なぜ日本ハムファイターズは一点差に弱いのか?現在の日ハムの問題点を考察する

note
チーム・協会
【これはnoteに投稿されたたさんによる記事です。】

はじめに

あの悪夢のようなスクイズ2連続失敗から流れが悪化したファイターズ。サインバレ事件以降3勝11敗、現在は今季ワーストの7連敗中、7月は2勝8敗で勝率.200という惨状。さらに球団54年ぶりとなる6試合連続1点差負けという不名誉な記録まで残してしまいました。ファイターズファンはメンタルが相当キツくなってきたと思います。そんな中で何が問題なのか、自分なりに掘り下げていきます。
※選手名は敬称略です。ご了承ください。
※データはスポナビ(https://sports.yahoo.co.jp/)から引用しています。
※成績は7月13日終了時点のものです。

問題点①僅差で負け、大差で勝つ

見出しの通りですが、なんとなくこの印象が強い方も多いのではないでしょうか。これは弱いチームの典型例とよく言われますが、どこに問題があるのか考察していきます。
まずは勝ち試合の得点差と試合数をまとめていきます。

意外と満遍ない結果に。それほど大差で勝っていない…? 【た】

次に負け試合。

グ、グロイ…… 【た】

そもそもこれに陥る原因として考えられるのは、
・先発や敗戦処理は打てている…?
・終盤に出てくる勝ちパターンの投手を打てていない…?
→これらの投手は球速が速いと考えられる。ファイターズの野手陣は速球に苦手…?
といったことです。この話題がアツい内に書きたいので具体的な球速別の打率などは出せませんでしたが、この印象を持つファンは多いでしょう。
ということで、ファイターズが勝った試合の敵チームの敗戦投手を調べていきます(ややこしい)。これを調べることで「誰を打って勝ったのか」ということを浮き彫りにしていきたいところです。

対戦球団(日ハムではありません)の敗戦投手 【た】

なんと負け試合35試合中27試合は先発に負けをつけているという予想通りの結果に。また平均得点はそれほど変わらず。抑え相手に負けをつけたのは6月19日、万波が山﨑康晃からホームランを打った試合のみでした(この時打ったのはスプリット)。
やはり先発投手は打てているが、勝ちパターンのリリーフはそれほど打てていないことが明らかになりました。

リリーフに負けをつけた試合のまとめ。括弧の中の数字はその日の真っ直ぐの平均球速です。伊藤茉の平均球速はシンカーです。 【た】

※追記①
気になったので真っ直ぐの平均球速が150キロを超えるイメージの先発投手と独断と偏見で選んだ各球団の勝ちパターンのファイターズ戦の成績をまとめてみました。

高出力の先発投手の対ファイターズ戦成績※今季の成績より対ファイターズ戦の方が良い場合は青字、悪い場合は赤字にしています。 【た】

今回の本題とは逸れますが、真っ直ぐが速い先発も調べてみました。
パリーグ屈指の好先発が並んだということもあり、軒並み防御率も奪三振率も良い結果に。平良の防御率が2.22(今季)→2.37(対日ハム)と微妙に悪いだけで、真っ直ぐが速いパリーグの先発投手は大半がファイターズを得意にしていることがわかりました。
この5投手の今季の成績を合計して計算したところ、今季の防御率は2.21、奪三振率は9.80でした。ファイターズ戦の合計は防御率1.50、奪三振率10.50だったことからも得意にされていることがわかります。
交流戦でも今永やバウアーや才木に抑えられたように、真っ直ぐが速い投手はほぼほぼ打ち崩せてはいません

主要リリーフの対ファイターズ戦成績 【た】

次はリリーフです(登板数やホールドやセーブ数を見て選出しました)。
防御率を比較してみると19人中13人が今季の成績よりも良い結果に。今季の成績より明らかに良い数字が目立ちます。
明確にファイターズを苦手にしているのは阿部、次点で鈴木翔天や森脇という結果に。この3人はやはり真っ直ぐが平均140キロ台後半のイメージがあります。
こちらも全員の今季の成績(投球回や自責点、奪三振数)を合計して計算してみたところ、防御率は2.43、奪三振率は8.31でした。
ファイターズ戦では防御率1.88、奪三振率8.72なので先発投手と同様、明らかに良い結果になりました。
数字の比較からも、他球団と比べてファイターズの野手陣は勝ちパターンから点を取れていないこと、真っ直ぐが速い投手を苦手にしていることが浮き彫りになりました。

また、このデータをまとめていく中で全試合のスコアや投球チャートを振り返りましたが、リリーフを打てたとしてもそのリリーフの真っ直ぐの球速は140キロ台後半か150キロ前後だったことや、甘い変化球を捉えることが多かったです。抑えの投手で例えれば、真っ直ぐが140キロ台後半の増田・益田から追いつかない程度の攻撃をすることはあっても、オスナや松井裕樹などの軽く150キロを超えてくる剛腕からはノーチャンスでした。
そんな中でも上川畑やアリエルは真っ直ぐに強めの印象を受けました。

以上のことから、今後のファイターズの課題は150キロオーバーの真っ直ぐに対する対応だと私は考えます。
※追記②
F Chartさんが150キロ以上の打撃成績をツイートされていました。
加藤豪将は長打率(SLG)もコンタクト率(con%)も傑出していることがわかります。そして安定の松本剛。アルカンタラはコンタクト率は低いものの高い長打率を残しています。
意外だったのは万波や上川畑やアリエルが中位だったこと、清宮が速球に弱いことでした。これはまだ伸びしろがあるということですね。
F Chartさんは定期的にこのような興味深いデータを発信されているのでファイターズファンはフォロー推奨です。
・F ChartさんのTwitter(https://twitter.com/Fighters_Data)
・F Chartさんのnote(https://note.com/fighters_data/)

問題点②勝ちパターン

宮西が絶不調、抑えにルーキー北山を置かざるを得なかった昨季と比べると天と地の差に感じる勝ちパターンの質ですが、私はもうワンランク上を求めたいと考えています。
何が足りないかというと、奪三振率(9イニング平均の奪三振数)です。
例えば1点差で勝っている9回裏、1死3塁の状況があったとします。ここで求められるのは三振。なぜかというとバットに当てられるだけで点が入るリスクがあるからです。外野フライになればもちろん犠牲フライで同点。これに加えてゴロでも点が入る可能性があります。抜ければヒット、ボテボテでもセーフ、叩きつけたゴロでも点が入ります。
これを考えると防御率だけではなく、奪三振率の高い圧倒的な制圧力を持つ勝ちパターンであってほしいという結論に至ります。
宮西、田中正義は奪三振率9.00を超えるので優秀ですが、パリーグ全体を見ると山﨑颯一郎・松井裕樹・モイネロなどは10~12を叩き出してきます。これらの好投手に並ぶ奪三振力を持った投手が出てきてほしいです。
この奪三振力の鍵になるのは真っ直ぐの速さと落ち球だと考えます。
リリーフの強いチームと言えば昨年日本一のオリックスが思い浮かぶと思います。
オリックスのリリーフと言えば、平野・山﨑颯一郎・宇田川・ワゲスパック・阿部あたりが勝ちパターンですが、どのピッチャーも落ち球(フォークやスプリット)を決め球として持っています。
ベテランで年々球速が落ちている平野以外は真っ直ぐが150キロを超え、山﨑颯・宇田川・ワゲスパックは日本シリーズで150キロ台後半をバンバン投げ込み、投球回を上回る奪三振数を記録して制圧していました。
他にも今年のWBCに選ばれた大勢・湯浅・松井裕樹・髙橋宏斗など、先発を含めても侍ジャパンの投手はほとんどこの特徴に当てはまります。
ファイターズの投手陣の中でこれに当てはまり、鍵を握るのは通算の奪三振率が10を超える石川直也です。怪我から復帰後は球速が戻りきってはいませんが、フォークのキレや真っ直ぐの強さや上背の高さなど、ポテンシャルで言えば頭1つ抜けています。支配的な抑えになってほしい。

また懸念しているのは宮西と田中正義。
宮西は防御率だけ見れば1.61と超優秀ですが、被打率は対右は.324、対左は.288と恐ろしく高いです。いつか防御率が収束しそうで怯えています。
田中正義は真っ直ぐは超一流です。しかし、調子が悪く真っ直ぐの球速が出ない時に頼れる変化球がないのが心配です。真っ直ぐで押し込めない日は変化球で誤魔化すピッチングができるようになってほしい。今季の伊藤大海のように、フォークを改良することができれば奪三振力も跳ね上がって代表級の抑えになれるのではないかと思います。

問題点③戦術

最後は戦術面です。昨季と比べるとダブルスチールやエンドランなどの奇策が減ってマシにはなりましたが、まだ疑問を感じることが多い。
特に不満があるのはバント、走塁、選手運用です。

まずはバントですが、無死一塁→一死二塁にしても得点期待値は下がることは有名な話です。さらに失敗する可能性も考えられます。
下に引用していますが、バントはOPS.340以上の選手にさせると基本的に損です。今年のファイターズにはOPS.340を下回る野手はいません。
これらのことを考えるとバントは無死一二塁の場面など、終盤の限られた状況でのみ使うべきで、序盤のバントやバントを意識した打順の組み方は絶対にNGだと考えられます。

バントの得点期待値の損益分岐点は大体OPS.340

https://pennantspirits.blogspot.com/2020/04/blog-post.html


次に走塁です。ダブルスチールやエンドランの乱用は言語道断ですが、盗塁に関しても損しています。引用しているように、盗塁は7割以上成功しないと損です。ファイターズでいえば、江越や松本剛ですら下回っており、五十幡・石井あたりしか利得を得られていません。
新庄監督の大きな問題は、このようなセイバーメトリクスで明らかになったデータを軽視しているか、知らないことです。監督が浦島太郎状態では勝てる試合も勝てません。
また今季は無茶な走塁ミスが目立つことも不満の一つです。敵のミスを期待した無謀な進塁は二度とやめてほしい。
野球は27個のアウトを取られる前にどれだけ効率良く点を取れるかが重要です。このような観点で出塁率と長打力が評価されるわけです。
バントの多用や盗塁・走塁ミスでわざわざアウト1つを差し出すのは論外です。自ら敵に塩を送っているようなものです。

一般的に盗塁の損益分岐点は盗塁成功率70%だとされる。「盗塁成功率が7割を切るようなら、盗塁しないほうがいい」というわけだ。

https://baseballking.jp/ns/column/290409

これが最後です。選手運用
まずは野手ですが、不可解な起用が多い。もう打順の組み方は諦めていますが、特に万波をファースト起用するのは意味不明です。
万波は下の記事にあるように、昨季はパリーグ最高の守備力を誇るライトでした。この素晴らしい選手を外野に置かないのはもったいない。
今のファイターズの選手層で走攻守全て求めるのは無理です。私は守備のマイナスを打撃のプラスで打ち消せるなら問題ないと思っています。逆に守備が良くても打撃でマイナスを垂れ流す選手は値しないとも考えます。そういった観点でセンター万波やセカンド加藤豪将、ショートハンソン、キャッチャー郡司など策を講じて、色々な選手が共存できるようにしてほしいです。
また、打撃型の加藤豪・アリエル・郡司・野村などが守備重視の日に控えに回ったものの、代打として有効な場面で使われないことも懸念点です。僅差の試合で1点を取り切るにあたって代打や代走は不可欠です。

投手に関して言えば、中継ぎを次々と投入するマシンガン継投をやめて、基本的には信じて1イニングを任せてほしい。この起用がこれからも続けば、勤続疲労で投手陣が焼け野原になります。また、大差の試合は勝ち負け関係なくもっと回跨ぎをさせて、投手全体の登板数を減らしてほしいです。生田目や杉浦、ロドリゲスなど跨げるスタミナを持った投手はいるので上手く負担を分散してほしい。

最後に、もっと選手の力を信じてほしいということを主張して終わります。
ピタゴラス勝率というものがあります。

ピタゴラス勝率は、チームの得点と失点から見込まれる勝率を計算する式である。勝利と敗北の比は得点と失点の比の二乗に比例するという統計的な法則に基づき、ビル・ジェイムズが考案した。(中略)
ピタゴラス勝率=得点の二乗÷(得点の二乗+失点の二乗)

https://1point02.jp/op/gnav/glossary/gls_explanation.aspx?eid=20012


このピタゴラス勝率を計算すると、7月13日現在で.501となります。
これは参考程度の値ですが、勝率5割でもおかしくない野手の得点力と投手の抑失点力があると言えます。
私は今のファイターズを戦力不足だとは思っていません。下手にベンチが動く必要はありません。監督の采配次第ではもっとやれるはずです。
上沢・伊藤・加藤の三本柱に破綻していない裏ローテ。整備された勝ちパターン。清宮・万波・野村・アリエルと主軸は揃い、脇を固める松本・上川畑・加藤豪・石井・伏見もいます。更に淺間・五十幡・今川も帰ってきました。
Aクラスは現実的ではないとしても、来季に繋がる希望、ファンの心を揺さぶるアツい試合を見せてほしいです。まだまだこんなもんじゃない。更なる飛躍を期待しています。

思っていた3倍長くなってしまいました。熱は熱いうちに(cv.秤金次)、と思って夜中まで書いていたので誤字脱字があるかもしれません。何かあったらコッソリTwitter(@liv66_ta(https://twitter.com/liv66_ta))で教えてください。最後までお読みいただきありがとうございました。
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