鈴木優の留学便り Vol.15 なぜ、グリーン・モンスターは誕生した? 日米のフィールドのデザインの違いに見る球場めぐりのおもしろさ

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ドジャー・スタジアム 【筆者撮影】

 アメリカへ語学留学中の元オリックス・巨人投手 鈴木優による日米の野球カルチャーに関するエッセイ。今回は、日米の球場の違いを見ていきます。

◇ ◇ ◇

 大谷翔平選手の破竹の勢いの活躍で、より一層注目されているMLB(メジャーリーグベースボール)。

 昨年からアメリカでさまざまな球場を見てきたが、日本の球場とは異なる個性的な見た目、デザインの球場が多く驚いた。

 アメリカの球場を参考にして設計されたエスコンフィールドHOKKAIDOを見て、アメリカの球場を見ることをアメリカ移住前から楽しみにしていたが、実際にアメリカの球場を見てみると、予想していたよりも、面白く興味深いものばかりだった。

 そこで今回は、MLBの球場の特徴を大きさやデザイン、イベントなど様々な観点から調べてみたので紹介したい。
 試合観戦以外に、球場の魅力を知ることで、また違った観戦の楽しみを見つけて欲しい。

東京ドームのフェンスの倍以上の高さも!? 個性豊かなMLBのフィールドたち

 まず1つ目にあげるアメリカの球場の特徴はフィールドの広さだ。

 NPBの球場は比較的コンパクトで、フェアゾーンも狭い傾向にあるが、MLBの球場は一般的に広く、フェアゾーンの面積が大きいのが特徴のようだ。特に本塁からフェンスまでの距離が長く設定されている。

 そして最大の特徴は、左右が対称になっていない球場が多いことだ。
 現在、NPBで使われている球場は、広島・マツダスタジアムと、北海道日本ハム・エスコンフィールドHOKKAIDOを除いて、左右対称の丸い作りとなっている。また、左右非対称の球場であるマツダスタジアムでは、レフトとライトの両翼の差は2m、エスコンフィールドで4m差と、見た目にわかる程の大きな差はない。

 だが、MLBの球場は、もっと極端な左右差がある。
 例えば「グリーン・モンスター」で有名なボストン・レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークは、ボストン市街に購入できる土地の広さに限りがあったため、極端に左翼側のフェンスまでの距離が狭い構造になっている。ホームからレフトまでが約94.5m、左中間までが約115.5mあり、この間は膨らみの無い直線的な構造となっている。

 東京ドームの左翼が100m、左中間が110mであることと比べると、左翼ポールの本塁から近さがわかるだろう。

 この左翼の短さでは、ホームランが乱発されてしまうことを懸念し、高さ約11.3mの壁を作ったのが「グリーンモンスター」だ。東京ドームの外野フェンスの高さは4.24mなので、いかに「グリーンモンスター」が高い壁なのかがわかる。

 また、サンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地オラクル・パークは、左中間が約110.9mに対して、右中間は約128.3mもある。その差18メートルとなると、左打ち、右打ち、それぞれのバッターで有利、不利があるのではないかと感じるレベルだ。
 さらに壁の高さは、左中間が約2.4mに対し、右中間は約7.6mとなっている。左打ち打者にとっては、ホームランが出にくい球場のようだ。

 かつてバリー・ボンズ選手がライト後方の場外に「スプラッシュ・ヒット」を量産していたイメージと、そのエリアに観客席が少ないため、ライト方向へのホームランが簡単に生まれてしまうと錯覚していたが、球場はその錯覚とは逆の造りになっていた。

5万席超えも。観客席数がとにかくスゴイ

先日オールスターゲームが行われたテキサス・レンジャーズ本拠地 グローブライフ・フィールド 【筆者撮影】

 そして次にあげる特徴は、観客席の収容人数だ。
 MLBの球場は通常40,000人以上の観客を収容できる大規模な球場が多い。

 大谷翔平選手の所属するドジャースの本拠地、ドジャー・スタジアムは最大で56,000人収容が可能な大規模球場で、まさにその代表例であるが、他にはニューヨーク・ヤンキースの本拠地ヤンキー・スタジアム(約54,000人)や、ニューヨーク・メッツの本拠地シティ・フィールド(約45,000人)などが挙げられる。

 アメリカは車社会のため、大きな駐車場が周りにあることも特徴のひとつ。
 球場が満員となる日にドジャー・スタジアムのトップデッキと言われる一番上の4階席から駐車場を見渡すと、圧巻の景色だ。

 それでも、収容人数の多さで、アメリカの他のスポーツが行われるスタジアムも含めて比べると、野球で1位のドジャー・スタジアムもなんと82位になってしまう。

 1〜81位は、アメリカンフットボールのスタジアムがほとんどで、1位のスタジアムの収容人数は、ドジャー・スタジアムの倍近い107,601人! ミシガン・スタジアム(ミシガン・ウルヴァリンズ、ミシガン大学のチーム)だった。

シンプルモダンな日本の球場と、歴史と独自性のアメリカの球場

 次にあげるのは、球場デザインの特徴だが、NPBの球場は野球以外にも使われることがあり、モダンで機能的かつシンプルなデザインが主流なのに対し、MLBは各球場が独自のテーマや歴史を持ち、ユニークな内外装になっているのが特徴だ。

 例えば、シカゴのリグレー・フィールドはツタの絡まる外壁が有名であったり、アナハイム・エンゼルスのエンゼルスタジアムは、グランドキャニオンをイメージした岩のようなものがバックスクリーン横にそびえたっているなど面白い。

 また、イベントやプロモーションについても紹介したい。MLBでは、プロモーションイベントが多く、記念グッズの配布や、ボブルヘッド、花火・ドローンナイトなど、日本では見ることのできないイベントも実施され、多くの野球ファンを引きつける工夫がされている。

 イベントのない試合日の方が珍しいくらいで、先日の大谷翔平選手のボブルヘッドが配布される日も、球場が満員となる人が駆けつけ、大騒ぎになっていた。

 最後にファンサービスの違いについてあげたい。

 MLBのファンサービスでは、主にスタジアム内の施設が充実しており、試合以外の時間も楽しめる工夫がされている。

 スタジアムに子どもが遊べる遊具があったりと、家族連れでも楽しめる環境が整ってる。
 例えばアリゾナの球場には、バッティングセンターのようなものがあったり、試合を見ながら入れるプールがあったりして、野球観戦以外にも子どもが試合前から遊べる環境がある。

 NPBのファンサービスでよくみられる試合前のサイン会やトークショーなど、直接選手と触れ合える機会は、MLBのオフィシャルの場では少なく、練習時間の合間に各選手が行う。

 このように、同じ野球ではあるが、国によって異なる球場や観戦文化がある。

 日本でもいろんな球場を訪れて楽しんでもらいたいが、ぜひテレビ中継だけではわからない本場アメリカの野球も実際に来て、体験してみてほしい。

文・鈴木優
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