早大ラグビー部 【連載】新体制特集『BEAT UP』【第3回】 FL安恒直人×小野史裕主務

チーム・協会
取材・編集 西川龍佑、濵嶋彩加、清水浬央、村上結太

 第3回には今年度寮長に就任した安恒直人(スポ4=福岡)と、小野史裕主務(スポ4=東京・本郷)が登場。選手とスタッフ、二つの視点から早大ラグビー部の魅力を紐解きます。学生最後の年にそれぞれの道でチームに貢献するお二人の、思いのこもった言葉をご覧ください。

※この取材は4月13日に行われたものです。

「人として当たり前のことをできるように」(安恒)

仲良く談笑する2人 【早稲田スポーツ新聞会】

ーーまずは他己紹介をお願いします

安恒 小野史裕くんです。本郷高校出身で、今は主務をしてくれています。 最近はよく下村(勇貴、文4=東京・早実)くんとイチャイチャしてる感じで、よく甥っ子と遊んでるイメージが強いです。

小野 安恒直人くんです。高校の時はBKだったんですけど、入部してからFLになって。今はHOとどんどん背番号が小さくなって前の方に出てきている選手です。本当にいろんな人と仲良くしてて、慕われてて、これあんまり言わない方がいいのかな。キャプテン候補にもなってたぐらいな人望の持ち主です。



ーーお互いの第一印象はいかがでしたか

小野 俺のこと嫌いだったよね最初(笑)。

安恒 最初変なやつすぎて(笑)。ちょっと関わりづらかったっていうのが第一印象です。

小野 あんまり覚えてないな。でもすごいタックルするやつがいるなっていう印象でした。



ーー寮長、主務の業務について教えてください

安恒 寮長はそうっすね、寮を管理するってところで、やっぱり過ごしやすい寮を作るだけじゃなくて、 やっぱり人として当たり前のことをできるように。自分と副寮長の細矢(聖樹、スポ4=国学院栃木)と一緒に声をかけながら、当たり前のことを当たり前にしようって意識しています。

小野 主務は、主な業務としては渉外業務で、相手校、協会、大学、その他いろんな、ラグビー部が関わる人たちとの連絡だったり、調整っていうものをしています。それとプラスして、例えばチームが遠征行くときにどういったスケジュールで動きますとかっていうのを色々、各方面と調整しながら行ってます。その中で学年のリーダーというか、チームのリーダーでもあるので、気付いたところは、寮のことだったら寮長に伝えたりとか、いろんなところと協力しながらチームの運営を色々やってるつもりです。

「足りないことだらけだった」(安恒)

昨年について語る安恒 【早稲田スポーツ新聞会】

ーー昨年のチームを振り返っていかがですか

小野 それこそ見えてる景色が違いそうだね。ラグビーばっかりになりがちなチームだった気がします。ほんとにラグビーは皆さんうまかったし、 練習もめちゃめちゃ一生懸命やってたけど結果が良くなかったので、なんで良くなかったのかなっていうところを考えながら手探りで今やってるっていう感じです。

安恒 本当に同じ印象なんですけど、なんて言えばいいですかね。難しいな。

小野 難しいよね。

安恒 ラグビーだけは本当に真面目にっていうか、一生懸命やるっていうチームだと思います。やっぱり今シーズン始まった時も、新チームで話したんですけど、やっぱりグラウンド外のところをもうちょっとちゃんとしないといけないなっていうのが去年の課題だったんで、そこが気になったというか、今年大切になるかなって思います。



ーー昨年は個人的に何に重点を置いて取り組んでいましたか

安恒 自分はそのポジションも変わってスタメンで出させていただいたんですけど、その理由がコリジョンで勝つっていうところがあったと思うんで、コンタクトの部分の練習は他の人よりも多くやっていました。

小野 僕は選手と副務を兼任でやっていたので、 メリハリを持ってやるというか。選手の時は選手100パーセントでやるし、副務の時は副務のことを100パーセントやるっていうことを意識してました。



ーー去年の1年間で成長したと思う点はどこですか

小野 兼任でやっていたので、いろんなところに目が向くようになったなと。同時進行で、全く別の視点からチームを見ていたので、なんかそういった意味では見える景色は変わってきたなっていうのがあります。

安恒 自分はやっぱりラグビーへの向き合い方は変わったなって思います。2年生の時はその健次のリザーブで出ることが多かったんですけど、 去年は途中からスタメンにもなって。やっぱり試合に出てる人は誰よりも努力してる人が多くて、月曜日にバイクしてる人もいましたし、そういうところでラグビーの考え方が変わったかなって思います。



ーー特に印象に残っている試合はありますか

安恒 自分は青学戦ですかね。 元々は16番、リザーブで出る予定だったんですけども、健次が体調崩して急遽スタメンになって。2日前ぐらいにスタメンって言われて、でも自分にできることをやろうと思ってやった結果、賞ももらえましたし、次の試合からフィールドの面も良くなって、FLとして出させてもらえるようになれたきっかけの試合だと思っています。

小野 僕は京産戦です。副務という立場で初めてロッカーに入っていたシーズンなんですけど、シーズンが終わってしまうロッカーの雰囲気もすごい印象に残ってます。何よりも個人的にすごく悔しかったのは、 選手も副務もやって、すごく一生懸命やったシーズンのつもりだったんですけど、試合後、 もちろん片付けとかも色々やんなきゃいけない中で、泣いてちゃしょうがないなと思って我慢してたっていうのもあるんですけど、泣くのを我慢できちゃったっていうのが、これだけやったつもりだったけど、涙も出ないシーズンだったんだなっていうのがすごく悔しくて、そこが印象に残っています。



ーー改めて選手権の結果をどう受け止めていますか

安恒 やっぱり京産戦で負けて、足りないことだらけだったんだなっていうのが1番です。 明治戦以降から本質的な、接点のところにこだわってきたんですけど、京産戦の負けもFWがそこの部分で負けて、 もうちょっと練習の時から良くない日、良い日っていうのがあったので、本質的なところにもうちょっと向き合うべきだったなって思います。

小野 そうですね。去年のシーズンの振り返りで言うと、さっきも言ったようにラグビーだけになっちゃってたなっていうのがチームとして1個あります。 あとは主務、副務としても、ラグビーのチームのスケジュール調整だったり、運営っていうところにしか気が向いてなくて、もっと学年のリーダーとしての動き、働きみたいなところはとか、いろんなところに目向けるみたいなところは全然できてなかったので、ラグビーだけじゃ勝てないっていうのは、選手もそうだし、僕らもマネジメントのスタッフとしてだけじゃなくて、リーダーとしてもっとやらなきゃいけないことがあるなっていう風な学びを得ました。

「もうとにかくやりきりたい」(小野)

新シーズンへ意気込みを語る小野 【早稲田スポーツ新聞会】

ーーそれぞれ寮長、主務に選ばれたことをどう感じていますか

安恒 まさか自分が寮長になるなんて知らなかったので、健次から言われたんですけど、みんなの私生活の部分をちゃんとしてしてくれって。健次にはある程度信頼されてるから選んでもらえたっていうところは素直に嬉しかったですね。自分としては。

小野 もう副務になった時点で主務になることは決まってたので、副務に選ばれた時点で選手としての動きと、またプラスアルファで入ってくるっていうのは結構複雑ではありました。けど、みんなに信頼して選んでもらえたっていうことなのであれば、僕は辛かったけど別に嫌ではなかったですね。 こういう立場にしてもらって、今はすごく良かったと思ってます。自分の成長としてもすごく良かったなと思います。



ーーラストシーズンになりますが、個人的なテーマはありますか

安恒 去年に引き続きなんですけど、やっぱりコリジョンのところ、接点のところはこだわっていきたいです。去年も帝京明治京産、負けた試合ではちょっと差があるなって自分でも感じたので、今年は大学で1番強いって言われるぐらい接点のところにはこだわっていきたいです。

小野 僕はそうですね、ふわっとしてますけど、 小野が主務になってよかったなってみんなに言ってもらえるようになりたいです。
思ってるビジョンを実現するだけじゃなくて、色々なところの話を聞きながら、協力しながらっていうところがなかなか難しいんですけど、しっかりやって、みんなで作っていくチームのリーダーとして、小野が主務やってくれてよかったなって思えるような、言ってもらえるような主務になりたいっていうのが目標です。



ーー新チーム発足から現在までのチームの雰囲気はいかがですか

安恒 最近は、今健次が日本代表に選ばれてて、いなくなった時はFWとしてちょっと浮かれるところっていうか、 雰囲気が良くないところもあったんですけど、数日経った今は4年生だけじゃなくて3年生も、健次がいないってことに甘えずに、FWとしては強度だけじゃなくて雰囲気もいい感じで取り組めているのかなと思います。

小野 部全体としては、言いたいことが言える組織になりつつあるかなとは、個人的に思います。去年まではモヤモヤしたまま終わってたものが、ある程度言いやすい雰囲気になってきたのは、 まだまだその結果として繋がってはいないかもしれないですけど、1歩目としては、初めとしてはすごくいい兆候なのかなって思ってます。



ーー昨年からチームの中で変化はありましたか

小野 僕がさっき言ったことに繋がるんですけど、 下のチームがだいぶ元気良くなったなっていうのは感じてて、下のチームの4年生がしっかりリーダーシップをとってくれて。去年も別に、僕らが下のチームが頑張ったところで、みたいなことは思ってなかったと思うんですけど、でもチームのために頑張ろうって、下のチームがちゃんと心の底から思ってやってくれてる感じがします。

安恒 あとグラウンド外、向き合い方がちょっと変わったと思います。やっぱりまだ足りない部分が多いんですけど、去年に比べたらもっとしないとなっていう雰囲気があると思う。

小野 そうそう、問題意識を持てるようになったかな。



ーー新シーズンに向けてチームとして取り組んでいることはありますか

小野 グラウンド外で言うと、自分たちの決めたルールを自分たちでしっかり守ろうっていうところがあります。ラグビー部は伝統的に自主性の高い、 自分たちでやりたいことを自分たちで実現するっていうような文化を持ったチームなので。近年はそこが薄れていた感があったので、そこをもう一度取り戻すためにも、まずは自分たちで決めたものを自分たちで守ろうっていうところは意識して、ルールであったり、そういったところも至るところに貼るようにしています。

安恒 去年の敗戦の結果が、シンプルな力負けだったので、ウエイトももちろん頑張るんですけど、やっぱりコンタクトの部分には今年こだわってます。



ーーFWのセットプレーの感触はいかがですか

安恒 モールとかはまだやってないですけど、スクラム自体は良い感じで、去年に比べたら組んでる本数がだいぶ違くて、1日100本組もうみたいな。 週末はそれくらいの気持ちでやってて。去年はフロントスリーだけがスクラムのことを考えて、みたいな感じだったんですけど、今年はバックファイブも一緒に問題意識を持っていて、スクラムに対する姿勢が変わってきているなって自分では思っています。



ーー春シーズン開幕を控えた今のお気持ちをお聞かせください

安恒 楽しみっていうのが1番ですね。自分が最高学年になって、まだ他のどの大学ともあんまりやったことがないので、 自分たちがどれくらい戦えるのかなっていうのは楽しみです。

小野 運営の部分で滞りなくっていうのがまず大きなところですけど、その中で選手の声とかもしっかり拾いつつ、 試合に関わる人みんながやってよかったって思えるような試合ができる運営を目指していきたいと思います。



ーー春シーズンでフォーカスしているゲームはありますか

安恒 自分は帝京ですかね。僕は4年間で自分が出た帝京の試合で勝ったことがなくて、 帝京に負けっぱなしってのはやっぱり悔しいんで、特に帝京は倒したい相手です。

小野 僕は遠征で行く5月5日の佐賀の慶応戦と19日の東海、あと6月2日の新潟の明治戦という、地方で普段は見に来れない人が、早稲田が試合するからってわざわざ高いお金払って見に来てくださるので、いいものを作りたいなと。もちろん主役は選手ですけど、滞りなくみんな来てよかったと思ってもらえるような、そして選手としてもいいパフォーマンスをしてもらえるような運営をしていきたいなと思ってます。



ーー改めて、今年はどんな一年にしたいですか

小野 僕はそうだな、もうとにかくやりきりたい。 スポーツっていう場面に限って言えば、トップレベルに関わるのは本当に人生で最後だと思いますし、 後悔のないようにとか、もちろん早稲田ラグビーの学生としていられるのもラストですし、今までの人生の集大成みたいなものを作れるように全力出し切るっていう感じです。

安恒 そんな立派なこと言われたら…

一同 (笑)。

安恒 僕はラグビーに関わることに本当にこだわる1年にしたい。 グラウンド内だけじゃなくて、グラウンド外のところも大田尾さんによく言われてるんですけど、人として成長しないと、大舞台とかで活躍できないとか、平常心でいられないとかよく言われるんで、グラウンド内外も含めて、ほんラグビーに常にこだわって集中していきたい1年です。



ーー春シーズンへの意気込みと、ファンへのメッセージをお願いします

安恒 全試合、全部圧倒して勝つつもりでやるんで、特にフォワードは接点の部分だけじゃなくて、セットプレーも、スクラムは今年違うんだぞってところを見てほしいですね。ファンの方々には、早稲田のスクラムが変わったぞってところを見せれるように頑張るので、ぜひ応援お願いします。

小野 チームとして春シーズンから全カテゴリー、全試合勝つっていうような目標を掲げている中で、 僕が担うのは本当にもう1番土台の部分、勝利とか敗北とかそういう以前の試合ができるかできないかみたいなところから担っていく非常に重要なポジションだと思ってるので、そこをしっかり全うします。ファンの皆様に関しては、制限なしで1年ずっとできるシーズンは久しぶりだと思うので、ぜひ上井草とか、あとは遠くて来られない方は様々な会場でもやるので、そういったところに足運んでいただいて、ぜひ今年の早稲田は違うんだぞっていうところを実際に目で見ていただければなと思います。



ーーありがとうございました!

今シーズンに向けて意気込みを書いていただきました! 【早稲田スポーツ新聞会】

◆安恒直人(やすつね・なおと)

2003(平15)年2月5日生まれ。172センチ。98キロ。福岡高校出身。スポーツ科学部4年。バックスからFL、そしてHOと多くのポジションを経験している器用な選手。昨年も力強いボールキャリーでチームの攻撃力に大きく貢献しました。最近はゴルフにハマっているそうで、オフの日には体を動かすことを名目に、近くの打ちっぱなしに通っているそうです。


◆小野史裕(おの・ふみひろ)

2001(平13)年5月28日生まれ。174センチ。88キロ。本郷高校出身。スポーツ科学部4年。昨年まで副務と選手を兼任していた小野主務。選手としての引退試合では多くのチームメイトから声をかけられ慕われる姿が見られました。甥っ子とよく遊んでいるそうで、優しい一面が垣間見えました。スタッフ陣のリーダーとして迎えるラストイヤー、チームの『荒ぶる』へ向けて主務という立場からチームを支えます。
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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