【ラグビー/NTTリーグワン】大勝の背景にあった確かなチームの文化。 不測の事態にも動じないS愛知の強さ<S愛知 vs RH大阪>
豊田自動織機シャトルズ愛知 藤原恵太選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】
S愛知 71–12 RH大阪
クリスマス前日のパロマ瑞穂ラグビー場では、豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)が71対12でレッドハリケーンズ大阪を破り、開幕3連勝を達成。11トライを奪う猛攻を見せ、勝ち点5を得た。
前節は前半に相手のプレッシャーを受け、リズムをつかめなかった。しかし、今節は開始直後からフィジカルバトルやセットピースで優位に立ち、試合をコントロールできた。順調に得点を重ねると、前半で35対5と大きくリードした。
ただ、思わぬ落とし穴もあった。ウイングで先発した齊藤大朗がけがにより交替を余儀なくされると、代わりに入ったヴィリアミ・スワワも後半にアクシデントで交替。控えにはバックスの選手がスクラムハーフの末拓実しか残っておらず、フィールド上にもウイングでプレーできる選手がいなかった。
そこで抜てきされたのは、先発でスクラムハーフを務めていた藤原恵太。「今日は控えにバックスの選手が二人しかいなかったので、もしかしたら誰かが本職じゃないポジションで出場するかもしれないという話を試合前に冗談っぽく話していた。3シーズンくらい前にこのような状況でウイングをやったことがあったけど、10分くらいのプレーだった」。残り時間はおよそ30分。そのとき47対5とリードしていたが、慌ただしい時間帯が続くことが予想された。
しかし、本人のプレーは迷いを感じさせなかった。フルバックの鈴木匠らと頻繫に会話を交わしながら、ウイングとして求められる役割を的確にこなした。この奮闘ぶりをラグビーの神様も見ていたのか、後半32分にはフレディー・バーンズの超が付くほど正確なキックパスを受けると、そのままトライを奪った。
徳野洋一ヘッドコーチは、各選手がチームメートの役割を理解し、不測の事態にも適応する力を「チームの文化」だと表現した。これまで培ってきたチームの信頼関係が見えた30分間だったように思う。今季のS愛知の強さは、今節の藤原を見れば十分に理解できる。
(齋藤弦)
【©ジャパンラグビーリーグワン】
徳野洋一ヘッドコーチ
「素晴らしいこのクリスマスの日に、たくさんの観客の方々、レッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)の方々、 運営に携わっていただいている方々に、この場をお借りしてお礼申し上げたいと思います。ありがとうございます。ゲームとしましては、前半から80分とおして、われわれがしっかりコントロールすることができたということで、本当に素晴らしい1日になったと思っています。ありがとうございました」
――今日の勝利の要因は何でしょうか?
「セットピースで優位に立てたというところと、RH大阪さんの強みであるブレイクダウンでも、われわれが優位に立てたというところが、まず大きかったと思います。もう一つは、キャプテン(ジェームズ・ガスケル)が申し上げたとおり、われわれがやるべきこと、ゲームプランにしっかり則ってプレーし続けることができたからだと思います」
――オフロードパスの数が前の試合より増えた印象を受けました。
「RH大阪さんに対して準備したというよりは、われわれは毎試合毎試合、自分たちが成長していくポイントを見つけながら成長していく中で、今週は特にボールをしっかりつないで運んでいくという部分において、アタックはレベルアップを求めてやってきました。その結果、先週よりも今週のほうがボールを少しつなげる回数が増えたのかなと思っています」
――リザーブにバックスの選手を二人しか登録しませんでした。
「RH大阪さんもフォワードが強みということもありますので、われわれとしてもフォワードに全勢力を投じて、フォワード勝負では優位に立って、常にエネルギーのある選手を入れるような、そういうゲームプランで臨みました」
――アクシデントもあり、スクラムハーフの藤原恵太選手がウイングとしてプレーしました。
「チームとして、イレギュラーの形に対してアジャストしていくというところが、われわれのチーム文化の中にありますので、いかなる状況でも対応していけるという自信はあったということと、その中でも特に藤原恵太については、前半からスクラムハーフ、そしてウイングとして、キックパスを受けてトライまでしたということで、非常にチーム文化を体現してくれる仕事ぶりだったかなと思っています。本当に彼を評価したいと思います」
豊田自動織機シャトルズ愛知
ジェームズ・ガスケル共同キャプテン
「徳野洋一ヘッドコーチがおっしゃったとおり、クリスマスの日に、多くの方々に試合に来ていただいたことに感謝申し上げます。私たちのパフォーマンスのレベルが上がれば、もっと多くの人たちが試合へ足を運んでくださると思うので、パフォーマンスの質も上げていければと考えています。試合については、自分たちが用意してきたゲームプランに則ってプレーを続けるというところ、相手に合わせるのではなく、自分たちのレベルでプレーをするというところを意識しました。RH大阪さんに関しては、ブレイクダウンのところでプレッシャーを掛けてくることが分かっていたので、そこをしっかりコントロールできたことも、このゲームの勝利につながったのかなと感じます。最後に、3試合連続で、良い形でここまで勝利を重ねていることに対してとてもうれしく思います。ファンのみなさま、メリークリスマス」
――3連勝で首位にも立ちました。次戦に向けてどんな準備をしていきますか?
「3試合を終えた中で、しっかりとこの3試合を自分たちでレビューして、もっと自分たちが良くなれると思っているので、そこはまずレビューのところをやっていきたいと思います。そこで分かったところを、今後チームに対してアジャストしていけるようにすることが一番大切なのかなと考えています。もちろん、浦安D-Rocksさんとの試合は、とてもタフなゲームになるとも思いますし、この3試合で勝利を重ねて自信を付けてきたところもあると思うので、自分たちのパフォーマンスで試合ができるようにやっていきたいと考えています」
【©ジャパンラグビーリーグワン】
マット・コベイン ヘッドコーチ
「スコアがすべてを語っていると思います。今回のパフォーマンスが良くなく、逆に豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)さんのほうが精度高く、フィジカルにプレーをしたと思います。それに対して、しっかり僕らが対応できなかったと思っています。ディビジョン2に上がってきて、強いチームと対戦をするとなったときに、やっぱり僕らはもっと良くしていかないといけないですし、この学びというのをしっかり生かさないといけないと思います。開幕から2試合、勝利することはできましたが、それも本当に負けてもおかしくないようなものだったので、 しっかりとこの敗戦から学んで、チームとして次に生かしていかないといけないという話をしていました」
――後半開始から4人の選手入替を行いました。
「理由としては、フロントローのところで、もっとできるのではないかというので、3枚を代えました。もう一人のところはけがの可能性があったので、早めに交代をしました。 実際、いまのチームの現実として、かなりけが人が多い状態で、正直に言うと、もし来週試合があったらメンバーをそろえることができないぐらいの現実があります。言い訳にするわけではないですが、来週からは休みの週になるので、けが人が復帰して、次回はいいパフォーマンスができたらと思っています」
――どんなところを学びとして生かしていきたいですか?
「自分たちで自分たちの首を絞めてしまっているところがあります。規律であったり、一人ひとりの役割を遂行できなかったりしているので、そこを良くしていかないといけないです。あと、一つひとつのプレーの中での集中力が欠けてしまっています。一瞬の勝負のところで、集中力が欠けてしまうというのがよくありました。そこでの役割というのは、一人がやって、また次の人がやる。そうやってつなげていかないといけないと思います」
レッドハリケーンズ大阪
射場大輔バイスキャプテン
「今日のS愛知戦に向けて、S愛知はフィジカルの強いチームで、われわれもそのフィジカルを受けずに向かって行こうというところを話しました。しかし、ゲームの入りからセットピースや、接点のところでS愛知さんにやられてしまって、一方的なゲーム展開になってしまったと感じます。ロッカーでも話しましたけど、これがいまのチームの現実ですし、下を向いている暇はないので、今日から切り替えて、次からもタフなゲームですけど、より良い試合ができるように、 改善していきたいなと思います」
――次節はどんな試合をしていきたいですか?
「やっぱりラグビーにおいて接点であったり、セットピースであったりというところで待ってしまうと、今日のように崩れてしまいます。 まずはやっぱり一人ひとりが接点で負けないように、体は小さいですけど、タックルで間に入って相手を止めるところは、この2週間空くところでまだまだ改善できる部分だと思うので、そういったところを準備して次のホストゲームで勝てるようにしていきたいと思います」
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