【ラグビー/NTTリーグワン】“ラストプレー”でハットトリック達成。 背中で示すフッカーが2年連続のトップ4に導く<横浜E vs 相模原DB>

横浜キヤノンイーグルス 中村駿太選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

マッチエピソード&記者会見レポート
横浜E 43-19 相模原DB


横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)と三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)が対戦した“神奈川ダービー”は、ホストチームの横浜Eに軍配が上がった。前半を19対19の同点で終えた試合は、後半に横浜Eが地力を発揮。相模原DBのアタックを無得点に封じ、終わってみれば43対19で横浜Eが大勝を飾った。

後半15分、中村駿太のハットトリック達成に見えたシーンは、TMOの介入によりトライが取り消しとなった。中村としては、“ぬか喜び”の格好となったため、気持ちの切り替えが難しかったはずだ。そのときだった。自身との交替のために準備しているのだろう、タッチライン際に立つ庭井祐輔の姿が中村の視界に入った。

「もう1回だけラインアウトを投げさせてほしい」

中村の願いが届くと、背番号2からのラインアウトボールをコーバス・ファンダイクが高い打点でキャッチ。モールの展開から最後は中村が自身3つ目のトライを奪った。

「庭井さんの姿が見えたことで前向きなマインドでいられました。自分自身も良い試合の終わり方ができたと思います」

ハットトリックを達成した直後のお役御免。庭井との交代でグラウンドを去る中村は、晴れやかな表情をしていた。

勝利すれば2年連続のプレーオフトーナメント進出がグッと近づく大一番は、中村が前半終了間際に同点に追いつくトライを奪取。また後半立ち上がり5分の勝ち越しトライに加え、後半16分にも相模原DBを突き放すトライを取った。3トライはいずれもラインアウトのモールからトライに結びつけた形。「ゲームシチュエーションの中で練習してきた成果」と中村は胸を張った。

チームを勝利に導いた中村に対し、相模原DB戦がけがからの復帰戦だったジェシー・クリエルは、こう言って称賛を惜しまなかった。

「駿太はアンビリーバブルプレーヤー。前線で体を張ってくれるし、その姿勢が今日の試合でも表れていたと思います。口数は少ないですが、背中で行動を示すタイプなので、私も好きな選手です」

相模原DB戦翌日、プレーオフトーナメント進出を争うコベルコ神戸スティーラーズがクボタスピアーズ船橋・東京ベイに敗れたため、横浜Eの4位以内が確定。加入1年目の中村がプレーオフトーナメント進出に多大な貢献を果たした。

(郡司聡)

【©ジャパンラグビーリーグワン】

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督

「勝ち点5を取れたことはポジティブな結果です。前半はレフリングの対応で波に乗れませんでしたが、試合の流れを引き戻すといった勝負のアヤをつかむという意味では、だんだん良くなっていると思います。今日の時点ではまだプレーオフトーナメント進出は決まっていませんが、他チームどうこうではなく、自分たちで決められる状況なので、しっかりと自分たちで決めたいと思います」

――後半はプレーの実行力が高まった印象です。その要因はなんだと思いますか?
「天候も暑く、ディフェンスでも簡単にトライを取られるシーンはありましたが、そこからガタガタと崩れずにチームとしての強みに立ち返ることができたのは、リーダーが力を発揮し、グラウンドで良いマネジメントができている証拠です」

――ジェシー・クリエル選手が復帰しました。どんなプロセスで復帰まで持ち込んだのでしょうか?
「けがで離脱をしてからどのぐらいの期間で復帰するか。三菱重工相模原ダイナボアーズ戦に照準を合わせるというプランを決めていた中で、ジェシー(・クリエル)も予定どおり、照準を合わせてくれました。前半の途中でグラウンドに入ったときは興奮し過ぎていましたが、ここから次第にジェシー(・クリエル)らしいプレーが出てくるのでは(と思っています)。ただ、いきなり先発で出るのはリスクがあるため、まずは控えから復帰させました。私は選手を守る立場にもありますから」

――復帰したジェシー・クリエル選手のパフォーマンスはどう見えましたか?
「復帰戦でしたが、インターナショナルなプレーもありました。次第に彼らしいプレーが増えていくでしょう」

――レギュラーシーズンの終盤にプレーオフトーナメント進出を争える状況になっている要因はどう考えていますか?
「昨季初めてプレーオフトーナメントに進出し、ファイナル(ステージ)のラグビー(戦い)がどんなものかを経験できました。また、出場権を獲得するのも簡単ではないと分かってきたので、チームの雰囲気としては気を抜いていません。それは成長した部分です」

――関係性が長い中村駿太選手の活躍はいかがでしょうか?
「まだまだでしょう。まだまだいけるよな? 駿太のことは18歳から指導してきましたが、日本代表になるとか、まだまだやれるでしょう」

横浜キヤノンイーグルス
中村駿太選手(※梶村祐介キャプテンがけがの治療のため、代理で会見に出席)

「沢木(敬介)監督が話されたとおり、勝ち点5を取れたことはポジティブな結果です。先週から成長した部分はストロングフィニッシュをできたことです。チームとしてしっかりとフィックスできました。ただ、試合の入りやペナルティのマネジメント、またディフェンス面など修正すべき点が出てきたので、次のトヨタヴェルブリッツ戦までに修正していきたいと思います」

――3トライでハットトリック達成となりました。トライのシーンを振り返るといかがでしょうか。
「(沢木監督が「あれは駿太の(3歳の)娘さんでもできます(笑)」と発言したのを受けて)たしかにそうですね(笑)。今週に限らず横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)はモールにこだわって練習をしてきましたし、その成果が出てきたと思います。チームとしての成果が結果につながって良かったです」

――トライ数争いという意味では、東京サントリーサンゴリアスの堀越康介選手とは3トライ差です。
「いま初めて聞きましたが、康介には負けていられません。ターゲットの一つとして頑張りたいです」

【©ジャパンラグビーリーグワン】

三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ

「前半と後半でまったく違う試合になりました。後半だけで12回のペナルティを取られた一方で相手は3回しか取られませんでした。それだけ相手に陣地を取られると、トライにつなげられてしまいます。試合中にペナルティの多さを改善することができませんでした」

――レベルの高いファーストフェーズのアタックを可能にしているのは、ジェームス・グレイソン選手の力が貢献していると見えますが、いかがでしょうか?
「ゲームメークもしてくれる選手ですし、ゴールキックの精度も高いです。後半はあまりチャンスを作れなかったですが、(岩村)昂太とともにチームのアタックをリードしてくれました。まだ若い選手ですが、チームにとても貢献してくれている選手です」

――レギュラーシーズン残り2試合の中で取り組んでいきたいことはなんでしょうか?
「前半のようなパフォーマンスを80分間とおして、どんな相手にも力を発揮できるようにチーム力を上げていきたいと思っています」

――後半に突き放される展開でしたが、その状況をどのように改善しようとしていたのでしょうか?
「横浜Eさんはモールが強いチームですが、モールを食い止めるプランを遂行できませんでした。タイトなモールを止めることがなかなか難しい状況でしたが、反応が遅かったかもしれません。相手が勢いよくモールを組む前に止めるような状況を作らなければなりません」

――ターンオーバーになった状況で最後までアタックをやり切れなかった原因をどう考えていますか?
「原因の一つは相手がボールを持つ機会が増えたことで、それによりターンオーバーできる機会も減ったと思います。ディフェンスでうまく止めることができたときは、効果的なアタックをしかけることはできましたが、モールの回数も多くなったことで試合展開が遅くなり、スペースがなくなった場面もありました」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン

「ヘッドコーチが話したとおり、前半と後半でまったく違った試合の流れになりました。自分たちのスタンダードからすると、勝つ気があるのか、勝つ気持ちがあったのか、一人ひとりが自分にベクトルを向けて振り返っていきたいです。後半の出来だとトップには行けません。何が良くなかったのか。映像で振り返りながら次に生かしていきたいです」

――ハーフタイムにはどんな指示があったのでしょうか?
「良いマインドでプレーすること、前半はやろうとしていることができているという話がありました。僕のほうからはそれぞれが与えられた役割を果たすことができれば、結果はついてくるという発信をしてグラウンドに入りました。実際にはペナルティを多く取られることで難しい試合になりました」

――相手のモールについて感じたことはありますか?
「自分たちとしては、相手のモールに対して、準備してきたことができていなかったかもしれません。準備してきたことに立ち返ってやっていこうとチームに働きかけたいと思います」

――ターンオーバーになった状況で最後までアタックをやり切れなかった原因はなんでしょうか?
「映像を確認してみないと分かりませんが、自分から率先して動くのではなく、誰かが動いて反応するとか、誰かの発信を受けて動くとか、そういったリアクションをする気持ちの選手がいたことで後手に回ったかもしれません」
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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