今季限りで引退の北海道・桜井良太 日本バスケ冬の時代をともに支えた盟友 の大阪・竹内譲次とレジェンド対談

大阪エヴェッサ
チーム・協会

【©OSAKA EVESSA ©B.LEAGUE】

48年ぶりに自力でのオリンピック出場権をつかみとった日本代表の躍進、それにも牽引されてのBリーグの活況など、最近は日本バスケットボールに陽が差している。しかしほんの少し前まで代表は世界の壁に跳ね返され続け、国内リーグは分裂状態にある混乱の時期だった。当時はまさに、日本バスケ冬の時代──
そのころに桜井良太(現レバンガ北海道)と竹内譲次(現大阪エヴェッサ)は代表選手として、また国内リーグの看板選手として日本バスケの屋台骨を支え続けた。そんな桜井はシーズン中に41歳を迎えることになる、今季のBリーグ開幕を前に引退を表明。シーズンの閉幕が近付いたタイミングで、ともに長く日本バスケを支えてきた盟友である竹内との最後の対戦を前にクロストークが実現した。
桜井 ジョージと最初に会ったのは、ウインターカップだったよね。

竹内 そうそう。

桜井 僕が高校3年生で、ジョージが1年生。僕は当時から、ジョージのことを知っていたよ。

竹内 僕はその試合までは、桜井選手のことを知らなかった。ウインターカップの1回戦で対戦して、初めて知ったんだ。当時は190センチ以上の身長があってアウトサイドをやる選手は、ほぼいなかった。そのサイズでアウトサイドをやって、ハンドリングもめっちゃ良くて「この人、すげえな」ってベンチから見ていたよ。

桜井 あのときは、会話はしなかったよね。

竹内 そうだね。別の学校で、しかも高校3年生と1年生だから、そんな機会もなかったし。

桜井 ジョージと最初に話をしたのは、当時のA代表のヘッドコーチ(HC)がジェリコ(・パブリセヴィッチ)さんに呼ばれたときだね。2006年の世界選手権に向けて、大学生にどういう選手がいるかを見たいということで、全国の大学生から40人を集めた合宿が最初じゃないかな。そこでジョージと話をするようになって、なんかちょっと似ているなと思った。あまりムダな話はしなくて、いろんな思いを内に秘めながら、やっているのかなという感じで。

竹内 お互いに、騒がしいタイプじゃないからね。また桜井選手の同い年って、個性の強い選手が多かったから(笑)。でも練習が始まれば、桜井選手の跳躍力を生かしたプレーは「すげえな」と思いながら見ていた。その一方でバスケを離れると、ほかの個性の強い選手の陰に隠れて目立たない感じだったかな。

桜井 僕もジョージも、ふざけはするんだよね。ただ内弁慶なだけで、ふざけるときは、ふざける(笑)。仲良くなったといえばジェリコHCの日本代表のときに、僕らがすごく怒られたよね。

竹内 あの合宿で僕らは、ポジションを上げられたんだよね。ジェリコHCの指示で桜井選手がポイントガードに挑戦させられたり、僕も普段の4番から3番ポジションをやれみたいな感じで。今までやってこなかったことを指導してもらっていたけど、ふたりともコーチが求めるスタンダードに達していなかった。それで、めちゃくちゃ怒られた。

桜井 最近、宇都宮ブレックスと試合をして、その後にコウスケ(竹内公輔、竹内譲次の双子の兄)と会って彼が「戦友みたいな感じのリョウタが引退するのは、寂しいな」みたいなことを、カッコつけて(笑)言ってきたんだよ。だけど僕は「いや、お前はジェリコさんに怒られていないから。お前は違う」って返した。僕とジョージは、めちゃくちゃ怒られたから。そういう意味でもジョージと僕は、そこでつながる部分があったかな。

桜井  その後も代表に呼んでもらうようになったけど、なかなか世界では勝てない時代だったね。でも2006年の世界選手権で、1勝できたことはすごく思い出に残っている。だけどその後は強化が上手く進まなかったこともあって、それは歯がゆい思い出のひとつかな。昨年のワールドカップで結果を出してすごく注目されているけど、2006年以降も強化が上手く進んでいれば、もっと早くに今のような状況が有り得たのかなと思ったりもする。その一方でまだ現役でやっていて、バスケが盛り上がっている環境のなかでプレーができていることには、すごく嬉しい思いもあるね。

竹内  当時は海外勢で僕らよりレベルが上のチームとは、確かに力の差があった。今振り返ると正直、そうだったと感じる。昨年のワールドカップを戦ったメンバーは確固たる目標があり、そこに向かって突き進んだからこそ、いい結果が出たんだと思う。あのころの僕たちと昨年のメンバーとのハングリー精神を比べると、僕たちはどうだったかな……と思うところはある。中国やイランに絶対に勝つんだとか、そういう気持ちの部分で一歩、劣っていたかな。

桜井  今のジョージの話につながるんだけど、ジョージもそうだけど僕も大学生のころに候補から始まって、A代表に入った。今思うと、ジェリコHCの大学生も見てみようという意向があったから、上手く代表に入れたのかなと思うんだよね。たとえば今の選手だったらBリーグのチームに入ってそこで活躍して、代表選手に選ばれるように頑張ろうというハングリー精神を持つ前に、そのまますっと入ってしまったかな。もちろん自分自身も、頑張ってやっていた。だけど僕があの時代の代表や、日本のバスケ界を支えてきたといった自負みたいなのは、ないかもしれないね。

竹内  国内の状況も、Bリーグが始まって一変したよね。外国籍選手もNBAで何年もやっていた選手がどんどん入ってきていたり、質はすごく上がった。日本人も富樫勇樹選手や河村勇輝選手をはじめ、ほかにも才能あふれる素晴らしい選手が増えたしね。

桜井  バスケを取り巻く環境の面でも、過去のJBLやNBLのころから「プロ化に向けてリーグが変化します」と謳いながらも結局、フタを開けたら今までと変わらないことが続いていたんだよね。それがBリーグになって注目度が上がり、選手の待遇も良くなっていった。そこから自然と選手の意識が高くなり、競技力が上がっていく状況ができて、いい選手が育った。それが、ワールドカップで結果が出た要因だと思う。Bリーグが立ち上がったことが、今の日本バスケ界の活況につながっている、すべてなんじゃないかな。


竹内  (桜井の引退の報せを聞いて)うーん、来るときが来たなというか……。桜井選手は僕の2歳上だけど、生意気ながらずっと同い年のように絡ませてもらっていたから。2004年から代表でいっしょにやってきて、ちょうど20年か。それほど長いあいだいっしょにやってきた選手が辞めるのは、やっぱり思うところがある。これはいずれ、だれにも来ることだけど、本当にそのときが来てしまったんだなって……。もちろん寂しい気持ちにはなったけど、桜井選手のヒザや足首のケガの状態を知っていたので、よくここまで走り続けられたなと。悲しい気持ちより「お疲れさん」だとか、そういう尊敬の気持ちのほうが上回ったね。

桜井  3/30・31の、僕らにとってはアウェーの大阪でのゲームが最後の対戦になるかな。コートでいっしょにプレーできるタイミングがあるかはわからないけど、たとえベンチにいてもジョージがボールを持ったときだけは、応援してしまいいそうだね(笑)。

竹内  僕は試合中にそれほど、感傷的になるタイプじゃないと思うけど……。わからない、想像できないね。普段通りにやりたいと思っているけど、日曜日の試合が終わったあとはどういう感じになるんだろう……。今想像したら、ちょっと変な感じになった(苦笑)。でももちろん勝負事なので、最後の最後までそこはお互いにこだわると思う。また桜井選手が言ったのと同じだけど、僕もここ数年は桜井選手が試合でボール持ったら、「なにか起こしてくれ」と思っていたから。応援してしまうというような気持ちは、同じだね。

桜井  ジョージには最低でも、僕の年齢まではやってもらいたい。それに余計なことを考えずに、自分のプレーを楽しみながら残りのキャリアを過ごしてほしいなとも思うね。それが周りにとっても、すごく良い影響を与えると思う。ベテランだから周りに対する発言や、対応に気を配ることもある。でも自分がバスケットを楽しんでいる姿が、周りにいい影響を与えていくんだと思う。僕もあまり勝てていないチームにいたから、いいプレーをしても喜んではいけないとか、一時期はそういうマインドに入っていたことがあった。だけど最近は「そうじゃないな」と、すごく感じている。なのでジョージもコートに立つ限りは、楽しんでプレーしてもらいたいね。

竹内  桜井選手と僕が同じコートに立つ可能性があるのは、3月末のゲームが最後になりそうだけど、この2試合も桜井選手らしくプレーしてほしい。お互いに20代のころのようなプレーはできないかもしれないけど、がむしゃらに頑張り、体を張ってプレーする。それが、僕たちの強みだと思っているから。桜井選手も、そういったプレーを必ず見せてくれる。たとえ取れなくてもルーズボールに飛び込んだら、僕は心のなかでめちゃくちゃ拍手をすると思う。桜井選手には試合が終わったときに、悔いのないようにやってほしいね。

桜井 ジョージも今年はそれなりにプレータイムが得られていて動けているし、すごいなと思う。この年齢になると体のコンディションもそうだけど、気持ちをもう1回巻いて「やるぞ」となれるかが、いちんばん大事だと思う。でも負けたくないね、大阪には。タジ(多嶋朝飛)、ショーン(・ロング)、ニシ(西川貴之)とレバンガ北海道で一緒にプレーした選手も多くいるから。でもやっぱり、ジョージがボールを持ったときだけは、ちょっと違う感情で見るかもしれないね。

ふたりが現役選手として対戦するのは、3月30・31日に大阪エヴェッサvsレバンガ北海道がラストマッチ。日本バスケのレジェンドが同じコートに立つ最後の機会に注目したい。


B.LEAGUE ALL-STAR GAME WEEKEND 2024 IN OKINAWAにて競演 【©OSAKA EVESSA】

竹内 譲次選手と桜井 良太選手のラストマッチ
大阪エヴェッサvsレバンガ北海道
日程:3/30(土)・31(日)
会場:Asueアリーナ大阪

桜井良太選手引退試合
日程:6/8(土)
会場:北海きたえーる(北海道札幌市豊平区豊平5条11丁目1-1)
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著者プロフィール

2005年にクラブ創立。七福神のお一人で商売繁盛の神様である「戎様」を大阪では親しみを込めて「えべっさん」とお呼びするところから、 人情・笑い・商売の街大阪を活気づける存在であることを願い「大阪エヴェッサ」と命名。 同年にスタートしたbjリーグで開幕から3連覇を成し遂げる。 2016年9月に開幕した男子バスケットボールの最高峰・Bリーグでは、ホームタウンを大阪市とする大阪唯一のクラブとしてB1に参戦。

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