【BCC/野球指導者講習会レポート】 野口寿浩氏によるキャッチャー講座 ”速く正確に”投げるためのスローイングとは 〜実技④捕手編〜
(文:白石怜平)
4球団を渡り歩き、NPB実働21年の野口寿浩氏
02年オフにトレードで阪神に移籍し、この年の優勝に貢献。当時の星野仙一監督が「野口が影のMVP」と評価するほどの活躍を見せた。08年オフにFA権を行使し、横浜(現:DeNA)に移籍。肩の故障もあり10年限りで現役を引退した。
以降は野球解説者や少年野球の指導者を経て、17年から2年間ヤクルトでバッテリーコーチを務めた。現在は野球解説者として活動している。
構えで大切なのは体の角度とミットの向き
「自分が捕る準備をすることと、投手が投げやすいようにしてあげること。なので、正しく構えることを身につけてほしいです」
ここで学生選手に登場いただき、実演を交えながら解説した。
「構えにおいては、体を反りすぎないことです。踵に体重が乗りすぎると、低めの球や高く抜けた球への反応が遅れてしまいます。重心はつま先にかかって頭が突っ込んで行かないように気をつけてください」
続いてミットの向き。捕りやすい形でいいとした上で、野口氏がベストと考える向きを明かした。
「ミットのウェブがあって、人差し指の付け根が上に向く位置がいいと思います」
ミットを縦気味に構えることによるメリットについて、具体例を用いてさらに加えた。
「例えば、右打者に向けて外れる球はストライクではない球が多いです。そうなると捕ることが優先になります。であれば縦目に捕った方が捕りやすいです」
ブロッキングでは”力を抜くこと”
「右手は絶対にミットの後ろに隠してください。右手が少しでも出ていると、ボールが指に当たって骨折の恐れがあります。指導者の方は怪我防止のためにも必ずお願いします」
「正面から真っ直ぐバウンドして当たってくれればいいですが、少しバウンドが変わって横になった際に体が真っ直ぐ向いていると、ボールは横に逸れてしまいます。これを少し丸くしておくことで前に落とすことができます」
「ベルトのあたりを優しく押してあげてください。脱力して膝から落ちる感覚が分かります。強く押すと体が大きく前に行ってしまうので、当たったボールもどこまで弾むか分からないですし、ランナーも進塁してしまいます」
「ワンバウンドが来た時に力をグッと入れるケースを見ますが、そうなると体が固くなるので、ボールは弾みます。力を入れると体を反ることになるので、ボールが横に弾んでしまいます。なので、息を吐いて体を丸くすることで力を抜く必要があるのです」
ブロッキングの考え方として野口氏は”結果が全て=ランナーが進塁しない”だと語る。その結果を出すためのベストな形をここで説明してくれた。
スローイングの優先順位と速く投げる方法
「①正確に・②速く・③強くです。いくら強い球を投げても投手みたいに振りかぶって投げたらアウトになるチャンスは少ないですし、いくら捕ってから速く投げても逸れたら野手がタッチできないです。
まずは二塁ベースに入った野手がタッチできる位置(※下図参照)に投げること。それを速く・強く投げることです」
実演で見せたのは”動から動”。静から動の場合、動き始めに時間とエネルギーを使う。そのため、動きながらスローイングに入ることで時間は削れると説いた。
そのための練習として、足踏みをしながら捕球に移る方法だった。ここでは下半身の動きから説明した。
「右足を動かすためにはまず左足に体重がかからないと動かないです。座った状態からでも同じです。一度左にかかって動き出した方が右足の動きがスムーズになります」
「前から来たボールを前に投げ返すので、自分も前にステップします。右左足が後ろに入ってしまうと体が揺さぶられてしまいます。なので、投げたい方向に右足は出してください」
「腕を回すということはミットが下を向いてしまいます。そうなると右手は空を向くので、位置によって握り替えがしにくくなります」
「捕ってからミットを縦に回してトップをつくる。そこから右足を踏み出して投げる。これが一番速く投げる方法だと考えます」
正確かつ速く、強く投げる方法を解説した野口氏。約30分の講義のあとは、後半30分でオンラインでの質疑応答の時間が設けられた。一人ひとりの質問にここでも真剣に耳を傾けた。
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