第一生命 D.LEAGUE 23-24 CHAMPIONSHIP!!!王者KADOKAWA DREAMS、2連覇の偉業を達成!!MVDは2年連続で颯希(SATSUKI)。

D.LEAGUE
チーム・協会

KADOKAWA DREAMS 【D.LEAGUE】

世界最高峰のプロダンスリーグ「第一生命 D.LEAGUE 23-24」(以下D.LEAGUE)のCHAMPIONSHIP(CS)が2024年6月9日、東京ガーデンシアターにて行われた。レギュラーシーズン上位6チームによる熾烈なトーナメントが展開され、決勝は昨シーズンと同じKADOKAWA DREAMS VS CyberAgent Legitの対戦に。結果は王者KADOKAWA DREAMSがチャンピオン防衛に成功。Dリーグ史上初の2連覇を成し遂げ、賞金3000万円を手にした。颯希(SATSUKI)がCSで2年連続MVDとなり、2位のCyberAgent Legitには1000万円、3位のDYM MESSENGERS、KOSÉ 8ROCKSには500万円が贈呈された。結果は以下。

1st Trial Match:FULLCAST RAISERZ VS KOSÉ 8ROCKS(1-11)
2nd Trial Match:DYM MESSENGERS VS Valuence INFINITIES(9-3)
1st SEMI FINAL Match:KOSÉ 8ROCKS VS CyberAgent Legit(5-7)
2nd SEMI FINAL Match:DYM MESSENGERS VS KADOKAWA DREAMS(3-9)
FINAL:KADOKAWA DREAMS VS CyberAgent Legit(6-5)

王座防衛に挑戦者として挑んだKADOKAWA DREAMSの軌跡と背景

昨シーズン、無名の選手たちを鍛え上げ、ついに王者となったKADOKAWA DREAMS。今シーズンはユニフォームカラーを白から青に変え、1から挑戦者の気落ちで挑むと宣言していた。若き王者にとって王座は居心地が良くない。王であれど戦場に赴いては、壁や困難を見つけ、敗北も経験し、屈辱を糧に自分を磨き、何度も壁を乗り越えていく。

自らハードな環境に身を置き、新たなスタイル、新たなビジネス、新たな価値観を産む着想力、”アントレプレナーシップ(起業家精神)”こそがこのチームの最大の強みに思える。

ディレクターKEITA TANAKAはシーズン中のインタビュー記事の中で「今年はKDが負けて欲しいというのが世の中の流れだと思っています。僕がファンだったら、まず、CyberAgent Legit に負けて欲しい。DYM MESSENGERSやLIFULL ALT-RHYTHMにも倒されて欲しい。色んな期待を背負っていることがエンターテイメントだと僕らは理解しています。賛否を乗り越えて、D.LEAGUEを面白くするためには悪者が必要なので、悪者になります。」と語っていた。

自分達の置かれた立場を逆手に取り、試合前の煽り映像ではわざと尊大に振る舞い、ダンスだけでなくD.LEAGUEや試合そのものを楽しんでもらう。そんな広い視座からの駆け引きがKDの仕事であった。

そしてKEITAの予言通り準決勝ではDYM MESSENGERSと、決勝戦ではCyberAgent Legitと勝負することになった。

KDは準決勝から決勝へ、TSYとMINAMI以外全てのメンバーを変えて挑んだ。メンバーを分けることで2作品の完成度を高めること、何よりメンバーが準決勝から決勝へのバトンを渡してくれることを信じての采配には、ドラマを感じてしまう。

KDの初戦となる準決勝ではValuence INFINITIESに勝利したDYM MESSENGERSとの対戦。DYM MESSENGERSは今シーズンからの新規参入チームにも関わらず準決勝へ進む快挙を成し遂げた。KDは後攻となる。

「What is dance?」をテーマに、ダンスの自由さや楽しさという本質的な部分を伝えるというパフォーマンスを披露するMESSENGERS。それぞれのソロから始まり、ドープなビートに合わせてのHIPHOP、深いダウンの音どりで難易度の高いルーティーンを見せる。

用意したお酒で乾杯したのを起点にビートが変わり、よりセクシーによりパワフルにロッキンのルーティーンを展開し、それぞれが順番にソロを展開して自分達の武器である「個」の力を爆発させる。競技としてのダンスで自己を磨きながらも、ライフスタイルとしてのダンスを楽しんでいる姿をしっかりと表現してみせた。

DYM MESSENGERS 【D.LEAGUE】

対してKDは、煽り映像で颯希(SATSUKI)が尊大な言葉でヒール(悪役)を装いながら、「1.2.3.KD !」の合言葉を盛り込み、会場の空気を盛り上げ、パフォーマンスでは「等身大の私達」をテーマに、ジャズ、コンテンポラリー、バレエ、アニメーションなどの要素を緻密に盛り込み王者たるKDの強さを見せつける。

難易度の高い板付き時点からブレずに肩の上に立ち続ける技術、質感を合わせたカノンを見事に成功させ、リリックに合わせた颯希(SATSUKI)のアニメーションのソロに会場が大きな声援をあげる。クイックなルーティーンで空間をロックし、サイファーラウンドからの伏線回収と言えるASUHAとRyoによる柔軟なコンビネーションが披露される。

アクロバットもバレエのターンもリフトも、ジャッジに厳しい目で見られる傾向をあえてわかった上で、武器として盛り込み、ジャッジだけでなく見てる人全てに感動を与える「KDの黄金比」がそこに埋め込まれていた。

ジャッジの結果、3-9で勝利し、KDは昨年に引き続き決勝進出を決めた。

KADOKAWA DREAMS 【D.LEAGUE】

どんな場面でも決して油断しない。Legitの優勝への執念

2年連続レギュラーシーズン優勝を経験し、特に今年は圧倒的な強さでレギュラーシーズンを勝ち抜いたCyberAgent Legit。昨シーズンの決勝でKDに敗北してからの臥薪嘗胆。勝っても勝っても謙虚に自己を省みチーム全体でスキルを磨き続ける姿を、ドラマの主人公のように見ていたファンも少なくないだろう。

CSは決勝戦以外、レギュラーシーズンの順位が高いチームにアドバンテージとしてジャッジに一票加算されるが、準決勝からの試合となるLegitはアドバンテージがあるからといって気を抜く様子もない。

レギュラーシーズンで唯一敗北を喫したKOSÉ 8ROCKSと準決勝でリベンジマッチとなったLegitは「THE TRUTH」をテーマに密度の濃いダンスを披露した。Legitというチーム名自体に「本物」という意味が含まれており、真実と本物、言葉を重ね合わせることで真に輝く自分達のダンスをこのステージにぶつける。

また、ダンスも他のスポーツ同様、一度ステージで踊ると体が温まるだけでなく不要な緊張が取れ、パフォーマンスが向上することがある。8ROCKSがトライアルマッチで一度踊っているアドバンテージを侮らず、ステージ上でギリギリまでストレッチを行なっていた。

逆さ吊りの1chという衝撃的な一枚絵からスタートしたLegitのショーは、1chの雷、B-BOY SHOSEIの竜巻のようなソロに合わせフォーメーションを変え、アニメーションでのルーティーンへと続く。ブレや瞬きなど全て意識することでノイズを削ぎ落とし「寸分狂わぬ」という表現がマッチするタイトさだからこそ、表情や首の揺らぎなどの細かな要素でのアピールが際立つ。

2エイトごとに盛り上がりを用意し、エースTAKUMIのソロは照明との相乗効果で空間が歪んでいる錯覚すら覚える。テンポアップしてからのボディコントロール、タット、バイブレーションからカノンへとつながるラッシュの攻撃力は凄まじく、全体を通して一つの生命体のような空間のうねりを生み出していた。

CyberAgent Legit 【D.LEAGUE】

ジャッジの結果は5-7と大接戦での勝利だが、Legitは喜ぶのではなくすぐに円陣を組み、お互いに気持ちを引き締め直すように語りかけ合う。CS優勝への執念と本気度が伝わってくる。

そうして迎えたKDとの決勝戦。両チームとも世界でのパフォーマンスを経験し、一回り大きくなって決勝の舞台に帰ってきた。Legitにとっては昨年の雪辱を果たす最高の舞台となる。出演順はCSランキング順位が高い方が後攻となるため、Legitが大トリとなる。

No.ONEとなったKD。ゴールドより輝いたLegit

決勝戦、KDのテーマは「ONE」。自分達の絆や団結力だけでなく、見ている人々や相手チームすら自分達のショーで一つにしてしまおうというコンセプト。そして1位のONEでもある。準決勝のメンバーからバトンを受け取った選手たちが、ベンチコートで衣装を隠すことなくステージに登場した。

パフォーマンスはサス照明に合わせたMINAMIのソロから始まり、メンバーが動きをトレースしていく。コンペティションではシンクロ率が高いルーティーンの割合を増やす方が高得点が見込める。しかし「自分達のHIPHOP」での勝利と「世界に通用する作品」にこだわるKDは、あえてポーズや大技など個性を要所要所で展開させる。対極にあるはずの”調和”と”野性味”が共存しているのがKDの個性だ。

緻密なフォーメーションとポージング、腹筋の上を走らせリフトで一回転する斬新な組み合わせ技を、リスキーながらしっかり決めていく。

ソロからフロア、ドルフィン、アクロバットで盛り上がりを一ヤマ作った後はハーフビート(遅いビートの)パートでDaichiをセンターにし音ハメを決める。TSYのバク宙を受け止め、リリックだけのパートでは女性メンバー3人が立ち姿によるかっこよさを主張する。

リディム(ダンスホールレゲエ)のビートに音が変わり、密度の高いパワフルなルーティーンから、TSYの大ジャンプ2回宙返り。2回宙と呼ばれるこの技はラウンド14で出す予定が、ハイリスクすぎたため急遽別の技に変えたという経緯があり、CSの大舞台でのリベンジを誓っていたTSYは見事着地まで綺麗に成功させ歓声を浴びた。

KADOKAWA DREAMS 【D.LEAGUE】

息が上がっている様子を見せない抜きと客席煽りから最後のラッシュに入り、自分達の思うかっこよさ(=HIPHOP)を濃密に詰め込む。

対するLegitのテーマは「ALL FOR GOLD」。優勝の金のトロフィーを得るために、自分達の積み上げてきたもの全てを出すという。

メタリックな衣装に身を包み、優勝に届かず打ちのめされる場面と、そこから這い上がりKANATOが前宙で前に進むところからダンスが始まる。後ろ向きに安全に転ぶテクニックや前宙のために安定して台座を作るテクニックなど、今シーズンのLegitはダンスも表現力も幅広く磨き上げてきた。

持ち味であるクイック&スローのルーティーンにダイナミックなコブラを使ってのフォーメーション移動。enaのパワーロッキンからロックを繰り返しながら質感や音どりを七色に変化させていくルーティーン。

ビートが変化してからのAYUNAのソロと目力は今シーズン1番の輝きを放つ。KANATOの背中を土台にし、AYUNAのブリッジに紙一重の距離でSHOSEIがサイドフリップをきめエアーに繋げる。

TAKUMIのソロでは腕のウェーブに合わせてメンバーがフロアをスライドし、ATOのソロを含め抜きのある音遊び、最後のラッシュでは表情も含め全身全霊を込めたPOPPIN’に、複雑なカノン、KAI→とKANATOによるアクロバットも成功し、追加点として最後のドラム音を掴む余韻を持たせる構成。海外を経て学んだ経験も反映されていたのではないだろうか。

CyberAgent Legit 【D.LEAGUE】

最終ジャッジは拮抗し、最後の一人が開票されるまでわからないというドラマチックな展開で、見事CSを制したのはKADOKAWA DREAMSであった。優勝が決定した瞬間、舞台袖からKDのメンバーが出てきて喜びを分かち合った。

一方Legitは勝敗が決まった瞬間ステージに倒れ込むメンバーもおり、CS決勝で2度目の敗北を経験することとなった。舞台袖からは1chが駆け寄り、リーダーTAKUMIはメンバーに起き上がるよう手を差し伸べるが、その後上を向き涙を滲ませていた。

KEITA TANAKAは優勝コメントで「明日また同じ戦いをしたら別の結果が出たんじゃないかと思う。僕らの目標は、レギュラーシーズン優勝ではない、CS優勝でもない、世界をひっくり返す、ダンスで。川崎から世界を変える、そんなチームでありたいと思います。」と語った。


試合後のインタビューでMVDとなった颯希(SATSUKI)は「伏線回収というか、決勝戦はどちらが勝ってもみんなが喜ぶ状況で、1点差という稀有な状況で勝利を掴めた。勝てたことが心の底から嬉しく、心の底からメンバーみんなを尊敬しています。」と語っていた。

1.5軍やアバンセ、ユースも含め大所帯のチームとしての層の厚さと情熱で紡がれたKDの優勝。それに対し少数精鋭でスキルシェアを行いショーの構成力と表現力を磨き上げてきたLegit。

金のトロフィーこそ獲れなかったが、ストイックに優勝を目指しレギュラーシーズンを駆け抜けてきたLegit自身が、イミテーションゴールド(模造品の金)ではなくレジットゴールド(本物の金)として輝いていたシーズンだったのも確かだ。次はプラチナ、そしてダイアモンドと、来シーズンも更なる本物の輝きを見せてくれるに違いない。

決勝戦にも負けない熱量の勝負。そしてサプライズ発表

レギュラーシーズンの1〜2位にはシードが送られ、3〜6位のチームは準決勝に進むためのトライアルマッチで勝利しなければいけない。レギュラーシーズンは単純に上位6チームに入れば良いという単純なものではなく、順位1つの差がCSの戦略に大きく影響してくる。

熱のこもった決勝に負けず劣らず、1st Trial MatchのFULLCAST RAISERZ VS KOSÉ 8ROCKSの勝負も、初戦ながら高火力チーム同士の熱い戦いとして多くのファンの記憶に残るものだった。

CSに4年連続出場となるRAISERZは「This is KRUMP」をテーマに、メンバーが参画した楽曲で、自分達のスタイルを出し惜しみしないパフォーマンスを展開した。

FULLCAST RAISERZ 【D.LEAGUE】

対するKOSÉ 8ROCKSは21-22シーズンのCSでチャンピオンに輝いたチーム。同じパワースタイルのチーム同士、RAISERZとは戦績2勝2敗、ライバルと呼んでもいいほどの好敵手だ。RAISERZがアーミー(陸軍)なら8ROCKSはアクロバットやパワームーブで自由自在に空を飛ぶ空軍と表現できるだろうか。通常は空軍の方が陸軍に対し有利だが、RAISERZのシンボルである登り竜は簡単に空からの勝利を明け渡してはくれない。

8ROCKSはSPダンサーとして初代ディレクターのISSEIが登場。ファンを歓喜させるとともにこの勝負への本気度が窺える。ディレクターKakuは今シーズン限りでの退団が発表されており、Kakuへ勝利をプレゼントしたいという想いもある。

KOSE? 8ROCKS 【D.LEAGUE】

ジャッジの結果、KOSÉ 8ROCKSが勝利し、TaichiはSHUVANによる特別なディレクションへの感謝と、兄のISSEIに「おかえり」を伝え、Kakuに勝利をプレゼントすることができた。

会場からは歓声だけでなく「どちらも鳥肌が立った」といった声が聞かれた。まさに日本を代表するダンスの頂上決戦、その開幕戦から会場が身震いするほどのバトルを披露してくれた。負けた試合であろうと、意味のない試合は一つもなかった。

そしてイベントの最後には、6/26(水)18:00〜第一生命 D.LEAGUE 23-24 AWARDS SHOWの開催、そしてリスト株式会社による新チーム「LIST::X(リスト エクス)」の参画が発表された。来シーズンは全14チームとなり、10月13日に開幕を予定している。

23-24シーズンを通して全171名のDリーガーの成長や挑戦、多くのドラマがファンの心を動かしたのではないだろうか。これからさらに規模が大きくなるD.LEAGUEと、新しいドラマやダンスに期待して欲しい。SD.LEAGUEからのスター誕生の瞬間や、各チームの取り組みなど、オフシーズンもぜひ話題をチェックし感想とともに拡散して、D.LEAGUEを一緒に盛り上げていただきたい。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

D.LEAGUEとは、“世界中すべての人に「ダンスがある人生」をもたらす”をミッションに、活動を通じてダンスへの認知・理解・共感を実現し新しい文化と産業構造を創造する、2020年8月に発足した日本発のプロダンスリーグです。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント