MIXI以前・以降のFC東京の変化 | 分析・考察

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チーム・協会
【これはnoteに投稿されたFootball Monkeys | サッカークラブの経営戦略・時事ネタ考察さんによる記事です。】
どうも、Balaです。
浦和戦の勝利に酔いすぎて、記事投稿がえらく時間かかりました。

今回も、MIXI子会社に関連する分析・考察記事となります。
ずばり「MIXI以前・以降の変化」
とはいえ、まだ子会社化から3年目に入ったばかりなので、そこまで経営ボードも抜本的な施策は打ててはいないかと思いますし、何よりJリーグのデータが2022年までしかない…。
ですが、数値の変化(あるいは不変)から何をしようとしているのか、これまでの課題が何かという分析はできるかと思いますのでその辺をアプローチできればと思います。

今回も結構長くなってしまったので最後の「まとめと考察」でサクッと読めるようにできればと思っています。
遅筆ですが気に入っていただけましたら、フォロー・いいねをいただけますと引き続き次回も頑張る気になりますのでよろしくお願いします。

PL/KPIの年次推移

Jリーグ「2019年度~2022年度 クラブ決算一覧」より 【Football Monkeys | サッカークラブの経営戦略・時事ネタ考察】

2019年度~2022年度 KPI推移 【Football Monkeys | サッカークラブの経営戦略・時事ネタ考察】

コロナの影響をもろに受けている為、一概に年次推移で比較できるものではない。また、PLについて子会社化2年目の2023年の数値があればわかりやすいのだが、Jリーグの発表が2022年までとなっているためご容赦いただきたい。

さて、ここから読み取れることは以下3点。
①赤字でもトップチーム人件費に大きな変化なし
②アカデミー経費が常にJリーグトップかつ大幅増額
③入場者数と売上が比例せず低利益なビジネスモデル
これらをそれぞれ読み解いていきたい。特に3点目についてサポーターは理解する必要があるように考えている。

①赤字でもトップチーム人件費に大きな変化なし

コロナ以前の優勝争いをした2019年度と、2022年度とで売上・トップチーム人件費は大きな変化なしとなっている(売上56.3億→52.7億、人件費27.4億→25.4億)。
売上が下がっているように見えるのは、「その他」収入の変化(9.9億→3.9億)が大きく、これは移籍金が影響しているように見える(ヒョンスの移籍?)。
ただしこの「変化なし」は逆を言うと、2021年までのコロナ影響での赤字を経てもコスト構造を大きくは変えずに事業運営を継続していることを表す。
一方で神戸のように親会社から大幅な投資をするということは、現時点では行っておらず、ビジネスリソース上はあくまで現状維持。各科目ごとの施策面でリソースアロケーションを行っているのだと推察する。

ただし「相対的にみるとリソースはJ1中位」という点からは目を背けてはいけない。

ここ5年で優勝争いをした各年3位以内に入ったチームは川崎、横浜、神戸、広島、名古屋、鹿島、G大阪、そして東京の8チームだ。この中で2年以上コンスタントに3位以内に入っているのは川崎、横浜、神戸、広島の4チームに絞られる。
ここで2022年度の各チームのリソースを見てみたい。

2022年度J1 順位・売上・トップチーム人件費 【Football Monkeys | サッカークラブの経営戦略・時事ネタ考察】

先ほどの4チームのうち広島を除いて、3チームは売上・人件費ともにトップ6以上の水準にある。
売上63億以上、人件費30億以上だ。
広島の型化された組織設計は別の詳しい人から話を聞きたいぐらいだが、それはさておき、東京の売上52.7億、人件費25.4億とは4億円以上の差があり、これをどう埋めるのかが論点となる。
現時点では広島のようにフットボール組織に型ができていない東京にとって、久保建英のようなコストリーズナブルな若手スーパースターが現れるのを待ってこの差を埋めていくしかない。
そしてその取り組みは、実際浦和戦で平均22.6歳で圧勝したり最優秀育成クラブを獲得したりと符号が合う。
この事実は2019年のような優勝争いに対し、再現性・継続性があるとは言えないだろうと思う。つまり、我々サポーターはまず投資できるくらいの収益性を確保できるまで待つ必要がある。
もちろん、荒木や松木が覚醒して、クラモフスキーの采配にドはまりすることによって優勝争いをする可能性がなくはないが、現実的には数年にわたり5位以内には入れたら成功と言えるだろう。

FC東京新体制発表会より抜粋 【Football Monkeys | サッカークラブの経営戦略・時事ネタ考察】

②アカデミー経費が常にJリーグトップかつ2022年大幅増額

Jリーグ「2019年度~2022年度 クラブ決算一覧」より 【Football Monkeys | サッカークラブの経営戦略・時事ネタ考察】

これが東京の間違いなくフットボール面での強みだ。
世界的に見ても人口、環境ともにトップクラスの都市である強みを活かさないわけにはいかない。

https://www.fctokyo.co.jp/news/15815 【Football Monkeys | サッカークラブの経営戦略・時事ネタ考察】

TSF国際大会で日本のチームとして初優勝したりと、結果が出ているアカデミー。
選手のトップチーム排出においても、武藤、橋本拳人、渡辺剛、安部柊斗、久保、カシーフ、野澤大志など代表クラスが増え、今後も俵や土肥、東廉太、佐藤龍之介のような楽しみな逸材が待っている。

MIXI子会社化後、2022年に最も大きな変化があったのは実はこの事業領域だ。
2019年~2021年までは毎年アカデミー収益と経費の粗利で1.5億前後を作ってきたが、2022年は大幅にアカデミー経費を増やし(前年差+2.5億)、粗利▲1億となっている。
具体でどういったコスト増を行ったかの詳細は調べ切れていないが、+2.5億は伊達ではない。

こうして考えたときに、この投資が所謂「安く育てて高く売る」的な投資なのか、「クラブのフットボールを成長させる」ための投資なのかが気になる。
「東京は海外に出やすい」というのはよく聞くフレーズだが、脂がのって帰ってくる頃にはフィーが高くなり、第二の武藤を作ってしまいかねない。
MIXI配下のFC東京フットボールをアカデミー主体で作るのであれば、脂がのった25歳~28歳ごろの価値ある選手をどう維持するのか。
<人件費が安い≒アカデミーで育てる>というロジックでは、間違いなく育った選手も、フィロソフィーも定着しない可能性が高い。売ることを目的にしないためにもやはり収益性の改善・トップチーム人件費向上は避けられない。
その点、新経営ボードがどのように考えていくのかは、ちょうど松木やカシーフ、大志が育つ今年来年少し見えてくるのではと考えている。

③入場者数と売上が比例せず低利益なビジネスモデル

Jリーグ「2019年度~2022年度 クラブ決算一覧」より 【Football Monkeys | サッカークラブの経営戦略・時事ネタ考察】

サッカークラブの収益モデルは何だろうか。
大きなモデルでは以下4つだろう。
①スポンサーからお金をいただく広告媒体事業
②エンタメとしてサポーターからお金をもらうエンタメサービス事業
③放映権や順位相関による配分金(フットボール事業)
④移籍金(フットボール事業)

この収益構造について、FC東京の事業構造はとてもいびつである。
①スポンサー収入が全体収入の約50%を占めるのに対し、②エンタメサービス事業は約25%、③配分金は12%程度である。欧米のスポーツビジネスは②エンタメサービスをグローバル展開にして市場最大化していることや③放映権料でバカ高く稼いでいることを考えると、スポンサーへの依存度合いが相当に高いように感じる。
もはやJリーグクラブの運営は広告事業なんじゃないかと思えてくる。
その割に、広告価値の源泉となるクラブブランドを維持するための必要経費があまりに高すぎる。
原価比率の高いビジネスモデルだが、原価がまったく売り上げ連動しないため、利益率を高めるドライバーが非常に薄い。
加えて、日本のメディア環境が野球一色であることから、国内における広告事業媒体としては相当弱い。
遠藤がリバプールで優勝争いをしていても、『佐藤輝が勝ち越し弾』がYahooニュースのスポーツトップなのだ(4月5日23時時点)。意味不明である。マジでコスパ悪い。
しかし、都内でのスポーツにおけるFC東京の純粋想起を上げようとMIXIは施策面で頑張っているように思う。問題になったエンブレムのリデザインもその一環だろう。
リアル媒体での露出は確実に増えているように感じる。

サポーターは人件費を増やしていい選手や監督を獲得・維持してほしい。
しかし、それが売り上げに直接的には連動しない以上、判断が難しい。だから利益が出る前から人件費に投資しづらい、手堅く経営するならそんな構造だろう。

まとめと考察

もはやMIXI以前以降というよりもサッカークラブ経営の普遍的な課題に直面してしまっているようだが、まとめるとこんな感じだ。
1.コロナ化の影響で大幅赤字を食らっても最低限現状維持しようと経営努力している状況。
2.そもそもJ1中位レベルのリソースで優勝争いをするには若手依存になるため、短期で再現性を担保するのは難しい(ギャンブル要素が大きい)ため、現段階は人や環境を育てるフェーズ。
3.そんな中、アカデミーは日本最高峰のコストで最高の成果を出せている。これを資産としてFC東京を進化させるのであればなおのこと早く活躍した選手を維持、あるいは買い戻せる経営体力をつけたい。
4.一にも二にも経営体力だが、今のビジネスモデルだと本当にしんどい。広告媒体としてクラブ価値をあげるにも外部環境(というかマスメディア)がひどすぎる。そんな中、都内でのFC東京の純粋想起を獲得するためのリアル施策をMIXIは頑張っている。


ところで今回この長い記事書いてる過程で思ったことが1点ある。
我々サポーターはただの消費者なのだろうか?
普通に考えたらディズニーランドを経営しているオリエンタルランドにとってのDオタと関係性は大して変わらないはずだ。なんなら問題起こすし、その責任がなぜかクラブに行くしでコスパ悪い。
では何がサポーターをサポーターたらしめているのか?

それは地域性の誇り(シビックプライド)に起因した、一蓮托生感なはずだ。人生かけてFC東京を応援したい。成長させたい。
そこまで熱い思いを持っているのは一部かもしれないが、それこそがフットボールクラブを応援するってことなのではなかろうか。

としたときに次の図を見てほしい。

【Football Monkeys | サッカークラブの経営戦略・時事ネタ考察】

入場数で2位のクラブが、入場料で4位、物販で8位なのだ。
計算上にはなるが、ならすと1入場につき3500円程度しか毎回使っていない計算になる。当然サポーターとひとくくりにはできず、熱量にグラデーションはある。でも、だ。

このことで既存顧客に向けた施策を打つよりも、明確に新規サポーターを増やすために投資したほうが良いとなるのは当然だ(当然広告事業の意味合いでも必要なのだが)。
一方、クラブはクラブで既存サポに変な論点を作りたくないからなのか、この事実を強くは明示していない。
個人的にはこの点が一番、ガス時代から変えてほしかったことだ。
文化的な許容とか寛容とかではなく、真剣にサポーターとクラブとでビジネス的にもフットボール的にも拡大するためにはどうすればいいのかをコミュニケーションしてほしい。

どうしてもネット上でのコミュニティはエコーチェンバーになりやすいので、サポーター界隈が大きく見える。でも実は、クラブの推進力になるほどの力を持てていないのが今のサポーターの現状だ。
その点、くそほど嫌いな浦和のほうがまっとうだ。
武藤を買い戻したかったし、拳人だって帰ってきてほしいけど、そんな経営体力は今のFC東京にはない。サポーターにもそんな力はない。
だったらクラブはクラファンするなり、10万円の特別プランを1万人に買わせるぐらいのサポーター解像度高い商品を出す努力をしてほしい。

というわけで、長くなってしまったが、
FC東京というバカでかいポテンシャルを持っていても、現状は結構ひどい状況。かつオールドクラシックなステークホルダーに囲まれたこのブランドをMIXIがどうするのか。
そして、我々サポーター(特にコアサポ)はもうちょっとクラブ経営に向き合うことができるのか。
そんなことを考えながら引き続きこんなことを書いていきたいと思う。

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