【ラグビー/NTTリーグワン】『13,428』の衝撃。 試合には敗れても、三重Hが見せた“挑戦の心”<三重H vs 横浜E>

三重ホンダヒート 秋山陽路選手(中央) 【©ジャパンラグビーリーグワン】

マッチエピソード&記者会見レポート
三重H 21–50 横浜E


今季最初の“金曜ナイター”は、ディビジョン1の最下位にあえぐ三重ホンダヒート(以下、三重H)が、上位4チームによるプレーオフトーナメント進出へ突き進む横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)を、東京・秩父宮ラグビー場に迎えての一戦。会場には三重Hのホストゲームとしては過去最多となる13,428人が詰めかけ、まだ寒気の残る“夜の秩父宮”を熱気で包んだ。試合は横浜Eが前半だけで4トライ(後半3トライ)の猛攻を浴びせて50対21で勝利し、ボーナスポイントもあわせて勝ち点5を手にした。

今季からD1に昇格して、7試合でいまだ勝ち星なし。それどころか、勝ち点もゼロ。負けグセのついたチーム、あきらめの早いファン――。そういう雰囲気が漂い始めてもおかしくないようなリーグ戦前半最後の試合は、ピッチの上の結果とは、まったく様相の異なる数字を叩き出した。13,428人――。これは衝撃と言っていい。

この試合に出場した三重Hのベテラン、秋山陽路が言った。

「だんだん人が増えてくるスタンドを見て、感慨深いというか、会社からの期待と僕らの意地じゃないですけど、そういうのをすごく感じることができたゲームだったかなと思います。僕自身、昨季、一昨季は試合に出る機会が少なかったんですけど、『10年間続けて良かったなあ』というのが本音です。今季からD1に上がって、会社が後押ししてくれるのを強く感じています。プレッシャーもありますけど、やりがい、ありますね」

“ホンダ”にとって、挑戦し続けること、それはカルチャーであり、社是であり、ルーツだ。ジャパンラグビー トップリーグのころから数えて、昇格すること5回、降格すること4回。何度打ちのめされても、立ち上がり、一歩ずつ着実に成長を続けてきた。

「私の最大の光栄は、一度も失敗しないことではなく、倒れるごとに起きるところにある」(本田宗一郎)

この日の秩父宮のライトに照らされたのは、三重Hの組織としての底力、多くのファンの期待、そして“ホンダのスピリット”を体現する選手たちだった。

【©ジャパンラグビーリーグワン】

(平野有希/Rugby Cafe)

【©ジャパンラグビーリーグワン】

三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ

「見てのとおり、残念な結果だ。前半は相手陣22mの中に深く入ったときに三重ホンダヒート(以下、三重H)は得点できず、横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)はしっかり得点を取って帰っていった。そういうところが大きな違いになってしまった。後半はかなりの部分で改善できたし、チームとしてやりたいことができた部分もあった」

――アーリーエントリーの北條拓郎選手を起用した理由と、今日の試合の評価は?
「チームに加入してまだ3週間ほどだが、本当にいいものを持っている。練習中に見せる自信やスキルにもそれが表れている。今日の試合でもいいパフォーマンスを発揮してくれた。ボールの動かし方や相手の脅威になることができていて、チームに推進力を与えてくれた。彼の次のチャレンジとしては、今日のパフォーマンスを上回るパフォーマンスを出していくことだ」

――なかなか先制点を取れない。勝つためにどのような戦い方が必要だと思うか?
「今日は戦術を変えた部分がある。いかにして試合のペースをつかむかを重要視した。横浜Eに先制されてしまったが、そのあとは踏ん張って、チャンスを多く作れていた。(試合をとおしての)ポゼッション、テリトリー、ラインブレイク、いずれもわれわれが上回っているだけに、フィジカルの部分で足りなかったのが反省点だ」

三重ホンダヒート
小林亮太ゲームキャプテン

「平日のナイトゲームに応援に駆け付けてくださった会社関係者、また“ヒートファン”のみなさまに感謝申し上げます。前節から、規律の部分をチームとして改善しようと取り組んできましたが、今日の試合でも規律のところが課題として残ってしまって、(自分たちのペースで)試合を進めるのが難しかったです。ただ、ポジティブな部分もあったことは事実ですので、次の試合に向けて、積み上げられるように、また、規律の部分は改善できるようにやっていきたいと思います」

――秩父宮ラグビー場でのホストゲームに、たくさんの観客が詰めかけた。スタンドの光景を見てどう感じたか?
「三重Hに所属して10年になりますが、秩父宮でホストゲームを行うのは初めてで、1万3千人を超える観客の中でプレーするというのも、自分自身はこれまでに経験したことがありませんでしたが、ファンの声援に背中を押してもらって、力になりました。またこのような環境で試合をしたいと思いますし、次は勝って、大勢のファンと一緒に喜びを分かち合いたいと思います」

【©ジャパンラグビーリーグワン】

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督

「先週、不甲斐ない試合をして、失くした自信は自分たちで取り戻さなければいけないと思って臨んだ試合だった。前半はその気持ちが出ていたが、ウチに足りないところは、キツくなってきたときにソフトになる(弱さが出る)ところ。今日も簡単なトライを取られるし、キックチェイスをサボる選手もいれば、タックルしてから起き上がるまでが遅い選手もいる。埼玉パナソニックワイルドナイツなど、強いチームにはそういう選手が絶対的に少ない。自分たちが望んでいるレベルにいくためには、そういう選手が、根っこの部分で増えてこないといけない」

――試合直後に選手たちにはどのようなことを伝えたのか?
「率直な感想をフィードバックしただけ。良かったことは良かったと伝えるが、なんというか、点差やトライ数を見て喜んでいるようでは……。もちろん試合に勝ったことは喜ばしいことだが、この内容で喜んでいる選手が多いと、このチームの成長は止まると思う」

――このあと、上位を争うチームとの試合が続くが、そこに向けてどう考えているか?
「現状では、まだ上位チームとの力の差はあると思う。ただ、何かでスイッチが入ると、チームは劇的に変わる瞬間がある。コーチを長年やっていると、そういうことがある。それを今季、つかみたい」

――「劇的に変わる瞬間」、というのをもう少し具体的に教えてください。
「いろいろな要素があるが、どこかがバチッとかみ合うと、一気に流れが変わるのがラグビーだ。いまの横浜Eは、次のレベルにいかなければいけない。結果が出なかったときは全部私の責任だが、(選手たちには)勝ち負けを恐れないで、しっかりプランを持って、一戦一戦成長できるようにチャレンジしてもらいたい」

横浜キヤノンイーグルス
梶村祐介キャプテン

「今日は自分たちのラグビーを取り戻そうという話をして、試合に臨みました。前半は、完璧ではありませんが、自分たちが目指すラグビーを少なからずできたかなと感じました。でも、そのパフォーマンスを80分間、一貫性を持って出し続けられないのが、いまのチームの課題。後半、キツくなってきたときに、タフな選択ができる選手が増えてくるように、自分としてはパフォーマンスでリードしていきたいと思います」

――次戦に向けて、どういう点を修正したいか?
「すべては準備だと思っているので、トレーニングの質をどれだけ上げられるか。一つひとつの練習に対して、選手がどれだけ準備してグラウンドに入っていけるか、そこのクオリティーの高い選手が増えれば、チームの力が上がってくると思っています」
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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