フランヘッドコーチが語るラピース選手とは
【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】
彼にフォローは必要ない
クボタスピアーズ船橋・東京ベイのヘッドコーチ フラン・ルディケは、インタビューの第一声でそうコメントした。普段は謙虚で多くは語らないラピース選手の胸の内を代弁するかのように。
現在開催中のラグビーワールドカップ2023フランス大会。日本代表はその大会の3戦目を9月29日にサモア代表と戦う。そのサモア戦で7番で先発予定のピーター・ラブスカフニ選手(チームでの愛称は“ラピース”のため以下、ラピース選手と記載)こそが、冒頭でヘッドコーチが話した「彼」だ。
ラピース選手は、フランヘッドコーチが就任した2016年にスピアーズに入団。母国南アフリカで見せていたフィジカル面の強さと運動力、そしてなにより真面目で謙虚な人柄がチームにいい影響を与えるとあってのリクルートだった。
ラピース選手は、入団年からすぐさまチームの信頼を獲得し、当時の主戦場であったトップリーグの開幕戦で日本デビューをすると、その年だけで14試合に出場した。
2016年8月27日 東芝ブレイブルーパス戦が日本デビュー戦となったラピース選手 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】
「彼は素晴らしい人格者でハードワーカー。信仰深く規律にも重んじます。また家族を大切にするファミリーマンです。ラグビーでは、接点で体を張り、厳しい練習の場面では自ら先陣を切るなどして、自らのプレーでチームを引っ張る選手です」
フランヘッドコーチとラピース選手は、コーチと選手の立場は違えど同じ時期にスピアーズに加わったいわば同期。チームの躍進と共に選手自身の成長を見守ってきたフランヘッドコーチは、ラピース選手に対して全幅の信頼を置く。だからこそ、昨シーズンの途中でのラピース選手の負傷による戦線離脱の際も落ち着いていた。
「彼はどんな状況でもそれに打ち勝つ人間です。怪我は残念でしたが、それに対する挫折などなかったはずです。彼にフォローは必要ありません。それは怪我からの復帰の早さと試合でのパフォーマンスが示しています」
信頼を寄せあうのはラピース選手も同じ。自らがプレーオフに出場できないとわかってからも、「このチームならできる」とチームの優勝を疑わなかった。だからこそ、怪我を万全にしてワールドカップへの出場を次のターゲットとした。
フランヘッドコーチは、ラピース選手を思い浮かべながらこう語る。
「彼の夢は、チームの夢でもあります。ラピース選手の人生のモットーとしている部分でもありますが、彼は試合後に最後まで子どもたちにサインやファンサービスを行っています。それは彼が、ラグビーは世界を変えるツールだと思って行動しているからです」
日本に関わりをもって8年目。確固たる信念を持って築いた信頼は、数々の逆境を経て桜の7番を背負う。その勇姿が背負うものは、チームの勝利だけにとどまらない。
NTTリーグワン2022-23決勝戦後のラピース選手とフランヘッドコーチ 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】
写真:チームフォトグラファー 福島宏治
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