島根対策とビュフォード包囲網を突破するシーズンがスタート【B MY HERO!】

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今季は各クラブのビュフォード対策にどう対応するかに注目 【(C)B.LEAGUE】

 パリ五輪の切符を自力で獲得した夏のワールドカップを盛り上げた日本代表は感動と喜びをこれ以上ないほどに与えてくれましたが、ここで終わらず次はBリーグの番でしょう!

『It’s our turn!』

 これが、今季Bリーグのシーズンテーマです。意味は「俺たちの番だ!」。まさに今が盛り上がるときなのです。

 と個人的な解釈を胸に、今しがたシーズン開幕戦の解説を終えたB MY HERO特派員、朴航生です!

 記事をご覧になる初めましての方へ簡単に自己紹介をいたしますと、バスケットボールコメンテーターとして2017-18から島根スサノオマジックのホームゲームを中心に解説を務めさせていただいております。特派員としては21-22シーズンからの3シーズン目となり、島根、そして西地区を中心にBリーグの盛り上げに微力でも加わりたい一心で日々勉強しているところでございます。

島根はヘナレ体制3年目にさらに上位を目指す

 前置きはこれぐらいにして、担当となった島根スサノオマジックのホーム開幕節、シーホース三河との2連戦を通して今季の島根の展望を見ていきたいと思います。

 島根は現在のポール・ヘナレHC体制の3年目となる中で、球団としても彼を招聘してチームビルディングを始めた際からその目標はリーグ制覇と定めてここまで進めてきました。

 実際に、1年目でチャンピオンシップ(CS)初出場とセミファイナルへ初進出、2年目もCS出場、加えてあと一歩でレギュラーシーズン(RS)西地区制覇まで成績を残しました。

 チームのカラーとして「BAZZ SAW」スタイルを打ち出しながら、初年度はどちらかというとオフェンシブで派手でスピーディーなオールコートバスケットを軸としていました。しかし、2年目はRSでの勝率アップとCS優勝のため、またオフェンスの調子に左右されにくい確実性を伴ったディフェンス(DF)面でのアップデートと効率化されたハーフコートオフェンスに手を加えてきました。迎える3年目の今年、まさに集大成と呼べるべき島根の姿が見れるのではないでしょうか。

 ヘナレ体制の3年目を迎える中で、ペリン・ビュフォードというリーグ随一のプレーヤーの存在が大きいことはもちろんですが、チームが彼を最大限に活かすための一つの手段として、帰化枠のニカ・ウィリアムスを同時にコートに立たせられることに間違いはありません。

 しかし、昨季は終盤にそのニカのケガもあり、台所事情が苦しくなる中で、射程距離にとらえていたRS西地区優勝を逃し、CSでも前年に同じくQFで勝利したアルバルク東京に苦戦。結果的に手薄なインサイドをA東京のパワープレーとビュフォード包囲網に苦しみ、ここで苦渋を飲まされてしまいました。

帰化枠のニカ(左)と新加入の晴山が注目の戦力 【(C)B.LEAGUE】

 そんな昨季を踏まえて補強を施したオフシーズンの動きとしては3点あります。

 まずペイントエリアの支配力を高めるため、リード・トラビスの代わりに過去に琉球ゴールデンキングスに在籍していたハッサン・マーティンを補強。さらにアウトサイドのサイズアップ策として、長く島根に在籍していた万能性のある阿部諒(仙台へ移籍)を放出し、3&Dに特化した晴山ケビンを獲得しました。

 さらに、昨年のロスターで最古参となっていたエナジーガイの後藤翔平(B2岩手へ移籍)を将来性も兼ね2人のヤングガイ、シューターのワイリー光希スカイとスモールガードの大橋大空へと入れ替えました。中心選手をサポートする役割とはなりますが、彼らの貢献度がどれだけ出てくるかで、RSのローテーションにポジティブな変化が生まれるのではないでしょうか。

 ラインアップとしても先に述べたビュフォード&ニカに代わり、ビュフォード&マーティン&晴山(谷口大智)という組み合わせの時間帯も増えていくでしょう。

 個人的な意見として、阿部、後藤の2人はチームでもムードメーカーとして大きな存在だったはずですから、今季のメンバーで誰がそういった役割を担うのか、そしてチームの雰囲気という点に一つの注目を置いています。入れ替えはあれど、主力メンバーで長く戦ってきたこの3年目は安定や安心と慣れ親しんだ部分が、多少なりともマンネリ化されてしまうところも出てくるかもしれません。

ビュフォード包囲網をいかに突破するか⁉

 事前情報はこれぐらいにして、ここからは開幕戦を通して見えた今季の島根についてお話ししたいと思います。

 初戦の相手となった三河も大きな改革の年となる今季、あの八村塁が昨シーズン途中まで在籍したワシントンウィザーズから招聘したライアン・リッチマンHCをはじめ、選手の半数を入れ替え、その多くがスターティングラインアップ、セカンドユニットとなる“新生三河”となりました。

 先駆けて行われた天皇杯2次ラウンドはあったものの、全容の見えない相手との初日、島根はチーム全体でTOが18(そのうちビュフォードが4つ)と三河の新しいスタイル、機動力の高いDFとビュフォードへ対するブリッツをはじめとするエース対策により、思うようにゲームのリズムが作れませんでした。

 そんな中で頼もしいプレーを見せてくれたのが、キャプテンの安藤誓哉でした。追いかける三河の勢いをことごとく撃ち落としたのが得意の3Pシュート。昨季リーグ最多成功数の191本を達成した実力を遺憾なく発揮し、チームを開幕戦の勝利に導きました。

島根の頼もしい司令塔、安藤誓哉 【(C)B.LEAGUE】

 ただ、試合後のゲームMVPのインタビューでその安藤が残した「今季もそう簡単にはいかないだろうと感じた」というコメントは、早くも第2戦に形として現れました。

 今節、デイゲームからナイトゲームへと通常より少し猶予のあるスケジュールの中、第1戦からの修正をフォーカスできていたのは三河だったのです。

 前日からスターティング5を変更して、インサイド、特にリバウンドを修正し、さらに島根のキーマンであるニカをファウルトラブルに誘発させ、島根のメンバーチェンジを困らせることに成功しました。

 そのうえで、前半はチームのフィールドゴール成功率を70%近くマークし、完璧に近いオフェンスを遂行。終始2ケタのリードを維持することにも成功すると、終盤の島根の猛追を振り切りアウェーで大きな1勝を挙げたのです。

リッチマン新HCのもと再出発のシーズンを迎えた三河 【(C)B.LEAGUE】

 2日間通して見せたビュフォード対策に加え、スイッチングするディフェンスシステムとヘルプ&ローテーション、DFからオフェンス(OF)へのトランジションと、チーム全体が高い集中力を保ち素晴らしいスピードと運動量を見せてくれました。改めて今季の三河が新しくなったことを象徴するようなバスケットでした。

 優勝を目指す島根にとって今季も開幕節は1勝1敗となりましたが、おそらくどのチームも様々な形で敷いてくるであろうビュフォード包囲網をチームとしてどう解決していくべきか。CS出場権をつかむためには必ず解決していかなければいけない命題を開幕節で、しかもかなり高いレベルで体感できたのは、1敗以上の価値があるかもしれません。

 ヘナレHCのもと、この2年間様々な困難を乗り越えてきた島根ですから、次節のアウェー秋田戦までに少なからずアップデートされるはずです。
 
 今シーズンも試合毎に強さを増しながら頂点を目指すチームの姿を楽しみにしながら、次の担当試合に向けて準備をしていきたいと気を引き締めていきます。

朴航生(B MY HERO!特派員)

【(C)朴航生】

岡山学芸館高校を卒業後、アメリカ留学を経て、SHIZUOKA GYMRATSの一員としてABAへ参戦。帰国後bjリーグトライアウトの門を叩き、現B1の島根スサノオマジックへ入団、2シーズン在籍した。その後、Bリーグ開幕に伴いご縁を頂き、現在はバスケットボールコメンテーターとして島根のホームゲームを中心に奮闘中。ホーム、アウェーを同様に解説する姿勢、わかりやすい戦術解説に多くのファンを持つ。

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