今季限りで引退の北海道・桜井良太 日本バスケ冬の時代をともに支えた盟友 の大阪・竹内譲次とレジェンド対談
【©OSAKA EVESSA ©B.LEAGUE】
竹内 そうそう。
桜井 僕が高校3年生で、ジョージが1年生。僕は当時から、ジョージのことを知っていたよ。
竹内 僕はその試合までは、桜井選手のことを知らなかった。ウインターカップの1回戦で対戦して、初めて知ったんだ。当時は190センチ以上の身長があってアウトサイドをやる選手は、ほぼいなかった。そのサイズでアウトサイドをやって、ハンドリングもめっちゃ良くて「この人、すげえな」ってベンチから見ていたよ。
桜井 あのときは、会話はしなかったよね。
竹内 そうだね。別の学校で、しかも高校3年生と1年生だから、そんな機会もなかったし。
桜井 ジョージと最初に話をしたのは、当時のA代表のヘッドコーチ(HC)がジェリコ(・パブリセヴィッチ)さんに呼ばれたときだね。2006年の世界選手権に向けて、大学生にどういう選手がいるかを見たいということで、全国の大学生から40人を集めた合宿が最初じゃないかな。そこでジョージと話をするようになって、なんかちょっと似ているなと思った。あまりムダな話はしなくて、いろんな思いを内に秘めながら、やっているのかなという感じで。
竹内 お互いに、騒がしいタイプじゃないからね。また桜井選手の同い年って、個性の強い選手が多かったから(笑)。でも練習が始まれば、桜井選手の跳躍力を生かしたプレーは「すげえな」と思いながら見ていた。その一方でバスケを離れると、ほかの個性の強い選手の陰に隠れて目立たない感じだったかな。
桜井 僕もジョージも、ふざけはするんだよね。ただ内弁慶なだけで、ふざけるときは、ふざける(笑)。仲良くなったといえばジェリコHCの日本代表のときに、僕らがすごく怒られたよね。
竹内 あの合宿で僕らは、ポジションを上げられたんだよね。ジェリコHCの指示で桜井選手がポイントガードに挑戦させられたり、僕も普段の4番から3番ポジションをやれみたいな感じで。今までやってこなかったことを指導してもらっていたけど、ふたりともコーチが求めるスタンダードに達していなかった。それで、めちゃくちゃ怒られた。
桜井 最近、宇都宮ブレックスと試合をして、その後にコウスケ(竹内公輔、竹内譲次の双子の兄)と会って彼が「戦友みたいな感じのリョウタが引退するのは、寂しいな」みたいなことを、カッコつけて(笑)言ってきたんだよ。だけど僕は「いや、お前はジェリコさんに怒られていないから。お前は違う」って返した。僕とジョージは、めちゃくちゃ怒られたから。そういう意味でもジョージと僕は、そこでつながる部分があったかな。
竹内 当時は海外勢で僕らよりレベルが上のチームとは、確かに力の差があった。今振り返ると正直、そうだったと感じる。昨年のワールドカップを戦ったメンバーは確固たる目標があり、そこに向かって突き進んだからこそ、いい結果が出たんだと思う。あのころの僕たちと昨年のメンバーとのハングリー精神を比べると、僕たちはどうだったかな……と思うところはある。中国やイランに絶対に勝つんだとか、そういう気持ちの部分で一歩、劣っていたかな。
桜井 今のジョージの話につながるんだけど、ジョージもそうだけど僕も大学生のころに候補から始まって、A代表に入った。今思うと、ジェリコHCの大学生も見てみようという意向があったから、上手く代表に入れたのかなと思うんだよね。たとえば今の選手だったらBリーグのチームに入ってそこで活躍して、代表選手に選ばれるように頑張ろうというハングリー精神を持つ前に、そのまますっと入ってしまったかな。もちろん自分自身も、頑張ってやっていた。だけど僕があの時代の代表や、日本のバスケ界を支えてきたといった自負みたいなのは、ないかもしれないね。
竹内 国内の状況も、Bリーグが始まって一変したよね。外国籍選手もNBAで何年もやっていた選手がどんどん入ってきていたり、質はすごく上がった。日本人も富樫勇樹選手や河村勇輝選手をはじめ、ほかにも才能あふれる素晴らしい選手が増えたしね。
桜井 バスケを取り巻く環境の面でも、過去のJBLやNBLのころから「プロ化に向けてリーグが変化します」と謳いながらも結局、フタを開けたら今までと変わらないことが続いていたんだよね。それがBリーグになって注目度が上がり、選手の待遇も良くなっていった。そこから自然と選手の意識が高くなり、競技力が上がっていく状況ができて、いい選手が育った。それが、ワールドカップで結果が出た要因だと思う。Bリーグが立ち上がったことが、今の日本バスケ界の活況につながっている、すべてなんじゃないかな。
桜井 3/30・31の、僕らにとってはアウェーの大阪でのゲームが最後の対戦になるかな。コートでいっしょにプレーできるタイミングがあるかはわからないけど、たとえベンチにいてもジョージがボールを持ったときだけは、応援してしまいいそうだね(笑)。
竹内 僕は試合中にそれほど、感傷的になるタイプじゃないと思うけど……。わからない、想像できないね。普段通りにやりたいと思っているけど、日曜日の試合が終わったあとはどういう感じになるんだろう……。今想像したら、ちょっと変な感じになった(苦笑)。でももちろん勝負事なので、最後の最後までそこはお互いにこだわると思う。また桜井選手が言ったのと同じだけど、僕もここ数年は桜井選手が試合でボール持ったら、「なにか起こしてくれ」と思っていたから。応援してしまうというような気持ちは、同じだね。
桜井 ジョージには最低でも、僕の年齢まではやってもらいたい。それに余計なことを考えずに、自分のプレーを楽しみながら残りのキャリアを過ごしてほしいなとも思うね。それが周りにとっても、すごく良い影響を与えると思う。ベテランだから周りに対する発言や、対応に気を配ることもある。でも自分がバスケットを楽しんでいる姿が、周りにいい影響を与えていくんだと思う。僕もあまり勝てていないチームにいたから、いいプレーをしても喜んではいけないとか、一時期はそういうマインドに入っていたことがあった。だけど最近は「そうじゃないな」と、すごく感じている。なのでジョージもコートに立つ限りは、楽しんでプレーしてもらいたいね。
竹内 桜井選手と僕が同じコートに立つ可能性があるのは、3月末のゲームが最後になりそうだけど、この2試合も桜井選手らしくプレーしてほしい。お互いに20代のころのようなプレーはできないかもしれないけど、がむしゃらに頑張り、体を張ってプレーする。それが、僕たちの強みだと思っているから。桜井選手も、そういったプレーを必ず見せてくれる。たとえ取れなくてもルーズボールに飛び込んだら、僕は心のなかでめちゃくちゃ拍手をすると思う。桜井選手には試合が終わったときに、悔いのないようにやってほしいね。
桜井 ジョージも今年はそれなりにプレータイムが得られていて動けているし、すごいなと思う。この年齢になると体のコンディションもそうだけど、気持ちをもう1回巻いて「やるぞ」となれるかが、いちんばん大事だと思う。でも負けたくないね、大阪には。タジ(多嶋朝飛)、ショーン(・ロング)、ニシ(西川貴之)とレバンガ北海道で一緒にプレーした選手も多くいるから。でもやっぱり、ジョージがボールを持ったときだけは、ちょっと違う感情で見るかもしれないね。
ふたりが現役選手として対戦するのは、3月30・31日に大阪エヴェッサvsレバンガ北海道がラストマッチ。日本バスケのレジェンドが同じコートに立つ最後の機会に注目したい。
B.LEAGUE ALL-STAR GAME WEEKEND 2024 IN OKINAWAにて競演 【©OSAKA EVESSA】
大阪エヴェッサvsレバンガ北海道
日程:3/30(土)・31(日)
会場:Asueアリーナ大阪
桜井良太選手引退試合
日程:6/8(土)
会場:北海きたえーる(北海道札幌市豊平区豊平5条11丁目1-1)
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