マイナビ仙台レディース 2023-24シーズンレビュー【前編】

マイナビ仙台レディース
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2023-24シーズンのWEリーグが幕を下ろした。5勝6分11敗で10位と苦しいシーズンを過ごしたマイナビ仙台レディース。「3位以内」を目指してスタートしたが、序盤から失点が続いてしまった。苦境にあえぎながら勝利を求めた3シーズン目を振り返っていく。

 2023年5月に就任した須藤茂光監督がシーズン初めから指揮を執った。目指したのは、「個人のレベルアップと基礎の徹底」だった。練習ではパスの強化に取り組み、試合中のプレーや判断のミスを減らすことに注力した。「攻守においてより高いレベルを目指す。選手一人一人の意識を変えていく」と意気込んだシーズンの始まりだった。

3季目で大きく入れ替わった戦力。若手の台頭、国際色豊かな選手の顔ぶれ

今季はWEリーグ初年度から在籍したMF宮澤ひなた選手がマンチェスターユナイテッドWFC(イングランド)へ。前年に新人ながらチームの大きな戦力となったFW松窪真心選手もノースカロライナ・カレッジ(アメリカ)へ期限付き移籍した。FW矢形海優選手はC大阪、FW船木里奈選手は大宮Vへと完全移籍を発表した。攻撃面でチームを支えた選手たちがチームを離れた。長年仙台を支え続けたDF万屋美穂選手、市瀬菜々選手は2022-23シーズン限りで現役を引退した。

AC長野からMF太田萌咲選手が完全移籍加入。マイナビ仙台ユースのエース的存在、MF遠藤ゆめ選手がトップに昇格。ユースから武蔵丘短期大学を経てMF石坂咲樹選手が加入、JFAアカデミー福島からDF吉岡心選手もマイナビ仙台の一員となった。WEリーグカップの最中には、MF佐々木美和選手が6年ぶりに仙台へ復帰を果たした。頼れるドリブラーは大きな経験を積んで故郷のチームへと帰ってきた。

また今季は外国籍選手を積極的に補強した。スペインからFWカーラ・バウティスタ選手、MFパウラ・ゲレーロ・サンズ選手、ナイジェリア代表のDFオケケ・チディンマ・ンケルカ選手、カメルーン&フランス国籍のFWマリエ・アウォーナ選手、タイからFWジャニスタ・ジナントゥヤ選手、MFチャチャワン・ロッドトン選手。シーズン後半には韓国人DFパク・ジェア選手が加入した。実に6か国、7名もの外国籍選手が在籍した。

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リーグ開幕はアウェーで3-1の快勝。その後は、かさむ失点に苦しい4連敗。

リーグ戦開幕に先がけて行われた「WEリーグカップ」では、病気療養中の須藤監督に代わって、約1か月間に渡って佐々木勇人コーチが指揮を執った。この期間はけが人が多く、戦力も十分に揃わない中、ユースの遠藤ゆめ選手は主力として活躍し、当時高校1年生の津田愛乃音選手、岩城恋音美選手もトップチームデビューを果たした。カップ戦は1分4敗と勝利なしでリーグ戦を迎えることとなった。

2023-24シーズンのリーグ開幕戦はアウェーでのEL埼玉戦だった。キャプテンのDF國武愛美選手がセットプレーでWEリーグ初ゴールをマークする。先制に成功したが後半の立ち上がりに追いつかれる。しかし、後半29分、遠藤ゆめ選手が得意のドリブルで切り込みPKを獲得。カーラ選手がこれを決めて来日初ゴールをもぎ取ると、3点目は鮮やかな崩しから佐々木美和選手が走りこんで決め、突き放した。3-1の勝利で上々のスタートを切った。

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続く第2節はホーム開幕戦のI神戸。5306人ものサポーターがユアテックスタジアム仙台に集まった。この試合では、開幕戦で幾度もチャンスを生み出した「仙台の左サイド」を抑え込まれた。後半はシステムを変更し、攻め込む時間も作ったがネットは揺らせず0-3で敗れた。結果にはつながらなかったものの、大観衆の前で遠藤選手や吉岡選手、石坂選手ら、若い力が躍動した。

 第3節新潟L戦は、FW廣澤真穂選手の今シーズン初ゴールが生まれたが1-2で敗戦。連戦となった第4節東京NB戦は0-5の大敗となった。第5節大宮V戦では石坂選手がWEリーグ初ゴールを上げるも、結果に結びつけることができなかった。苦しい4連敗、勝利は遠かった。

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 今季2勝目は第6節アウェーのN相模原戦だった。試合開始直後から積極的にゴールを狙うマイナビ仙台。先制点は前半19分、遠藤選手がドリブルで仕掛け、思い切って右足を振り抜いた。前半終了間際にはDF高平美憂選手からのパスにMF中島依美選手が反応。左足で追加点を決めた。2-0、クリーンシートで勝ち点3を積み上げた。


ウインターブレイク前の第7節まで2勝5敗。ボールを奪ってもすぐに失い、自ら流れを手放す試合も多かった。「球際について、もっと厳しい姿勢で取り組まないといけない。イージーなミスが多すぎるという状況がずっと続いている」と須藤監督。國武選手も「チームとして、良くはなってきているが、仕留めるべきところで仕留めきれていない。最後の質や体を張るというところをまだまだ改善しなければいけない」と後期での巻き返しを誓った。

ウインターブレイク明けの3月、ストライカー廣澤真穂の覚醒。

リーグ戦の中断期には、タイのラヨーン州と宮崎県延岡市でキャンプを実施。前期の課題克服と試合数の多い後期を戦いきるコンディション作りに取り組んだ。リーグ再開は、第8節ホームのC大阪戦だった。0-0で折り返した後半立ち上がりに失点。しかし、ホームの声援を背に受けた選手たちは、ここでひるむことなく、ゴールを目指した。後半20分に佐々木美和選手からのクロスに廣澤選手が右足で合わせ追いつく。後半36分には遠藤選手がPKを決めて2-1で勝利した。「みんなで喜べるということが嬉しい」と高校を卒業したばかりの18歳の笑顔が弾けた。

 第9節AC長野戦は1-1、第10節S広島R戦は2-2とドローが続くが、リーグ再開後5試合で5得点と、廣澤選手が一気に得点ランキング上位へ踊り出た。「以前はボールが来ない時に動き過ぎて、仕事をするべき場所にいなかった。ゴールが取れている時は、良いポジションが取れている。FWとしてゴールを取り続けたい」と廣澤選手。エースの自覚が芽生え始めた。

(マイナビ仙台レディースオフィシャルライター・村林いづみ)

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著者プロフィール

東日本大震災により休部した東京電力女子サッカー部マリーゼが移管し、2012年ベガルタ仙台レディースが発足。2017年に株式会社マイナビとタイトルパートナー契約を締結しマイナビベガルタ仙台レディースとなりました。 2020年10月にWEリーグへの参入が正式決定。2021年2月より「マイナビ仙台レディース」とクラブ名を改め、活動をスタート。選手達の熱いプレーが多くの方に届くような盛り上がりをともに作っていきます。仙台、東北から日本全国、全世界に向けて、感動や勇気を与え、WEリーグ優勝を目指し活動しています。

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