小菊セレッソ 好調の原因を考える

note
チーム・協会
【これはnoteに投稿されたきー。さんによる記事です。】
セレサポの皆さん、お疲れ様です。

代表ウィークってことで今回はいつもと趣向を変えて、小菊セレッソがここ最近好調な理由を考えていきます。

なぜか今週セレッソは公式戦がなかったんですよね…。


ここまでの戦績

リーグ戦は本稿を書いている9/12時点で26試合を戦い14勝3分9敗。
勝ち点は45で順位は4位。
得点数は38で上から数えて4番目の多さ。
失点数は26で、下から数えて6番目の少なさ。

得点数・失点数から見ても4位という順位は妥当だし、とにかく「トップ5を確保したい、そしてトップ3への挑戦権を得たい」というような立ち位置だと思う。

セレッソが3連勝を飾っている間に、ここ数試合で上位勢が躓いたことも重なって首位ヴィッセルとの勝ち点差は7。まだもう少し離れているが、今季の首位との最大勝ち点差は11だったので、それを考えれば粘って食らいついて差を縮めることが出来ていると言える。

残り試合が8で勝ち点差が7というのは厳しい数字に変わりはないが、優勝争いへの挑戦権は手にしていると思う。

カップ戦は残念ながらルヴァンカップ・天皇杯共に敗退。
どちらかというとカップ戦向きのチームだと思っていただけに、この結果はすごく残念だった。

ここまでを軽ーく振り返る

そもそも今季は「433システムによるボール保持戦術」の構築からスタートした。

しかし、現在は433でもなければ、お世辞にもボール保持の仕組みに強みがあるチームとは言えない。

ハッキリ言ってしまえば、433もボール保持も割と早い段階で頓挫している。

理由はいくつかあって、たとえば433の肝に据える予定だった清武のコンディションが整わないことや、そもそも433を想定した選手編成になっていないこと、さらには新戦力と既存の戦力との融合に時間を要してしまったこと(開幕してすぐのころは体調不良者も続出した)、ビルドアップの整備に苦しんだこと、失った瞬間に脆さが出てしまっていたことなど。これだけが全てではなく、他にもあるかもしれない。

実際、クルークスとレオセアラを組み込んだ433システムは第3節の浦和戦を終えた時点で早くも見切りをつけられ、第4節サガン戦では加藤陸次樹や松田陸を起用して昨季のメンバーに寄せた構成で挑むこととなった。

キャンプから盛んに報じられていた新しい取り組みを、たった3試合で一旦保留してしまった。正直、この時点ではこの判断はあまりにも早すぎるのではないか?と思ってしまった。

この後も、戦い方は安定しない。

第6節のマリノス戦ではレオセアラがようやく覚醒を遂げたが、この試合では今季初めて433による守備ブロックを披露。

そこからしばらくは昨季のメンバーにレオセアラを加えた433で戦うも、勝ったり負けたりが続く。

今度は第13節の京都サンガ戦でまた動きを見せる。

クルークスが第3節以来のスタメン、そしてシステムは442でレオセアラと加藤陸次樹が今季初めてスタートから2トップでコンビを組んだ。

この試合以降、セレッソは最終ラインからビルドアップを試みる回数をガクッと減らし、積極的に裏へボールを送り届けたり(つまりここに走り込むのが加藤の役目)、レオセアラへ早めに当ててセカンドを回収する。そしてサイドの質で勝負する回数を増やす、というような戦法へと振り切っていく。

個人的には、第3節のサガン鳥栖戦が今季一つ目のターニングポイントで、第13節のサンガ戦が二つ目のターニングポイントになったと考えている。
そのくらい、これらの試合から戦い方は大きく変わった。

(ちなみにこのサンガ戦ではまだジンヒョンが負傷前でスタメン起用されていたので、ビルドアップを止めたのはジンヒョンが怪我をしたのが理由ではないと思っている。むしろ腰痛を抱えていたという松田陸の不在の方が影響したかもしれない。)

サンガ・ベルマーレ・横浜FCに3連勝し、ようやく戦い方が定まってきた矢先、今度は怪我人が続出してしまう。(この3試合も細かく見ていけば当然それぞれでやり方は変わっていたけど)

ジンヒョンが第16節、為田が第17節、奥埜も第17節、山中がPSG戦を最後に負傷で戦線を離脱。公式発表のない選手でも、松田陸や西尾は故障を抱えているという話だった。

試行錯誤を経てようやく目指す戦い方は見えてきたのに、今度はメンバーを定めることが出来なくなってしまい、もしかするとこれが第19節・20節のアビスパ・サガンに連敗を喫してしまう一つの要因になったのかもしれない。

ここまで自分で書いていても思うんだけど、安定しないのは結果だけでなく戦い方そのものだった。

好調に転じたのは?

と聞かれたら僕は第21節の浦和レッズ戦からだと思っている。
もちろんこの一試合で何かが大きく変わったわけではない。
徐々に、いろんなことがハマってきた。
まずはメンバーがだいぶ固まってきたこと。

GKにはハンビンが定着して、最終ラインでは進藤がスタメン奪取。舩木も安定して戦えるようになった。

ボランチは陽と真司のコンビ。主に縦関係になることが多い。

左サイドではカピシャーバが猛威を振るい、舩木は後ろでのサポート役兼パス出し役。

右サイドはクルークスと毎熊の関係性で崩す。前後も内外も入れ替わるこのコンビは、相手からしても相当厄介だろう。

2トップは主にレオがターゲットで相方が裏を狙う。

そして先ほども言ったように、特に両サイドの質的優位を活かしてそこで勝負する回数を増やすために、ビルドアップを試みる回数は減り、より前線へ縦へ早く攻める。

その練度も増してきたと思う。

守備、非保持に関しては442だろうが433だろうがかなり強度の高いブロックが作れるので、あまり心配はしていない。
それに課題であった試合終盤の振る舞いについても、リードをしていたら容赦なく後ろの枚数を増やして耐え抜く選択をすることが増えた。

サイド一辺倒の攻め方は相手に研究されてきたので、最近はアタッキングサードで積極的に真ん中を狙うケースも出てきた。

要は紆余曲折を経て、今のチームの最適解が見つかったということ。
そしてその最適解の中で、コンビネーションが熟成されてきたこと。
一方で守備の強度は高いレベルで維持できたこと。

この辺が好調の理由だと思う。
苦労はしたが、ようやく今の形にたどり着くことが出来た。

時間を掛けて最適解を見つける、しかもその時々によって最適解が大きく変化する辺りが、やっぱりクルピっぽいチーム作りだなと。

兼ねてから小菊監督はクルピっぽいタイプの監督だなとは思っていた。

クルピと違うのは、控え組にも気を配り、チーム全体を巻き込んで戦おうとしているところか。

課題を挙げるなら

課題というか不安要素を挙げるとするから、ちょっと個人に依存しすぎかなという部分はある。

選手にはそれぞれ違った個性があるので、選手が変われば役割も変わるし戦い方も変わるのは当然だけど、要はその濃度というか、セレッソは特に選手個人の力に左右される割合が多い方だと思う。

この先シーズンも終盤になってくる中で離脱者もきっと出てくる。1人離脱したから大きく戦い方を変えます、となってしまえば、せっかく定まってきた戦い方をまた再構築しなくちゃいけない。

小菊監督はこういうときにガラッと戦い方を変える監督だ。
微調整をする・・・というよりは、大きく変える。変えざるを得ないほどガッチリと固まったチーム作りをする傾向にある。

昨季だって春先と夏以降では全くの別チームだし、今季だって春先と今とでは全くの別チームだ。来季はまた別のチームになっているかもしれない。

となると、毎年最適解探しの旅をするのかと思われるかもしれない。

おそらくだけど、小菊監督に否定的な人達はこういった部分を問題視しているのではないだろうか。

これに関しては、言っていることは分からなくもないが、監督としてのタイプの違いというか、そこを否定してしまうと議論の余地がなくなるような気がする。何が正解かなんてわからない。見てる側にも好みがあるように、監督にもそれぞれのやり方がある。

現監督のやり方を否定するところから始めるよりは、何をやろうとしているのかを考えながら見る方が楽しいかもしれない。その上で、こうすべきだとかこうしてほしいとかの議論はあって当然だと思うけど。

今は「誰かが離脱したら危ないのではないか」と書いたが、一方で今離脱している選手が復帰した時に、スムーズにチームへ組み込めない可能性もある。
昨季なら清武がそうだった。負傷から復帰後、チームに彼の活きる役割を見出すのはかなり難しかった。
今後そうなる選手がいるとすれば・・・個人的には山中ではないかと思っている。カピシャーバの後ろというポジションでは、山中の良さは出にくい。

もちろん今いる戦力によって微調整はあって然るべきで、誰がいようとどんな選手がいようと同じ戦い方をしようとすればそれこそ失敗してしまう。

でもある程度は共通項、つまりどんな状況でも変わらない哲学が必要だ。

では今のセレッソに哲学はないのか。

最後にここを考えてみたい。

小菊セレッソはどんなチーム?

なのかと聞かれたら「ハードワーク」のチームと答えたい。
これこそがこのチームの根幹で、不変のもの、どんな戦い方でもどんな選手が出ても変わらない哲学といえるものではないか。

当たり前のことを言っていると思われるかもしれないが、Jリーグ全体を見てもセレッソほどハードワークができて、規律が徹底され、強度の高いプレーを見せられるチームはそうはいないと思う。

局面ごとの各々の役割はすごく整理されていると感じる。やりたいことはチーム全体に徹底して落とし込まれている印象だ。

そして事前スカウティングもしっかりと行う。相手のどこを狙うかを、明確に定めて試合に入っているんだなと伝わってくる。

一方で、それらが整理されすぎていて、相互の繋がりが薄くなってしまっている気もする。少し融通の利かないチームになってしまっている感もある。試合の中での修正力や対応力も今のチームの課題だ。

でも最近思うのは、各局面を繋ぎ止めているのは、「ハードワーク」という要素ではないか。

様々な局面での動きを整理するが、それぞれの繋がりが薄く、少し無理のある戦い方になってしまうこともある。それを解決するのは各々のハードワーク。走って、球際戦って、サボらずに戻る。それでズレを解消する。
これこそが、チームの生命線。

極端な話、小菊監督にとって、ぶっちゃけ「形」はあまり重視していないのではないか、とすら思う。
もちろんしっかりといろいろな「形」は準備しているけど、それより大事なのは各々がハードワークすること。
それぞれの場面で用意しているであろう「形」は、ハードワークを昇華させるためのものに過ぎない。
だから時と場合に応じて「形」は大きく変化する。

思えば就任時から「私のサッカーに求めるのはハードワーク・アグレッシブ・絆の3つ」だと言っていたし、バクステを見ても「最初から100。80や90はいらない。」と頻繁に選手へ伝えている。

ハイプレスだ、ボール保持だと時期によっていろいろ変わるチームだけど、ハードワークという部分については小菊監督就任時からこれまで唯一不変な要素だ。

だからこそ、疲労からハードワークに陰りが見えてしまう終盤に弱く、失点が多かった。全てを繋ぎとめているのはハードワークで、そのハードワークが出来なくなるから脆くなってしまう、ということではないか。

最近は試合の中で442、433、541を使い分けるなど、割り切って後ろで跳ね返す判断をすることも増えている。だから試合終盤の失点は減ってきた。
少し前なら交代枠の全てをアタッカーに注ぎ込み、その代わり後ろが耐えられなくなるということが何度もあった。それに比べたら試合運びもかなり上達している。

そもそも、試合中に並びを変えたり、敢えて比重を後ろに置いたりという判断は昨年までほとんど出来ていなかったことだ。
右サイドの崩しのパターンだって増えてきたし、クロスへの入り方も良く準備されていることが伝わってくる。

ハードワークのみならず、少しずつ手札は増えている。

小菊監督の一番すごいと思うところは、いつどの試合でもチームが同じ方向を向くようにまとめる力。こうと決めたら、全員をそちらに向かせる。
ついて来れない選手は、残念ながら出場機会が減ってしまう。そういう副作用もある。あるけど、中途半端なことをするよりは、ハッキリとこっちに行くぞと示すのも大事なことだと思う。

改めてになるが、小菊監督は所謂モチベータータイプなんだと感じる。

最後に、個人的にはまだ優勝争いには加われていないと思っている。
冒頭にも書いたが、残り8試合で勝ち点7は難しい差だ。
まだ、差を詰めないといけない。

だけど、あと1試合2試合の結果次第で、優勝争いに本格的に入り込める位置にいることは事実だ。そこをポジティブに捉えたい。全く手が届きません、というような位置ではない。

ここからアントラーズやサンフレッチェという、さぁここから!というときに今まで何度も何度も立ちはだかってきた難敵との戦いも残している。

でもそんなこと考えても仕方がない。どうせまた良いところでサンフレッチェに負けるんだろう、なんて考えながら見たって何も面白くない。

それを言うなら上位勢の中にはこれからACLが始まるチームだってある。
ACLの過密日程が、セレッソにとって追い風となる可能性だって秘めている。

だからこれまで積み上げてきて、導き出した最適解によって、今この位置にいること自体を楽しみたいと思う。



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