン、リーグ戦とインカレを優勝して、やりきったと思えるように頑張りたい」と意気込みを見せた。 【日本大学】
協賛社の立場で参加したOBの金原大知さん(2023年度危機管理学部卒)。「自分が教える立場になるのは勉強になるし、将来の幅が広がったりもすると思う。現役の時に参加したかったですね」 【日本大学】
「いいプレーが出たら褒めるというのを心掛けていた」という丸山賢人選手(スポーツ科学部・4年)。「大学生のプレーを見てすぐに真似できるし、今の小学生はすごいレベルが上がっているなと感じました」 【日本大学】
「子どもたちに伝える言葉選びが難しかった」と話す新庄夢選手(左:文理学部・1年)。齋藤和選手(右:経済学部・1年)は「もっと子どもたちが学生に話しかけやすい雰囲気を作れたら」と、次回の参加にも意欲を見せていた。 「子どもたちに伝える言葉選びが難しかった」と 【日本大学】
「シュートフォームや、ディフェンスの時にこうしたらいいというのを教えてもらいました。将来はバスケット選手になりたい」(4年生女子)
「細かいところまでみんなに教えてくれたし、ハイタッチとかして励ましてくれたのですごい良かったと思う」(5年生男子)
「初めていっしょになった子たちとも、試合の時にいろんな作戦を考えて話をしました。こういう時はこう攻めた方がいいよとか、大学生にポイントをたくさん教えてもらいました」(6年生女子)
「最近伸び悩んでいるので、それを克服できたらいいなという思いで参加しました。自分の苦手な分野について学ぶことができました」(中学2年生男子)
一方、アリーナで奮闘する子どもたちを、階上のランニングスペースから見守っていた保護者たちは、一様に「いいイベントだった、参加して良かった」という感想が聞かれた。
「子どもたちがいつもよりキラキラしていましたね」と話すのは、所属するミニバスのチームのコーチに声をかけてもらい参加したという6年生男子の母親。「こういうお兄ちゃんたちが通っていて、スポーツもできるんだというところで、大学生というのを身近に感じてもらえたと思います。『大学もいいね』って少し興味を持ったみたい」と笑った。
また「楽しんでいたようだし、頑張っていた」という6年生男子の父親は、「大学生のプレーを見て、自分にないもの得てくれたらなと思います」とコメント。さらにバスケットボールを始めてまだ1ヶ月という5年生男子の母親は、「今うちの子がどれくらいできるのかを知りたかったし、日々の練習以外で、大学生に教えてもらう機会はなかなかないので、参加させていただきました。まだ基礎ができてないから、もうちょっと頑張ってほしいな」と話し、「今後もクリニックを続けてほしい」と期待を寄せた。
この経験を今後に生かしていくことを期待したい
−久しぶりの開催ですが、前回と変わった点は?
一番大きいのは、各学年の部員が関わるようになったことですね。従来、クリニックを担当するのは4年生だけだったんですが、それでは今回やったことが来年につながっていかないと思ったので、午前の部は3 ・4年生が担当するようにしました。3年生は、今回の経験や反省を生かして、来年はもっといいクリニックにしていってくれると思いますし、そこを考えると、ちょうど1 ・2年生の人数も多いので、彼らにも役割を与える(午後の部を担当)ことによって、今まで以上のものが次回以降にできるのではと期待しています。
練習メニューや会場設営なども、学生たちが主体となって、何日も前からいろいろ考えながら準備を進めてきましたし、いつもバスケットボール部に関っていただいている企業さんにお話をしたら、『ぜひ協力させてほしい』と言っていただけました。そういう点がこれまでのクリニックのあり方とは全然違っていると思います。
−過去の経験を踏まえ、学生たちへのアドバイスは?
参加する方は「ぜひとも日大のバスケットボールクリニックを受けたい」という気持ちで応募されたと思うので、それに応える責任と自覚を持ちながら臨もうということですね。今回、参加者の半分くらいは近隣地域ですが、あとの半分くらいは遠方から来ていただいています。それだけに保護者の方も含めて「参加して良かった」と思って帰ってもらえるようにしようと、学生たちには伝えました。中には栃木県の鹿沼からいらっしゃる親子もいて、それはとてもありがたいことですけど、だからこそ変なことはできない、教えられない。ちゃんと満足して帰っていただきたいという気持ちでした。
−学生たちが指導する様子を見ていかがでしたか?
みんな初めてのことなので、最初はたぶん手探り状態で入っていったと思うんです。ふだん指導される側の学生たちが、教える側になるということで戸惑っているような部分も多く見受けられました。相手が小学生なので、伝えたいことをどう相手に伝えていくか、言いたいことを噛み砕いて言葉にしないと伝わらない部分もたくさんあると思うし、それを自分でやってみることで、その難しさを分かってほしいというところもあります。
一度経験したので、午後の部は、もう少しスムーズにやっていけるでしょうし、言語化して相手に伝えていくというところも、もう少し上手くやっていけるのかなと思います。
ただ、前回クリニックをやった時よりも、子どもたちのレベルが本当に上がっていますね。学生に話を聞いても、ドリブルにしてもパスにしてもシュートにしても、そのスキル的な部分は本当にすごいと驚いていました。
大会や試合が続く中でも、年2回ほどはヤングシャークスとして活動したいと話す城間ヘッドコーチ。「できる限り時間を取って、地域貢献を行なっていきたいと考えています」 【日本大学】
同じバスケットボールではあっても、自分がやるのと、相手に伝えること、教えることっていうのは全然違うものですし、全く異なる能力が必要だと思うんですよね。教えることの難しさを自分で感じて、自分で考えていくことによって、本人のプレーの幅が広がっていけばいいですし、人としての幅もより広がっていくと思います。そして最終的には地域に還元していきたい。そういう面では学生たちにとってもいい経験、いい勉強になっていると思いますし、クリニックを行う意義でもあると思っています。
−今後の活動に向けては?
今回見ていて、すべてが良かったというわけではありませんし、改善しないといけないという部分もありました。良かった点はより良くなるように伸ばしていき、足りなかった部分は学生にもちゃんとフィードバックして改善し、もっともっといいクリニックにしていきたいと思います。
自分たちだけでバスケットボールをできているわけではなく、いろんな人の力があってプレーできているので、感謝の気持ちを持つことが大切です。それを地域の人たちをはじめ、バスケットボールに取り組んでいる子どもたちに伝えていくというところに、このクリニックをやる意味があると思うので、そのことはしっかり学生に伝えていきたいと思います。
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