【ホープフルS】史上初の牝馬Vレガレイラ、来春皐月賞でも快挙なるか一躍有力候補に

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ルメール騎手騎乗の1番人気レガレイラが牝馬では史上初めてとなるホープフルステークス優勝 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 JRAの1年の最後を締めくくる2歳限定のGIレース、第40回ホープフルステークスが12月28日、中山競馬場2000m芝で行われ、クリストフ・ルメール騎手騎乗の1番人気レガレイラ(牝2=美浦・木村厩舎、父スワーヴリチャード)が優勝。後方から大外一気の末脚で2歳中距離チャンピオンの座に就いた。良馬場の勝ちタイムは2分00秒2。

 レガレイラは今回の勝利でJRA通算3戦2勝、重賞は初勝利。ルメール騎手はホープフルステークスがGIレースとなってからは初勝利となり、これがJRA・GI通算50勝目。管理する木村哲也調教師は同レース初勝利となった。

 なお、3/4馬身差の2着にはバウルジャン・ムルザバエフ騎手騎乗の2番人気シンエンペラー(牡2=栗東・矢作厩舎)、さらに2馬身差の3着には菅原明良騎手騎乗の13番人気サンライズジパング(牡2=栗東・音無厩舎)が入った。

ルメール騎手&木村厩舎から新星登場

後方からの競馬となったものの最後の直線、レガレイラは大外から一気の伸び脚を見せた 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 2023年のJRA競馬を締めくくったのは、イクイノックスで世界のホースマンにも衝撃を与えたルメール騎手と木村哲也厩舎コンビが送りだす新星、牝馬のレガレイラだった。直線早めに先頭に躍り出た凱旋門賞馬の弟・シンエンペラーがそのまま押し切ろうかというゴール前、大外から矢のように飛んできた。

「直線に向くまでは道中スムーズでしたけど、前の馬がフラフラしていて進路を決められませんでした。でも、大外に出してからはすぐに良い反応をしてギアアップしてくれた。すごくビックリしましたね。良い脚でした」

 後方3番手から牡馬をまとめてナデ斬り。このレースで牝馬が優勝するのはホープフルステークスがGIレースとなった2017年以降ではもちろん初めてのことであり、前身のラジオたんぱ杯3歳ステークス時代を含めても、牝馬限定だった1990年以前を除けば史上初の快挙だ。2歳にして歴史に名を刻んだ1頭となったレガレイラではあるが、その将来性についてもルメール騎手は太鼓判を押している。

「(木村調教師とは)『来年が楽しみだね』と話をしました。やっぱりこの馬の伸びしろはまだまだあると思います。距離も持つし、能力もある。この冬の間に体が大きくなったらすごく良い馬になります」

 一方、今回の後方一気は「プランではなかったです」と鞍上が振り返ったように、スタートではダッシュがつかずに出遅れ。ゲートで待たされたがことが一つの原因ではあったわけだが、木村調教師によれば「普段からの彼女自身の所作としてドッシリ構えることがまだできていない」ことからスタートに関してはレース前から心配していたという。ただ、いったん走り出してしまえば「非常に良いフットワークですし真面目。集中力高く走ってくれる」とトレーナー。ルメール騎手も道中の走りに関しては「冷静に走ってくれたし落ち着いていました」と話しており、レガレイラの競馬に対する真面目さ、集中力の高さが、名手も「ビックリした」というギアアップと末脚の威力を引き出したのだろう

オーナーサイドは皐月賞挑戦に前向き

来春の目標レースについてオーナーサイドは皐月賞挑戦への前向きなコメントを出している 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 ゲートという課題は残しているものの、新たなクラシック候補性として世代のトップに躍り出たレガレイラ。しかも、ホープフルステークスを勝った初めての牝馬というだけに、来春はどのようなローテーションを歩むのかは非常に気になるところでもある。

「明け3歳になってどこから使い出すかは未知数です。ただ、今日のレースを使ったことで疲労回復に関してはかなり尾を引くと思っているので、それは慎重に精査しなければいけない。それこそ牝馬で初めてホープフルステークスを勝たせていただきましたが、3歳になっても『こうあるものだ』というローテーションで行くのはそんなにしない方がいいのではないかなと思っています。まずはしっかり疲れを取ることが大事だと思っています」

 木村調教師が語った来春の展望はあくまでレガレイラの体調を最優先したローテを組むということ……なのだが、「『こうあるものだ』というローテーションではない方がいい」、というコメントだけに着目するとどうしても、阪神ジュベナイルフィリーズには目もくれずホープフルステークスに向かったように、来年の春クラシックでも阪神マイルの桜花賞をパスして今回と同じ中山2000m芝の皐月賞、そして日本ダービーにチャレンジするのでは――そんな期待感も高まってくる。

 それを裏付けるように同馬のオーナーである(有)サンデーレーシングの吉田俊介代表が皐月賞参戦へ前向きなコメントを出したのは各種報道の通りだ。

2024年春のクラシックは一層興味深いものになった

レガレイラの登場で2024年春クラシックが一段と楽しみになってきた 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 一方でルメール騎手は「強い馬がいたら牝馬のレースの方がいいと思います。でもそれは僕じゃなくて、関係者が決めること。同じメンバーだったら皐月賞、ダービーでもと思いますが、新しい馬がこれから出てくると思うからまだ分からないですね」と慎重姿勢ではあるのだが、このあたりについては今後、サンデーレーシング、調教師、ジョッキーらの間でどのような結論となるのか、そのローテーションも含めて楽しみに待ちたい。

 レガレイラは来年の春も中山2000mに降り立ち再び牡馬を相手に躍動するのか、それとも後塵を拝したシンエンペラーら牡馬勢が意地を見せるのか、あるいはルメール騎手が言うように「新しい馬」がこれから続々と登場するのか。いずれにしても、牡馬クラシックでも勝負になるポテンシャルを持った牝馬が登場したことで2024年の春クラシックは一層興味深いものになった。もしレガレイラが皐月賞を勝てば、牝馬の優勝は1947年トキツカゼ、1948年ヒデヒカリ以来、史上3頭目の快挙となる。(取材:森永淳洋)
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