【ラグビー/NTTリーグワン】一日千秋の思いで待ったホスト開幕戦。 山路健太にとっては悔しくも実りあるゲームに<三重H vs S東京ベイ>

三重ホンダヒート 山路選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

マッチエピソード&記者会見レポート
三重H 0–75 S東京ベイ


ディビジョン2から昇格したばかりの三重ホンダヒート(以下、三重H)が、ホスト初戦で迎えたのは昨季の王者であるクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)。会場の三重交通G スポーツの杜 鈴鹿に、ジャパンラグビー リーグワンになって最多となる3,351人のファンが詰めかけた一戦は、王者を相手に一矢を報いることさえできず、厳しいレッスンを受ける形となった。

三重Hのバックス最年長プレーヤーとしてチームの屋台骨を支えるスクラムハーフの山路健太は、「正直、(S東京ベイは)フィジカルのところは一枚も二枚も上。個々のフィジカルが強かった」と昨シーズンまで戦っていたD2との違いを語った。それでも「僕らもしっかりとフィジカルレベルを上げていけば、もっといい試合ができるんじゃないかと思っている」と、絶望的な差は感じなかったという。

無得点に終わってしまったが、そう話した根拠はある。前半19分、右サイドのラックから山路が左へ素早く展開すると、細かくパスをつないで最後は主将の古田凌がトライ。その直前のプレーでスローフォワードがあったとしてTMOの末にトライは取り消しとなってしまったが、自分たちの狙いどおりの攻撃の形を作ることができた。

もう一つ良かったこととしては、開幕戦を落としていたS東京ベイが油断の欠片もなく襲いかかってきたことが挙げられる。本気の王者とぶつかり合えたことで、なおさら勉強になった。

もちろん修正すべき課題はたくさん出た。ただ、それは昇格組としては当然のこと。大事なのは次の試合、その次の試合としっかり成長していくことである。ベテランスクラムハーフは勝敗に一喜一憂せず前を向いた。

「選手同士のコミュニケーションがすごく大事だと思う。パス一つにしても、そこのコミュニケーションがうまくいけば、もっときれいにパスがつながってトライまで行くと思う。僕たちはテンポのいいエキサイティングなラグビーがしたいので、そこを継続していきたいですね」

地元鈴鹿市出身で在籍13年目となる山路が、一日千秋の思いで待ったリーグワンでのホスト開幕戦は、悔しい思いもしたが実りのある試合となった。

(斎藤孝一)

【©ジャパンラグビーリーグワン】

三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ

「クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)さんが前年度のチャンピオンというのは戦う前から分かっていたことですし、今日戦って彼らを本当に知ったというか、現実に直面することになりました。序盤は良いスタートを切れて、良い形でプレーできた場面もあったんですけど、そのあと本来であればボールを保持してプレッシャーを掛け続けなければいけないところで、ミスが起こってしまったり、相手にボールを返してしまったりターンオーバーをしてしまって、最終的に得点につなげることができなかったというのは、非常に残念だと思っています。

そのほか、ラインアウトが機能していなかったり、タックルの基本的なミスがあったりしたところがわれわれにとって痛手になりました。本当にご覧になったとおりですね。本当にたくさんの課題がわれわれにはあると思います。でもこれを解決するために、ハードワークしてチーム一丸となって乗り越えていくしかないと思っています。次のゲームに向けて良い準備をして続けていきたいと思っています」

──2戦連続で大敗ですが、戦い方を変えるという考えはありますか?

「先週はコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)、今週はS東京ベイ、来週は東京サントリーサンゴリアスと試合をさせていただく中で、この3つのチームは日本のトップの3チームであることは間違いないと思います。試合を通じてたくさんのミスや課題が出てくると思います。その中で毎週プレーをしていかなければならないので、少しの変更を加えていくことは考えています。明日、トヨタヴェルブリッツさんとBメンバーの試合を行うのですが、今日の結果も踏まえて、明日戦うメンバーにも大きな期待をしているところがあって、本当に彼らが良いプレーをすることによって、今日選ばれたメンバーにいいプレッシャーを掛けていって、どんどん良い部分を引き出していきたいと思っています。

ですから答えとしては『イエス』で、変更していく必要はあると思っていますが、大きな変更ではありません」

──起爆剤になりそうな選手はいますか?

「現実に一人の選手の名前を挙げるというよりも、われわれとしてはチームとしてのスキルの底上げや選手層のレベルアップが必要だと考えています。何人かの選手に関しては、この数カ月で非常に大きく飛躍してくれています。今日のS東京ベイさんにはオフロードを使ってくる特に大きな選手がいて、ボールキャリーに強いエックスファクターも持っている選手、単純にフィジカルを前面に押し出して戦ってくる選手もいました。ラインアウトの場面も背の高い選手が多かったと思います。そういう一つひとつのパーツが、ゲームに大きく影響すると考えていて、試合に対してどの選手を起用すればいいのか、そういうところをしっかり見て、選手の持っているスキルセットや強みを含めて起用を考えていきたいと思っています。ただ、現実的に戦っている選手たちがわれわれの現状のすべてだと思っていただいて結構です」

──今日の試合の収穫は?

「ゲームの序盤の部分ですね。2、3回ラインブレイクすることができましたが、それをスコアにすることができなかったのが残念なところでした。でもそのラインブレイクができたというところは、非常にポジティブだったと思っています。本来なら2、3回のラインブレイクのあとにしっかりとボールをキープして、キープすることでS東京ベイさんにプレッシャーを掛けていくことが必要だったと思っています。そこに関してはしっかりとチームでレビューをして次のゲームの課題として生かしていきたいと思っています。

もう一つ、スクラムも自分たちにとってはポジティブな部分が多かったと思っています。調子が良い時と悪い時、まだちょっと不安定な部分はありますし、残念ながらスクラムを起点にして(ゴール前)5mのところからS東京ベイさんにトライを取られてしまいました。そこは残念だったんですけど、スクラムに関しては一貫して良いパフォーマンスを出していたので、強みとしてさらにいいものを築いていけたらと思っています」

──大差でしたが自分たちの思うような試合展開はできたのでしょうか。

「それはできませんでした。今日負けたということは、これが現実だと思います。75点取られてしまったというところは、本当に実力が不十分だったということで、答えは『ノー』になってしまいます。昨季の王者を相手にポイントを付けられて接戦にもできませんでした。われわれはそこを反省して、この経験を生かして次につなげていくしかできないと思います」

三重ホンダヒート
古田凌キャプテン

「結果として負けてしまったんですけど、いい部分も見られましたし、神戸S戦から修正できた部分もありました。ただ、一つのミスだったり、一つのペナルティだったり、そういう部分をもう1回チームに持ち帰って、修正して、試合も続くのでチーム全員でハードワークして次に向かいたいと思います」

──ノートライになった場面について。

「率直にファーストトライはうれしかったですけど、まあスローフォワードだったので。そこはチームとして切り替えて、もう1回トライを取りに行こうという気持ちでした」

──地元でディビジョン1の試合をしたことの受け止めは。

「初のホストゲームということで、ファンのみなさんもたくさん来てくださったのに勝利を届けられなくてすごく残念でしたが、ホストゲームはまだたくさんあるので、次は絶対に勝ちをみなさんに届けられるように、若い僕たちからハードワークして熱いプレーを見せ続けたいと思います」

──昨季の王者にぶつかったからこそ分かったことは?

「もちろんフィジカルの部分は強かったです。ただ、しっかりとディフェンスのところで自分たちの強さは出ていました。本当に次につなげるだけだと思います」

──大差でも心が折れずにいましたが、どんな声をかけていましたか。

「まずは1本を取ろうというところで、しっかりとみんなが前を向いて、もう1回自分たちのラグビーをしようと話していました」

──ファンにメッセージを。

「まだまだ試合が続いていくので、ぜひ会場に足を運んでいただいて、熱い声援をしていただけたら僕たちの力になるので、長いシーズンですけど、ぜひ応援をお願いします」

【©ジャパンラグビーリーグワン】

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ

「ショートウィークでしたが、チームの対応力というところで、先週から修正すべきところをしっかりと修正してくれて、ボールを保持していても、していなくてもアタッキングマインドを見せていたと思っています」

──デイン・コールズ選手をそろそろ見たいという人もいると思います。

「私自身も早く出してあげたいというところがあります。彼が入った時には、スキルなどチームにもたらしてくれるところを週ごとに見ています。1日1日という段階なので、そういう小さいところの調整ができれば、来週以降出るかもしれません」

──バーナード・フォーリー選手が強風の中でも11本中10本のキックを決めたが?

「フォーリー選手自身も今日のパフォーマンスに満足だと思います。ゲームの入りというところでチームを落ち着かせてくれました。7点、14点、21点と確実にコンバージョンを決めてくれたので、そういうところも良かったと思いますし、彼自身もパフォーマンスはハッピーだと思います。フォーリー選手はスタンダードが高く、ここにいる立川理道選手もそうですけど、チームをドライブしてくれています。マインドセットのところもフィールドでの判断もそうです。来週以降も上げていってほしいです。ただ、今日の試合のようにフォワードがあれだけ土台を作ってくれたら、やっぱりスタンドオフとしては助けになると思います」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
立川理道キャプテン

「ヘッドコーチが言ったように、先週の敗戦からの学びをしっかりとこの試合で見せていくというところで、ディフェンスはノートライに抑えましたし、しっかりと修正できたのかなと思います。アタックのところは、フォワード、バックスが一体となって、いいプレーもたくさんあったと思いますし、そういうところはしっかりと継続していきながら、シーズンはまだ始まったばかりなので、しっかりと一戦一戦、次の試合に向けて準備していきたいと思います」

──具体的に先週の敗戦から何を修正したのでしょうか。

「基本的にディフェンスの幅とか、そういうところの細かな修正ですけど、今日はしっかりと相手にプレッシャーを掛けることができたと思っていますし、アタックに関しては、今週トライの取り方をこだわってきた中で、ファーストフェーズでトライも取れましたし、継続して取れたところもありました。細かな修正ポイントはまだあると思うんですけど、こうしてしっかりとトライを重ねられたことに関してはすごく満足していますし、ディフェンスもさっき言ったように、スペーシングなども修正していきたいです。今日は結果を出せたので、そこは良かったと思います。

(前節の敗戦で)自信がなくなってしまうような状況だったと思うんですけど、ディフェンスコーチもそうですし、ディフェンスのリーダーグループの中でも、自信を持ってチームの中で発言をしてくれていました。その中で自分たちがやるべきことというのは、そのシステムを信じて実行することだと思いました。そこは特に意識してできたと思います」

──昇格チームとの差を感じさせたが?

「自分たちは、自分たちにフォーカスしてこの試合に臨んだし、自分たちのやりたいことをどうやってやるかにフォーカスしました。僕らも(2部リーグから)上がってきたチームなので、こういう経験は必ず三重ホンダヒートさんの力になっていくのかなと思います」
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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