鎌倉インテルサッカースクール|対談インタビュー【前編】「UNLOCK YOUR BORDERS 世界がひろがる 自分をひろげる ジュニアスクール」

鎌倉インターナショナルFC
チーム・協会

【左から清水敦貴選手兼スクールコーチ、神川明彦Principal、岡田祐介スクール統括】

2021年10月にオープンした「みんなの鳩サブレースタジアム(湘南モノレール「湘南深沢駅」より徒歩1分)」で活動をしている鎌倉インテルサッカースクールは約300名のスクール生が在籍するスクールへと成長した。

UNLOCK YOUR BORDERS
世界がひろがる
自分をひろげる
ジュニアスクール


をコンセプトに活動する鎌倉インテルサッカースクール。

今回は神川明彦Principal(以下、神川)、岡田祐介スクール統括(以下、岡田)、清水敦貴選手兼スクールコーチ(以下、清水)に同スクールが掲げる4つのコンセプトについて話をうかがった。

(文・本多辰成)

クラブ全体で育てる

【©Kazuki Okamoto (ONELIFE)】

――鎌倉インテルのサッカースクールが掲げている4つのコンセプトについてうかがっていきます。まずは、1つ目の「クラブ全体で育てる」について聞かせてください。
神川 「クラブ全体で育てる」というコンセプトについては、スクール生とコーチたちの関係にとどまらず、スクール生がクラブのキーファクターとして輝いてほしいという思いでやっています。それが実現するひとつの場面が毎週末のリーグ戦です。昨年、鎌倉インテルのトップチームは神奈川県1部リーグを戦ったわけですけども、私も時間の都合がつけば鳩スタに足を運んでゲームを見ていました。そこで本当にうれしい光景、「これを待っていた」というような光景と出会ったんです。

どういう光景かというと、鳩スタのホーム側のスタンドの最前列で、鎌倉インテルのスクールに通っている子供たちが保護者の皆さんと一緒に応援しているんです。中にはゲームに集中できてないような子もいるんですけど、みんなが本当にそれぞれの思いを持って保護者と一緒にトップチームを応援してくださっている。その後ろ姿を見たときに、これがまさに作り上げたかったものだと。

【©Kazuki Okamoto (ONELIFE)】

 たとえば、今となりにいる清水敦貴選手がリザーブメンバーとしてベンチに入っていて、試合の後半にコーチから「敦貴、行くぞ」と声がかかったとします。そうすると名前を呼ばれた瞬間、子供たちがもう「敦貴コーチ呼ばれた!」とウキウキしている感じなんです。鳩スタはスタンドの奥のところにウォーミングアップをする場所があるので、呼ばれた選手は我々の前を通ってベンチに行くんですが、その時も「敦貴コーチ、頑張れ!」と声がかかり、ピッチに入ってからもみんなでコーチを応援して、歓声が上がったりため息が生まれたりする。クラブ全体との関わりということに私自身もすごくこだわってやってきたつもりですけど、こういった形で実現している姿を見た時に本当に胸が熱くなりました。
サッカーのみならず、パートナー企業での職場体験であったり、地元のエキスパートの方たちにしていただく講演なども含めて、みんなで子供たちを育てる。育てるというとちょっとおこがましいかもしれませんが、本当にともに学び、ともに歩んでいくという形が実現できているのがこのスクールの素敵なところじゃないかと。そういった点が「クラブ全体で育てる」というコンセプトのひとつの形だと思っています。
――スクールコーチだけでなく、クラブスタッフ、選手も含めてみんなで育てていくということをクラブ全体で意識しているのですね。

岡田 ありがたいことに、意識はしていないと思うんです。というのも、今回コンセプトを掲げるに当たって、神川さんからいろいろなお言葉をいただいたり、僕自身の思いなんかもかなり反映させてもらったんですが、それを「コンセプトだからこうしてください」とお願いしたわけではないんです。それでも吉田健次GMをはじめとしてスタッフたちが自然とスクール生に声かけてくれたり、ご家族に声かけてくれたりといったことが自然と発生していて。「こうしなければいけない」というものではなくて、スタッフたちが思いを自然と出してくれているのが今の状況というか。選手たちも含めてみんなが本当に暖かいので、こういう環境ができているのだと思います。
――清水選手は選手の立場で、スクール生が試合を見に来てくれるような環境をどんなふうに感じていますか?

清水 やっぱり僕らスクールに関わっている選手はより応援されやすい立場に立っているので、僕にとってはすごくパワーになっています。ただ目の前の勝利とかチームの目標以外にも、いつも見に来てくれている子供たちにも何かしら影響を与えてあげたいという思いにもなりますから。試合中も子供たちの声援が聞こえるので、僕たちもすごく頑張れています。

【©マルサ写真】

【©Kazuki Okamoto (ONELIFE)】

――トップチームの試合観戦以外に、クラブのイベントなどにもスクール生がかなり参加されているそうですね。

岡田 イベントに関して言えば、選手との交流ミニゲームみたいことを、たとえば「鳩スタ祭」や「KAMAKURA INTER FESTIVAL」といったイベントが始まる前などにスクール生限定で行ったりしています。そこで選手との交流の機会をつくったり、お父さん、お母さんも巻き込んでパパチーム、ママチームをつくってミニゲームやったりといったこともしてきました。

――そういった機会を設けることで、クラブとスクール生との関係がさらに深まりそうですね。

岡田 子供たちが「コーチみたいになりたい」と成長するのもありますし、逆に選手側も子たちに見られていることで自分のプレーに責任が伴うんです。無責任なプレーができなかったり、ラフなプレーができなかったり、そういったところも含めてコンセプトのひとつである「ともに成長する」というところにも繋がります。子供にとっても選手にとっても刺激的な関係ができるので、すごくいいことだと思っています。

サッカーをきっかけに新たな体験をする

――続いては「サッカーをきっかけに新たな体験をする」というコンセプトについてですが、具体的にはどういった体験をするのですか?

岡田 子供たちの中にはもちろんサッカー選手になりたいという夢を持つ子もいますが、みんながそうではありません。人生の選択肢を広げるためにもさまざまなつながりを持つことが重要だと思いますし、そのためにできるだけ多くの機会を提供しています。もちろんサッカークラブなのでサッカーを通して成長を、というのはあるんですが、同時にサッカーの可能性の広さ、繋がりの大きさというのも強く感じます。サッカーをやっていたから人がこれだけ繋がっているという、そういったサッカーの魅力も子供たちに伝えていきたいという思いもあります。
その中で、昨年夏に始めたのが「お仕事体験」です。私が鳩スタに来る途中に偶然通った場所に、陶芸体験の看板があったことがひとつのきっかけでした。鎌倉には魅力的なことがたくさんあるのに、住んでいる人たちは意外と体験する機会が少ないのではないかと感じたんです。観光客は多くても、地元の人が家族で楽しむことは少ないんじゃないかと。それで、サッカースクールの仲間と一緒に行けば新たな体験ができるかもしれないと考えました。鎌倉インテルのつながりを活かして子供たちにいろいろな体験をしてもらいたいと思い、いくつかの企業に協力をお願いして「お仕事体験」が実現しました。

――クラブのパートナー企業への職業体験という形なんですね。

岡田 はい。鎌倉シャツさんとパン屋さんのPain de NanoshさんとSCENT OF BREADさんに行かせていただきました。他にも鎌倉小川軒さんも調整してくれたんですが、今回はちょっと日程が合わずに行くことができませんでした。鎌倉シャツさんの体験に参加した子供たちは、それを夏休みの自由研究にして賞をもらったりもしたようです。

【鎌倉インターナショナルFC】

――多くのスクール生が参加されたんですか?

岡田 今回は人数を限定していたのでそれほど多くはありませんでしたが、実際にパン屋さんでパンを作ったり窯に入れたりという、家ではできない体験ができたので子供たちはいい経験になったと思います。

清水 僕も子供たちと一緒にパン屋さんに行って体験させてもらったんですが、すごく楽しくて、子供たちにとっては本当に貴重な経験だったと思います。サッカーがきっかけで入った鎌倉インテルのサッカースクールだと思いますが、サッカー以外のこともいろいろと経験できるのは大きな財産になると思います。

岡田 コーチたちにとっても、普段とは違う子供たちの姿を見ることでより愛おしく感じられるようになるんです。そういった経験から子供たちや家族を大切に思えるようになるのは素晴らしいことだと思いますし、スタッフにとってもすごく貴重な経験になっていると思います。

【鎌倉インターナショナルFC】

――「新たな体験」という点では国際交流などもされているそうですが、具体的にはどういったものですか?

岡田 国際交流はもともと「インターナショナル」を掲げるクラブとしての思いから生まれたものです。スクール生たちは日本にいても世界に繋がりを持つことができます。過去には人の繋がりを通じてアメリカ人やベトナム人などの子供たちを招きました。
特に興味深かったのがニューカレドニアとの交流です。たまたま鳩スタにお散歩に来ていた方に声をかけてみたのがきっかけだったんですが、「実はうちの娘がニューカレドニアでサッカーを教えている」ということで。僕らも国際交流をしたいと思っていたので、何かあれば連絡してほしいと伝えて名刺を渡したところ、実際に連絡が来て日本で交流することになりました。子供たちはニューカレドニアについてあまりイメージを持っていなかったと思いますが、実際に会ってみるととても素晴らしい子供たちでした。最初は言葉が通じなくて戸惑うことがありますが、どこの国の子供たちでもサッカーをしていると自然に仲よくなっていきます。

【鎌倉インターナショナルFC】

【©Kotaro Matsuo】

ベトナム人の子供たちのホームステイの企画を行ったときも、同じく最初はなかなか交流が始まりませんでした。でも、自由な時間になると一緒にボールを蹴り始めて、使っている言葉は「OK、OK」くらいなんですが、意外とそれで大丈夫なんだと気づいたり。必要以上に言葉を気にする必要はなくて、ボールと表情だけで十分に伝わることもたくさんあります。こういった経験は子供たちが一歩踏み出す勇気につながると思っています。
――コンセプトの説明としても「一歩踏み出す勇気を伝える」と書かれています。

岡田 最終的にはそこにも繋がってくると思っています。この鎌倉インテルというクラブをつくったのも、鳩スタをつくったのも「ないなら、つくろう」と動き出した四方健太郎オーナーと吉田健次GMがいて、僕自身もそれに影響されたひとりです。知らない世界というのは最初は怖いものですが、実際にやってみたら意外と大丈夫だったということもあります。やってみないとわからないことはたくさんあるので、そういった機会を子供たちに提供する場にしてあげたいと思っています。

――実際にさまざまな体験をしてみて、子供たちに変化を感じますか?

神川 何事も時間がかかるものだと思いますから、直接的な変化というのはすぐにはなかなか見えないですけれど。子供たちが成長したり何か実をつけることを、長い目で見守っていきたいと思っています。

岡田 その瞬間でパッと変わることはないと思うんですが、そういった交流試合で何かひとつのプレーをきっかけに大きく変わる子もけっこういるんです。それを僕らは見逃さないようにしています。もちろん一瞬で変わる魔法というものはないので、時間はかかって当たり前ですし、それを急がないようにしています。
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著者プロフィール

鎌倉インターナショナルFC(通称:鎌倉インテル)は、世界で最もグローバルなスポーツであるサッカーを通じて未来の日本を国際化していくため、2018年に設立された新しいサッカークラブです。現在は神奈川県社会人リーグに所属していますが、プロサッカークラブ(Jリーグ参入)、そして世界を目指して活動をしています。『CLUB WITHOUT BORDERS』をビジョンに掲げ、日本と世界を隔てる国境をはじめ、性別、年齢、分野、そして限界、あらゆる“BORDER”(境界線)をもたないサッカークラブを目指しています。

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