【ラグビー/NTTリーグワン】「70人」のグラウンドから始まった物語。 立川理道、チーム公式戦通算150キャップ達成へ。<クボタスピアーズ船橋・東京ベイ>

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 立川選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

「僕の公式戦初キャップ(初試合)は、ここでしたからね」

午前中の練習を終え、いつものようにシューズと靴下を脱いでグラウンドに腰を下ろした立川理道は、優しい春の日差しに照らされて緑に輝く芝生を眺めながら、そう呟いた。

2012年9月8日、トップイーストの開幕戦の日野自動車(当時)戦。ジャパンラグビー リーグワンの前身の『ジャパンラグビー トップリーグ』ではない。トップリーグの下部リーグ『トップイーストリーグ』の開幕戦である。場所はクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)の練習場でもあるクボタ船橋グラウンド。試合は観戦無料で、立川いわく「お客さんは70人くらいだったと思います」。天理大学卒業後、日本代表の活動を終えてチームに合流した立川は、その光景を目の当たりにして「関西大学リーグみたいだ」と思ったという。

昨年の3月11日の静岡ブルーレヴズ戦でリーグワン&トップリーグ通算100キャップを達成した立川が、4月27日のスピアーズえどりくフィールドにおける三重ホンダヒート(以下、三重H)戦でS東京ベイ公式戦150キャップを迎える。昨季が『リーグ通算100試合』で今季は『チーム公式戦150試合』。この数字のギャップを生んでいるのが、2012年のトップイースト時代の試合数。S東京ベイがトップリーグに復帰したのは、その翌年の2013年のことだ。

満身創痍で泥だらけだったあのころのように、今季のS東京ベイは勝利の女神との相性が悪く、接戦の末に敗北を喫する試合が続いた。しかし、悔しさで心が疲弊しようが、キャプテンは試合後の記者会見に出席し、メディアをとおして何らかのメッセージを発しなければならない。完膚なきまでに叩きのめされた第11節の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦後には「こういう試合のあとのカンファレンス(記者会見)は難しい」と、その胸中を吐露した。

「ただ、(敗戦という)結果だけで、これまでやってきたことが裏切られたわけではありません。勝敗というものは、戦術や仲間たちとの信頼などを含め、自分たちがやってきたことがブレる要素になってしまいます。プレシーズンを含め、勝つために準備してきたこと、自分たちがやってきたことを信じることが大事だと、ずっとチームで言い続けてきました」

その信じる力が、北の大地でようやく実った。前節、札幌ドームでのコベルコ神戸スティーラーズ戦。ここでS東京ベイは今季ホストゲーム初勝利。チームに笑顔が戻った。

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 根塚洸雅選手(左) 立川選手(中央) 【©ジャパンラグビーリーグワン】

「あの試合では、接戦の中でもみんなが一つになって戦っている実感がありました。苦しい時間帯もありましたが、プレッシャーをうまくコントロールして戦えて、チームの成長を感じました」

苦しみを乗り越えてたどりついた今季初めての『えどりく』。ここまで戦い抜いたオレンジの勇者が、いよいよ聖地に帰還する。

「節目の試合をどこで迎えるかというのは、本当にタイミングなんです。今回、ホストスタジアムの『えどりく』でS東京ベイ公式戦150キャップを迎えられるのは、本当にうれしいです。ずっとホストゲームで勝てなかったので、オレンジアーミー(ファンの愛称)のみなさんにも本当に苦しい時間を過ごさせてしまいました。ここで結果を出せば喜んでもらえると思うので、しっかりと勝って波に乗っていきたいです」

一貫性という部分で三重H戦は「自分たちのパフォーマンスが試される試合になる」、と立川は語る。昨日よりも今日、今日よりも明日。観客70人の船橋グラウンドから始まった、未来を創るための戦いはまだ続く。

(藤本かずまさ)
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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